国外追放で竜を狩る

「ふぃー。大体こんなところかしら?」

「まあフェンリルもゴブリンも見えなくなってきたし結構狩ったんじゃないかな?」

⦅ベースとなった神話だと三兄弟の長子(ちょうし)だったよね…となるとほかの二兄弟も出る予定はあるのかな?⦆

 それよりもリリスは結構怒っていた。魔物の多さにではない。そもそもフェンリルとは一体だけなのだ。それが沢山いるとなると神話へ対しての侮辱(ぶじょく)だと感じた。

「ゴブリンも見えないし魔物が落としていった道具(アイテム)売るか」


その時だった。


ギィィィィィオォォォと。何かが鳴いた。フェンリルでもゴブリンでもなかった。二種族よりもずっと威厳のある風格をしていた。

「ドラゴンだ!!リリス戦える!?」

「ええ,もちろん!」

そう言ってリリスが虚空(こくう)から取り出したのは魔法の杖ステッキだった。しかしそれは剣や槍(やり)に変化していった。

 これも魔道具の一つで想像した武器に自由に変化させることのできるものだった。

竜王殺しドラゴンストライカー!!」

竜王殺しはドラゴンを殺すのに特化したものだった。そしてドラゴンは価値の高い鱗(うろこ)と眼球を残して塵(ちり)になっていった。

 しかし,。リリスの後ろに回り,ドラゴンの高すぎる威力の魔法で彼女を殺そうとした。

⦅まずっ!? 竜王殺しは一日に一回しか使えない…!とりあえず結界を…⦆

そう思考していたリリスだったがこれは杞憂だったと言えよう。後ろから声が聞こえた。


「竜王殺し」

その瞬間。カーティスに殺されるドラゴンの目から赤い,血のようなものが流れて倒れた。その後は一体目のドラゴンと同じく鱗(うろこ)と目を残して消えた。

「ありがとう,カーティス。けど竜王殺しって結構高度な術式じゃない? よく使えたね」

「ふふん。実は僕,模倣魔術(もほうまじゅつ)を使うんだよねーその技術だけは昔から高くてさ」

 模倣魔術とは,ある一定の距離で使われた魔術であれば術式を解析し,その一回だけ発動することができる。使える術式は魔術師の技量によって変わるが,竜王殺しを使えるなら相当の技術である。


 リリスも一応使えはするが,この世界ほとんどの術式を使えるため,意識しない限り使おうとはしないのだ。

「それにしても竜王殺しを模倣できるのもすごいと思うけど…カーティスって何者?」


 そんな会話を続けながら,竜が遺していった素材を売るために国の中央へ歩いていくと目を見開いてビクニデルスの重鎮らしき人物が話しかけてきた。

「その素材を持っているということは…貴方様達は竜(ドラゴン)を殺して下さったのですか?」

「まあ,そういうことになるわね。けど竜は復活するわ。またいつこの国を襲ってくるか分からないからしばらくは気を付けておいた方がいいわ。」


 リリスがそう言うと,目の前の人物だけではなく,周りの市民も泣いていた。

「ありがとうございます。偉大なる勇者様!!そうだ。これに記念して明日は祭をしましょう!今日は勇者様もお疲れでしょう。ささ,早くお休みなさいな。王城に泊まってください」

「えっ…王城ですか?残念ですがお金が少ししかありませんので…」

 カーティスが引き気味に言うと,王様(?)が笑顔で言った。

「大丈夫ですよ。もちろん無料です!私達の国だけではなく隣国(りんごく)も助けてくれたのですから!」

「どうも隣の国の首相を勤めています。せおどあです。実はたった今ドラゴンについてどうするか話し合っていたんですよ。西の国から聖女を派遣するという案もあったのですが第三王子が反対してね…しかし助かりました。お礼のお金ならいくらでも渡します」

 そう言われて重鎮組と解散した二人はドラゴンを狩った時にはなかった焦りが見えた。

「ど,どーする!? とりあえず王城に泊まらせてもらう…?」

「それは決定でいいとして,お礼のお金とか言われたよ…勇者って勘違いされたし」

 二人はとりあえずこの国で王城に泊まることを決めた。

「女性の方はこちらの部屋で…」

「待って下さい。彼女は僕が一緒じゃないと安心して眠れないんです。」

「…なるほどそういうことでしたか。すみません空気も読めずに。それでは二人ともこちらの部屋です」

⦅カーティスめ! 部屋,一緒にしやがった…あとで殴っておこっと。⦆

「それでは祭は明日です。それまでにしっかり休息してください。」

国王が扉閉めると早速カーティスが行動を起こしてきた。

「リリス。ベッドが一つしかないね? ってことで一緒に寝よ…」

「知っていますか?それ常識的にあり得ないことですよ?」


 ドラゴンを倒したあとでも相変わらずのカーティスだった。

「「おやすみ」」


 * * *


ビクニデルスに滞在して二日が経った。

「カーティスー?おはよ…えぇ…」

 そこでリリスが見たのは彼女に抱きついているカーティスだった。

「リリ,ス…まだ寝させてぇ…」

「起きろ。今日は国民が歓迎してくれるんだよ。失礼な態度をしないように。しないようにね!!」


 王城でご飯を食べて首都を回ることにした。ご飯は学園生活で食べていたものの数倍は美味しかった。まずちゃんと温められているパンに,べちゃっとしていないスープ。これが学園でのご飯の特別だった。素材も豪華で泣きそうになった。

「リリスはスープ好き?おいしいね」

「あぁ最高…学園では嫌がらせで野草くらいしか食べていなかったから…」

「なぜこんなに素晴らしい能力の持ち主が嫌がらせされているというのですか」

 リリスは学園での話のほとんどを一緒に朝食を食べているビクニデルスの国王と隣国の首相に話した。


「ひ,非道ですね…というか聞いているところだと西の国の悪女は君だと思うんだけど」

「そういえばこの地域は範囲外だったらしいんですけど王族以外はローゼンタール王国にいた人は全員聖女に洗脳されたっていう噂があるね」


 リリスはそれを肯定すると首都を歩いてもいいのかを聞いた。重鎮二人はいいよ,と言った。


 王城を出た二人は視察と祭りの買い出しを兼ねて,街を歩いた。


「んー。ここからどこに向かって歩く?ちなみに結構奥に行くと上質な魔道具を売っているらしいよー」

「そうなんだ。ところで抱きつきながら耳の近くで声を発するのをやめて欲しいんだけど」

 カーティスはそれでもリリスを放さないでいた。

「あ,あの…勇者様ですか?竜(ドラゴン)を討伐して下さってありがとうございます!」


 こんなことを街をで言われてすっかり夕方になってしまった。

「さて!祭りだよ!リリスは何を着ていくの?」

「私はこのままでいいと思うんだけど…」

「駄目だよ。リリスはこれを着ていかないと」

 そう言ってカーティスは,街で買った少しおしゃれな服を押し付けてきた。

「…部屋から出ているから。だからちゃんと着て欲しい…」

 そこまで言われると,着ないといけない雰囲気になる。すぐに着替えて部屋を出た。


「行きましょう?カーティス。貴方も着替えたのね」

「うん。君に釣り合う人間になるためにはこれくらいしかないからね」


 祭りは何をするのか不安だったリリスだったが,内容は日本の祭りと変わりがなく,屋台に出ているものが日本風じゃなかったことくらいだ。


「美味!?これすごい美味しい…」

「確かに。しかもこの国は王族絶対って感じじゃないから印象もいいね」

⦅この刀…もしかして世界には日本のような国があるのかしら?⦆

 そんなことを考えながら。リリスとカーティスは祭りを楽しんだ。


 * * *


「今日は楽しかったね。明日はどこに行こう?」

「奥にあるっていう魔道具屋に行ってみたいなー」


 そうやって今までの旅を振り返り寝る二人だった。


 二日目が終了した。

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