国外追放の前にⅡ
で,結局私は十一年後に死んでしまうっていう結論は変えれないのかな?
いや,たぶん変えられる。だって選択肢のないゲームなんて面白くないんだから。
カリヤル以外はゲームの知識を使えば攻略できるだろう。だけれども…
⦅こんなに私をぞんざいに扱うこの国にいたくない!どうすればいいんだ…⦆
六歳(?)の頭脳なりに必死に考えていった。その結果だった。
⦅そうよ!そうだわ!国外追放恩赦付きになればいいのよ!⦆
本来ならばこの国の内部システムを変えようとすべく,必死になって勉学や魔術に勤しんでいるはずなのだが。もともと彼女にはそんな考えはなかった。
もうこの国をあきらめていたのだ。
そうして彼女は嬉しそうに異世界語の書かれたノートを開き,
その時のリリスは,いつもしたことのないような表情で好きなものをたくさんもらったような,そんな感じだった。
【五か条】
その一 絶対に暴力を振るわない!礼儀や作法を間違っている人がいたら言葉で強く指摘する
そのニ 主人公にあんまり関わらない!面倒くさいから婚約者ともできるだけ話さない
その三 いつも威厳のある感じで行動する!だから怒るときは目を細めて声を低くする!
その四 どのルートにも関わらない!主人公ちゃんがいじめられそうになっているときはかばう。もちろん
本人にはバレずに
その五 基本的にはモブでいること!ぜったいに見ない,つるまない,話さない。だ
ちなみにこんなものを作った理由は
だったら体裁は悪くしておいた方がいい。
うん。完璧だ。これで私との婚約を邪魔だと思ったカリヤルは私の冤罪をでっちあげる。
そしてマリアや他の攻略対象の前(もっというと生徒全員の前つまり夜会でのことだが。)
しかし,マリアは私がやっていないということを知っていて,これを国王に伝える。
そしてそれに怒った国王は私を国外追放という名の旅をさせてくれるはずだ。
しかし,私にいつも付き添ってくれた人がいた。アリサだ。私がそんなことになったらアリサの就職先はどうなるのだろう。就職先どころか生活さえ怪しくなってしまうかもしれない。
「ねぇ,アリサ。もしも,もしもの話だよ?私がなんかやらかして国外追放とかになったらアリサはどうするの?」
「何を言っているのですかお嬢様!!もちろん私は貴方様に一生寄り添っていきます。たとえそれが地獄だとしても」
そういった私と同じくらいの年のアリサはそう大声で言った。
私こんなに言われるほどのことしてきたっけ。本当に覚えがない。 けど,アリサは私に寄り添ってくれると言っていた。
「よしィ,張り切って国外追放目指して頑張るぞおおお!」
それからおよそ十年の月日が経った。
「ふっふふふ…学園生活を謳歌して,
「お嬢様,そうやって国外追放を基本とした人生の
「アリサ!?普通に卒業できると思う!?婚約破棄スレッスレのこの私だよ!?いつありもしない罪を吹っ掛けられるかもしれないんだよ!?」
「はぁ…確かにそうですね。ところで目標に掲げていた『いつも威厳のある感じで行動する!』はどうしたのですか。今私の前にいるのはごく普通のどこにでもいるような学生に見えるのですが」
「…言うようになりましたわねアリサ。貴方,主人への態度は気をつけなさい。」
玄関に張られていた私の名前があるクラスに入ると,そこには結構知っている人が多くいた。
⦅うわ…
ちなみに栄えある第一位はもちろんカリヤル様だ。
もちろん婚約者と一緒の教室になるとか気まずくて仕方がない。
教室に入りとりあえず読書をしていた。
⦅カリヤル様とマリア様がいなければ絡まれることはないでしょう⦆
私が今後悔をするのならば,今ここで伏線(フラグ)をたててしまったことだろう。
「リリス様。覚悟したほうがよろしいかと。たった今フラグを建てていたので」
「アリサ,それは言わなくていいのよ私が立場をわきまえて黙っていればいいだけの話だし」
私が(学生服姿⦅一緒に入学したから当然なのだが⦆)のアリサと話をしていると男の人とぶつかってしまった。
「わっ!?すみませんお
そう
「…気安く話しかけるな」
やらかしてしまった。目の前にいる人は氷の騎士ことイワン・ルースレスだった。 威厳にびっくりしすぎて腰が抜けそうになったのは墓場まで持っていこう。
ついでに,アリサがフラグ回収完了,と言っていたのは主の優しさに免じて見逃してあげよう。
「すみません。私の不注意で不快な思いをさせてしまって…」
イワンは目を見開き,私の方に来た。
⦅殺されるかもしれないッ!?早く魔術の解析をして対策を講じないと…⦆
それは残念ながら杞憂であった。
彼はリリスの横を通り過ぎ一人の女性に話しかけた。アリサだ。
「大丈夫ですか?ぶつかられたようですが」
私は衝撃の出来事に,腰を抜かすだけでなく顎まで外れそうになった。
しかし悪役令嬢を演じるために,威厳のある女性を演じた。
「あのー。そこの女性は
口角がピクピクしていながら,私はそう威嚇した。
そう彼があの氷の騎士と呼ばれるあの人が本気で眉を下げたのは私のメイド,アリサに対してだった。
⦅ふーん。へー。私のメイドを気に入っちゃうんだぁー⦆
リリスは彼の方を半眼で見てしまった。
「…何をそんな目で見ている!?」
「いや,仲良くなりたいんだなぁと思いまして,今ならアリサを貸すこともできるのですが」
「リリスお嬢様!?私を見捨てるのですか!?」
「アリサ,見捨てるとは言っていませんし考えてもいません。貴方は私にばかり付き添っていて他の方の事情も知らないでしょう。これは命令よ。イワン様のところに行きなさい。ほら,一週間でいいわ」
「そ,そんなぁ…」
うきうきしているイワンに,泣きそうになっている(というかほぼ泣いている)アリサ。
関わらないという第四か条目が完全に崩れてしまったが,攻略対象の一人に貸しは作れた。
アリサごめん,と元の世界のどこかの僧みたいに悟った目をしてしまったリリスだった。
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