国外追放で祈る
芸術の国・アルティスタはいろんな芸術と言われている分野が栄えている国である。個人的な作品もそうだが,学校で合作などをして出来上がった作品が有名になることも珍しくないらしい。
「おはようカーティス……めちゃくちゃ顔色悪いけど大丈夫?」
「あ,いや大丈夫…眠れなかっただけだから」
リリスに抱きつかれながら一夜を過ごしたカーティスはどうやら眠れなかったらしい。
「ごめんね?私が抱きつきながら寝ちゃったからでしょ?」
「覚えてたの…?じゃあ,自分の意思で?」
それに気づいたカーティスは急に生気を取り戻した。
「行こう!お出掛け(デート)しよう!」
「いいよー」
リリスが言うと,カーティスは跳ね出した。
このレストランの朝食に生ハムでメロンを包んだものが出て来た。
⦅こういうのは初めて食べるなぁ…前世にもこういうのがあったからそれが元ネタかな?⦆
そんなことを考えていると,音楽が流れて来た。祖国(ローゼンタール)で流行っていた曲のリズムに似ている。
「カーティス,この曲なんか聞き覚え無い?」
「あぁ。この曲を作った人はかなりのヒットメーカーらしいよ。うちの国でも流行ってたから」
そう言っていたカーティスの手には,いつの間にかパンフレットがあった。
「ラブラブなところ邪魔しますー。おはようございますー」
「お,おはようございます」
カーティスはジェイクにそう言ってから,ジェイクの耳に口を近づけて話していた。
「よかったですねー!」
「そうなんですけど…落ち着かないというか」
「大丈夫ですよ!慣れれば良いんですよ。そうやって慌ててると幻滅されるかもしれませんよ?」
⦅男子が恋バナしている…⦆
リリスも恋バナは前世でしたことがあるが,大体修学旅行などで話を聞くか別の次元の話をしてドン引きさせるかの二択だった。つまり,まともに恋愛について話し合ったことがないのだ。
「「「ご馳走様でしたー」」」
ホテルの朝食も美味しかった。
リリス達三人が次に行くところを迷っていると,住民と思われる人がいろいろな美術館や劇場を教えてくれた。そして話し合った結果,最初に美術館へ行くことにした。
この美術館は絵画や彫刻はもちろんのこと,世界的にも有名な宗教の歴代トップの遺品が飾られている。
⦅わぁぁ!この絵画,こっちの世界の教科書で見たことあるやつだ!確か題名は四終…だったっけ?⦆
「これの題名(タイトル)は大罪と四終ってやつだよ。神教伝えられている悪しき大罪の悪魔に取り憑かれた人とその人達の終末について描かれた作品だね」
「カーティスは詳しいね。なんでそんなに知っているの?」
「実はね…一回だけここの国に訪れたことがあるんだよー」
⦅海外に行ったことがあるってことは外交の場とかで活躍していたのかな。けどそんな歳には見えないし⦆
意外と聞いたことがなかった年齢は後で聞こうと心に誓ったリリスはその後,集中して美術品を眺めた。
「めっちゃすごくなかった!?あの天井絵画とかどうやって描いたんだろ」
「ねー!彫刻も当時の文化反映させていて面白かったよ」
「あのー,盛り上がってところ申し訳ないのですが…次どこ行きますか?」
「んー。演劇見てみたいですねーカーティスはどう?」
「そうだね。僕も気になるな」
ということで次は劇場にやって来た。流石(さすが)プロの演じる場所である。魔道具も,学園祭で見たような素朴なものではなく,豪華である。
「こんにちはー。今の時間って何を行っているんですか?」
「はい。今の時間は『神の子の復活』を上演しています。もう入れませんが,次の時間もありますよ?」
「次の時間って何を上演する予定なんですか?」
「えっと…あ,はい!次は『アーサー王の死』を上演します。観ますか?」
劇場の販売員のような人と話していたリリスは,遠くにいたカーティスとジェイクの方を向いた。そうすると,二人に意図が伝わったのか,頷いてくれた。
「それじゃあそのチケットを三つお願いします」
アーサー王とは元の世界でも語り継がれていた伝説のような存在だ。
⦅魔術師マーリンの子供として育ったアーサーは伝説の剣(エクスカリバー)抜いて新しい王となるみたいな話だったけ。⦆
そう回想していると,劇が始まった。
劇が終わり,リリスとカーティス,それからジェイクはとても楽しそうに感想を言いあっていた。
それから別の美術館へ行ったり,音楽を聞いたり,満足していた。
そうして満足して二日目が終わった。
* * *
早朝,リリスは何故か目が醒めてしまったので敷地内にある庭を散歩していた。
⦅綺麗な庭…ちゃんと庭も整備されていて見物だわ…⦆
元の世界の夏休み課題に植物を育てるというものがあった。友人だった唯葉は植物を育てるのが得意だったが,リリスと言ったら,植物を放置して二次元にハマっていたからすぐに枯れてしまった。その時,唯葉と偶然いた唯葉の兄は苦笑いをし,先生にはとても酷く叱られた。もう一生植物は育てないと決めた,その瞬間であった。
「……あの,朝早くどうしたんですか?」
「わぁっ!」
リリスが驚いて,声の方を向くとホテルの従業員らしき制服を着た女性が立っていた。その女性はおどおどしているが綺麗な顔立ちだった。
「えと…貴女は?」
「カーラと言います…一応この庭の管理人をしています」
「へぇ!話を聞いてもいいですか?」
「あ,はい!この花は近くの国から取り寄せた花で…」
カーラと話を始めてから,数時間経った。カーラは花の知識だけではなく,美術,音楽,演劇,それだけではなく魔術書にも精通していた。
カーラはよく,パレットで魔法陣を描いて天使を現世に呼ぶという召喚術式を使うとのことだ。
「おはよーリリス,こんなところにいたんだ」
「あ,カーティス!今ね,この子と話していたの!」
「もう朝食の時間は終わったけど…なにか食べる?」
「いや,大丈夫。おなかすいてないから!」
カーラにおすすめの場所を聞いたら有名な教会があると言っていたのでそこに行くことにした。
「うわ教会でっか…」
「こんにちは…今から神から天啓を聞くのですが参加されますか?」
リリスとカーティスとジェイクはそれに参加することに決めた。
「今から私が神の依り代となり天啓を授けます。さあ,聞きたい方は祈ってください」
リリスたちは必死に祈っていると,急に神父が目を見開いた。
『我は神なり。未来を占い,幸せになることを努力し給え』
十数人を占った後,ついにリリス達の番が来た。
『そこの男子は…未来,そう遠くないだろう。その時が来たら,お主の愛する人は失われるだろう』
カーティスはそんなことを言われた。
リリスは少々眠くなりながら,神父の前にある椅子に座った。
その瞬間。神父が叫ぶ__というよりも,発狂し始めた。
『あ…わ…が…娘よ…うわぁぁぁぁぁ!?』
「えっあ…【魔力分散】!!!」
魔力分散は,攻撃だけではなく,対象の魔力を分散させることもできるのだ。
「はっ!はぁ…はぁ……貴女何者なのですか?神,創造神は貴女を素晴らしい人材と言っていた。以前にも神にあったことが…?」
よくわからないが,とりあえず神父様に感謝をして,教会を出た。
アルティスタを出国するまでの期間はまだある。
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