国外追放とその前に

『わぁぁぁ!なんてイケメンが沢山なゲームなんだろう!?唯華ゆいは本当にいいの?これ借りても?』

『大親友なんだからもちろんオールオッケーなのですぅ!ぜひ全ルートクリアして語りあおうぜよ茉麻まあさ!』

とても明るい笑顔でゲームのカセットを貸してくれた友人はそう言った。

『本ッ当にありがとう!今日さっそくプレイしてみるね!』

私はそう言って【乙女ゲーム】を胸に抱え家に帰った。 その後。 私は今週中にクリアして親友と語り合うために急いで課題を終わらせ,ゲームを立ち上げた。  

どうせ日曜日もあるんだし,今日から冬休みだしね


その【乙女ゲーム】の世界は魔術と愛の世界だった。

ヒロインに恋をした攻略対象の婚約者リリスとかその他諸々がヒロインを虐めてそれで愛情度が増加していくらしい。虐めさえしなければ愛情なんて芽生えないのに。これが悪役令嬢に対する印象であった。

私はモブキャラには関心を抱かない主義だ。本当にこれくらいしか感想を持っていなかった。


まず攻略対象一人目 カリヤル・ローゼンタールだ

彼は悪役令嬢リリス・スチュアートの婚約者で悲しいことにリリスのメイドだったマリアはそこでカリヤルと出会う。ちなみに彼は私の住んでいるローゼンタール王国の第3皇子だ。


そして攻略対象二人目 イワン・ルースレス

すごい冷酷でもうとにかく怖い。攻略するまでに時間はかかったが攻略してからのツンドラとツンデレが可愛い。彼も将来魔導士団長になっていたはずだ。


続いて攻略対象三人目 セシル・ウェイン

腹黒系男子って感じだ。この人だけはファンからセンシティブ指定されていた…気がする。

この人は公爵家の跡取りだ。


攻略対象四人目 ノア・ディユウ

主人公をすっごい束縛する人である。綺麗な瞳からハイライトが失われていくそのシーンは結構ビビった。まじで。彼は神殿の管理をしている。あと時々天使の召喚とか神の天啓を聞いたりしていた。


五人目はよくわからない。なぜなら公式ファンブックにも影絵と名前【???】としか書かれていなかったからだ。影絵を見た感じ,髪の毛が長そうで結んでいた。あとめちゃくちゃお偉いさんで,限られた人にしか姿を見せないんだそう。


このとき私は彼をこの【乙女ゲーム】の次回の攻略対象だと思っていたのだ。


『どりゃぁ!あぁ終わったぁぁぁ…! 意外とムズイなこれ。氷の騎士様のルートとかまじ何日かかった…?あとはなんか伏線巡らせてたかな?これは後で唯華に聞いてみよっと』

ふう,ついた…結構遠いんだよな唯華の家。


『唯華~ カセット返しに来たよ~』

『茉麻!でどうだった!?結構面白かったでしょ!』

ここから何時間話しただろうか。いや,意外とそんなに経っていなかったのかもしれない。


『茉麻また来てね!』

『じゃあまたね…あっ!思い出した!逆ハーレムエンドの最後のところ伏線っぽいのあったけど次回作の告知?』

『違うよ~ もしかして隠しエンドやってない系?じゃあやってみるといいよ!まだ全然貸せるし~

なんて言ってもね…その人が今まで見てきた中でいッち番イケメンだと思うの!あとね,その人と大様にしか使えない錬金の…』

『ぎゃーっ!ネタバレ厳禁!』

まじか…

『じゃあそれ終わったら話そ!じゃーねー』

『お邪魔しましたー!』

私の記憶はそこから曖昧だ。私が徹夜でゲームをやっていたせいかもしれない。新しいルートの発見で舞い上がっていたのかもしれない。








極彩色のような出来事は一瞬だった。



キィィィィィィィィィ


私は信号無視で死んでしまったのだ。

これが私の一回目の死である。


「はッ…!」

今のは悪い夢悪い夢…

そう思って周りを見渡すと豪華絢爛なものがあちこちに飾られていたのだ。

そして私が寝ているベッドの周りには六人くらいたっていた。

私を使用人扱いしてくるお母さん,私に興味のないお父さん,私に対して優越感に浸りまくっている妹,

政略結婚して多分一応いる婚約者,そしてこの家では珍しく私に付き添ってくれた召使さん。

そして…

「リリス様!大丈夫でしょうか!?花瓶が頭に当たりましたよね!?血は流れていませんでしょうか?」

「大丈夫よマリア。そんなもので血を流すほど弱くはありませんの」

ん…? 今自分マリアって言った…? え,なんで外国にいるの? リリスはどっかの神話で悪霊じゃなかったけ? この親なんて言う名前つけとんじゃ。

「マリアちゃん,いいのよ。こんなの気にしなくて。それより目を覚ましたんだからマリアちゃんと散歩にでも行ってきなさい。あ,ご飯の料金は自腹でよろしくね」

「目が覚めたなら帰らせてもらうぞ。お前に興味はない。マリア,一緒に出掛けよう!湖のほとりとかどうかな?」

…は?え。私は?話によると花瓶に頭ぶつけたんでしょ?少しは心配してもいいじゃないの?

……あ,一言だけ心配していたか。

「リリスお嬢様!?目を覚ましたのですね!私が誰かはわかりますか?ここにいる人たちのことも。右から順に行ってみて下さい」

メイドはそう言ってこの部屋にいる全員を指さした。

「それくらいわかるわよ。お父さんのニコラウス様に,お母さんのマリー様,私のメイドのアリサに妹のサロメ」

ここまではつらつらと言った。ほらアリサ,私覚えているじゃない。

「で元婚約者様の,カリヤル様に聖女マリア様でしょう?」

左二人を言った瞬間に場が凍った。なんかラブラブモードしていたカリヤルとマリアまでも,だ。

「お前!!いま『元』婚約者と言ったか!?」

「はい。何か問題が?」

「すべてが問題だ!!一応とは言え,婚姻状態にあるだろう!?」

「私が聖女…?」

あっやべ。これもしかして十一年後の話しちゃったのか。

およそ三年後私が魔女に憑りつかれて,処刑されて,マリアが聖女になって世界救うんだっけ~?


ちょっとまてまてまて。今爆弾発言さらっとしたよな,おい。あとなんで未来予知しているんだよ。

「なんでって…ゲームでやったもんカリヤルとか…」

「お嬢様,気が狂いましたか?」

あ,そうかあの事故の悪夢は夢じゃなくて前世なのか。ってことは

⦅私,十一年後死ぬ!?⦆

十一年後はまだ長いか。


いやいや,まだこの世界があの…あの!【乙女ゲーム】の世界だという証拠はない!

とりあえずあのゲーム特有の色々な国の名前が行き来しているかを考えよう。

まずはリリス。これは意外とありそうだどこの国でも。マリーはフランスにありそうだ。ニコラウスはロシアにありそうだ。サロメは劇でしか聞いたことないし,カリヤルなんて聞いたことないわ。

サイトで調べてもあの【乙女ゲーム】のキャラであるカリヤル・ローゼンタールしか出てこなかった。

つまりやっぱりここはあの世界なのか。というかキャラの見た目が一致してるし。

「あ,さっきのはカリヤル様はマリア様との結婚を望んでいましたようなので勝手に自分で結論付けしてしまいました。マリア様が聖女というのはマリア様が聖女様のように可愛くて優しかったのであだ名でそう呼んでいました。しかし本当に聖女様かもしれませんね」

2人がなぜか顔が赤くなっている。照れているのか,図星なのか。

それが私が異世界に転生してしまった十一年前,つまり私が六歳の時であった。

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