国外追放とその前にⅢ
⦅さて,アリサも1週間いないわけだしどうしましょうか…⦆
リリスは正直困っていたのだ。勉学や魔術にばかり励んでいて生活面は疎かだったのだ。その分アリサは学生生活の大部分を私の生活と学業に励んでいた。だからアリサにはリリス以外には話せる人がいなかった。
そういう理由も含めてアリサに異動を頼んだ。
⦅一週間かぁー。アリサ以上に私も友達が少ないんだよねぇー。というかいないんだよねー⦆
自分でも理由はわかっていた。 一つ目は自分が学業を極めすぎたことだ。極めすぎて今では宮廷魔導士長とも渡り合えるくらいになっていたらしい。それでみんな萎縮(いしゅく)しているのだろう。 二つ目は私の信条『いつも威厳のある感じで行動する』だ。これが意外と慣れちゃっていつも目付きが怖いとアリサに言われる。
あと三つ目は我らが婚約者(笑)カリヤル・ローゼンタールが私の悪評を広めているのだろう。悪役令嬢っぽく振る舞うのはいいことなのだが風評被害はできればやめて欲しい。
⦅王族の権限があれば婚約破棄だって簡単にできるのに⦆
とりあえずリリスが今できることといえば,学業と身の回りのことを自分だけでできるようになることと自分の友達を作ることだ。
「ま,最後のやつは無理だと思っているけど…やってみないとわかんないよねっ!」
「ひぃ…!?リリス様お許しを…!」
「リリス様どうか怒らないでください!こちらの最高級の宝石を差し上げますから…」
「…僕はこんなところで死にたくなぁい!!!いや,いやぁぁぁぁぁぁぁ!?」
私こんなこと言われるまでのことをした記憶がない。いやほんとにトラウマ埋め付けられてるよこの人たち!?あのカリヤル野郎この人達に何吹き込んだんだ…?
リリスは知る余地がなかったかもしれないが,彼らは彼女の悪魔のような魔術の特訓を知っている。彼らは悪魔も怯えるような瞳を見てきてしまった。その経験にカリヤルの言葉がトドメを刺してしまったのだ。
そんなこととは露知らず。
とりあえずほとんど人がいない裏庭にやってきた。
⦅さて,どうしたものか…最悪なことに誰もが私に怯えてるし…もう友達をつくろう大作戦は早くも決壊してしまった!?⦆
アリサがいなくなってからニ日が経った。
「つまり,四大属性と他の応用魔術は全く体系は別でな…君ら選抜クラスは応用魔術を使えるようになってもらう」
⦅どうしようか,とりあえず笑顔でいってみる…?けど私の信条に反することになるわ…⦆
彼女は授業は今までにないほどに集中していなかった。というか【友達】をつくることに全意識を集中させていたのだ。
「おいリリス・スチュアート,どこをみている。おい…おい!!」
「はい先生,すみません…」
昼休みになり,リリスは屋上に行一1人で食事をしていた。仮にも彼女は公爵令嬢なのだ。最低でも10人は周りについていないとおかしいような人間だった。おまけに学年一位だ。顔もいいから婚約者がいてもモテモテになること間違いなしだったのだ。
「だ,大丈夫ですか?とても気分が悪そうですが…」
そう言われて目を上げた。
「ひぃ…リリス様!?あ,けど大丈夫でしゅか!」
めちゃくちゃ噛んでいたのは気にしないでおこう。とりあえずこの子は私に恐れずに話しかけてくれたのだ。こんなに忌み嫌われている私に話しかけてくれて本当にありがとう。
「話しかけてくれて,ありがとう。貴方の名前は?」
「えっと…イ,イリーナ・フォンテインです…」
ゲーム内で聞いたことはない。今後
「えっと…イリーナでいいかな?本当に話しかけてくれてありがとう。でもなんでこんな人がいないところにいるの?人混みは嫌い?」
「いえ…そうではなくて…」
イリーナは少し気まずそうに話し,下を見つめた。
「実は,その…少しぶたれてしまって…でもいいんです私,没落貴族ですし」
イリーナは笑っていた。そして,その笑顔は哀愁(あいしゅう)漂うものだった。
⦅は…?なんでこんなきゃわいい娘(こ)を虐める輩がいるんだ?…あ,嫉妬か。⦆
リリスはしばらく考えて突如ひらめいたのだ。
「そうだわ!イリーナ。ちょっとあなたの教室…というか虐められた場所に案内してくださらない!?…とても辛い記憶を思いださせてしまうかもしれないけど…」
「な,なにをするんでしゅか…」
やっぱり噛(か)んでいる。可愛すぎて仕方がない。よし推そうこれから。と固く胸に誓うリリスであった。
「あらぁ?イリーナ様ではないかしらぁ?私(わたくし)達のような高貴な血筋の人間の視界に移るのは失礼ではなくて?」
目の前に現れた悪役その一は様や敬語は使っていたものの明らかに目の前のイリーナと呼ばれた女を軽蔑していた。貴族と平民では権力の差が大きすぎたのだった。
しかし…
⦅確かこの悪役その1は伯爵だったはず。
そう考えていたのは,
「あら?でしたらそちらが消えてくださらない?貴方たちの理論で言えば,私は貴方たちよりも高貴で尊い血筋ですのよ?」
そう,酷(ひど)い扱いをされすぎていて忘れていたのだがリリスは一応公爵令嬢だったのだ。
「リリス様…!?どうしてここに…いやそれよりもゆる,許してくだしゃいぃぃぃぃぃ!」
当然っちゃ当然の話だが,悪役で性格が悪くて顔もたいして良くない人間が噛んでいるのをみると共感性羞恥(きょうかんせいしゅうち)で顔が赤くなりそうだった。
「リリス様。助けてくださりありがとうございます!」
「いいのよ。イリーナそんなにかしこまらなくて。」
「ところで…リリス様って思い悩んでいるときの顔,すっごく可愛かったです!是非お友達にならせてください!」
一瞬,思考が止まったこれは夢かと思った。可愛い子がドS発言をしたら実際はこんなかんじなのかぁとも思っていた。なんなら(見えないはずの)銀河の果てが見えてしまったような気もする。
「えーっと。友達になる…?え,あ,いいけど…えっ!?本当に!?」
「あぁ…困惑している姿も可愛いです!もっと私にすべてを見せてください!」
そっかそっか…性格は
こうしてリリスとイリーナは友達(?)になったのだ。
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