国外追放で召喚する
教会を出た三人は,浮かばない顔をしていた。
⦅いや,怖い怖い怖いって!なんで神様に認知されているの!? ……一級魔術師だからかな?魔力量も他の人よりも強いからかなぁ?けど,創造神ってことはヘルを追放させた軍神よりも地位は高いんでしょ…⦆
一人で考え込んでいたが,もう嫌になったので考えるのをやめた。
「つ,疲れた…というかびっくりしたぁ…」
「なんかすごいこと言われてたねー。私の娘とか…?あれ,お嫁にもらうとなると了承が必要になるのか?」
「え?私親いないから私が承諾したら結婚できるんじゃないの?私は…告白(プロポーズ)してくれたらいい,って言うよ?」
リリスは真面目に言った。そうすると,カーティスの顔が赤くなって照れ始めた。
「リリスっ!そんな真面目に言っちゃダメだよ!もしかして僕と結婚したいの…?」
「いや結婚は早いけど…カーティスって優しいしかっこいいし,助けてくれるから断る理由はないなって思っただけだよ」
ジェイクとは離れていつも通りに街を歩いていた。この国はどこでもおしゃれらしい。
「リリスってさ,学園の中と印象違うよね。知り合いからは頭のいい怖い人って聞いていたんだけどすごい優しいし……ちょっと抜けてるところあるよね」
「あー…あれは何と言うか…早くローゼンタールを出たかったのよ。だって婚約者を置き去りにして別の女子に貢ぐ王子とかどうなのよ!!」
「あははは…」
少し時間が経つと,リリスは祖国のいろんな愚痴を言っていった。
「大体,ちょっと睨んだらそれをすぐいじめ扱いするのはよくないと思うわ!別にいいけど」
「僕は学園も行ったことないし,婚約者とかもいたことないし昔からの友人もジェイクさんしかいないし…」
「えっジェイクさんと友達だったの?」
言っていなかったっけ,とカーティスは言った。衝撃の事実に少し驚いたが,納得した。
「じゃあカーティスはなんでタメ口じゃないの?」
「うーん。タメ口でいいのかなって気持ちがあるからさー」
⦅友達だったらタメ口で話したほうがいいよ!!⦆
心の中でそう思いながら後でジェイクさんにも話を聞いてみようと思ったリリスだった。
* * *
街を歩いていると,再びカーラに会った。
「あっ,カーラさん!」
「ひゃぁ…リリスさん!こんにちはぁ…」
「カーラさんは今何をしていたんですか?」
「今は…あと二日後に控えている降臨の儀式の準備をしているんです」
降臨の儀式とは,この国で二年に一度行われているらしい。天使をこの世界に呼び出して,魔力を分けてもらうという。ちなみに神や天使などの天上に存在している生命は魔力が永遠にある。だから人々に魔力を分け与えられることが出来るのだ。
「リリスさんは魔術が得意とお見受けしましたので…手伝っていただけませんか?」
リリスとカーティスは承諾すると,カーラは微笑んでくれた。
「で,私たちは何をすればいいんですか?」
カーラは少し不安そうに,天使の魔力を抑えられるような結界と,天使が現世にとどまることが出来るような術式を天使にかけてほしいと言ってきた。
「えっと,もし結界が壊れても私達,教会が支援します…」
リリスも本気で結界を張れると思っていなかったので,カーラに感謝を伝えた。
「えっと…今日天使を呼び出すんですか?」
「はい。当日になって失敗だったら怒られてしまうので…」
カーラにもいろいろ事情があるらしい。リリスは深くは聞かないでおいた。
「えっと結界結界っとー」
「ちょっと僕暇だからいろんな所回ってくるからー」
⦅カ,カーティスー!なんで行っちゃうのー⦆
魔術のプロに話がついて行けないからというのはリリスが知ってことではない。
「えっと…これこれ!」
リリスがそう言うと空間から本が出てきた。
「始めますよ…ぉっ?なんで空間から本が出てきているんですか…」
カーラが絶句していた。リリスはそうとは知らずに,魔術書を読んで結界を張る準備をした。
「ふう…こんなところかしら?何重にも結界を張ったんですけど大丈夫ですかね?」
「あっはい!多分大丈夫ですかね…?」
そう言うと,カーラは詠唱を始めた。そして,三十秒くらいで終わると突然路地裏が発光し始めた。
「【天使召喚】あっ!リリスさん,天使の魔力を抑える術式を!」
「【魔力吸収】!!」
リリスは,全力で魔力を吸収すると光が収まった。
「あれ,えっ?」
「カーラさんどうしたんですか?」
「前に召喚したときは光ったままだったんですけど…」
リリスとカーラが光のあった方を見ると,美形が立っていた。
『ここは…?』
「…っ!こ,ここはアルティスタってところです…前にも呼び出したことがあると思うのですが…」
リリスと話す時よりも委縮しているカーラは,もうフラフラしていた。かなり混乱しているらしい。
「ぁぁぁぁぁぁぁ…」
「カーラさん!?お願いします!気絶しないでください!」
カーラをホテルに運ぶために,浮遊の術式を使うと後ろから殺気がした。
『僕の魔力を普通の人間並みにさせたのは君かい?』
「……き,気のせいですよー」
⦅ぼ,棒読みになってしまったー!これはバレるぞ!⦆
『ふーん。まあいいけどね。僕って誕生した時から天界にいるからさ,よくこの世界を知らないんだよ』
⦅嫌な予感がする……なんていうか,ヘルと同じ時のような……お願いします!彼が旅をしたいとか言いませんように!⦆
残念ながらリリスの願いは儚く消えていった。
『僕,魔力ないから天界に帰れないんだよね。だからさ,ここの国案内してよ』
「あっ,私ここの国出身じゃないので。観光地とか分からないので」
ヘルは,可愛かったしちょっと可哀そう感があったから旅行できたが,今回の天使さんとなると可愛い要素とか可哀そうな要素とかないので,できればそういうことは避けたかった。あと,女性の目が怖い。
『あと,君は僕に借りがあるよね?』
「うっ…」
神様の怒りは怖い。もしこんな美形を泣かせたら神様は怒ってしまうに違いない。
リリスは変な被害妄想を想像しながら,しょうがなく頷いた。
「分かりましたが,まずカーラさんを運んでいいですか?」
『それは問題ない』
天使がそう言うと,カーラの体がどこかに消えていった。
「えっ?あれっ?」
『魔力が減ったとはいっても人間1人ごとき問題ではない。さあ行くぞ』
半ば強引に街へ連れ出された。
「天使っていうの面倒くさいので名前教えてくれますか?」
『ああ,マスティマだ』
結構マイナーな名前だった。リリスは知っていたが,元の世界の学校に知っている人間はどれくらいいただろうか?
「ああえっと。マスティマさんどこか行きたいとかあります?ないなら私の行ってみたいところに行きますけど」
『自由で構わない。あと呼び捨てでいい。君は僕の魔力を吸い取ったってことだから…相当な魔術師でしょ』
リリスは,不安になりながらもちょっと浮いているマスティマと共に行動を始めた。
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