第23話 秘めたる心(他視点)
私のお兄ちゃんは私にとっても優しい。それに宿題が分からなかったりしたら手伝ってくれた事もあった。そんなお兄ちゃんだったからこそ同級生には全く興味がわかなかった。
でも中学生位になってから、急にお兄ちゃんとの距離ができてしまった。なんというか話をするのが急に恥ずかしくなってしまったのだ。
お兄ちゃんは高校で凄い優秀な成績を収めているらしく、お兄ちゃんが志望しているところはまだ私にはわからないけど、大抵の大学には勉強しなくても入れるくらい頭が良いらしい。
それに運動能力も高いらしく、足も早い…それに性格が良いから色んな人に好かれている…でもそれと同時に妬み恨みもあるらしく、表立ってお兄ちゃんの事を悪く言ったりはしないがお兄ちゃんが高熱を出して一度学校を休んだ時は結構な事を言われていた…ちなみに病気なのか、ウイルス性のものなのかはわからないけど出席停止なので皆勤賞には影響が出なかった…らしい
でもお兄ちゃんは相変わらず色んなところで活躍しているみたいだ…私も嬉しい!!
しかし、今日お兄ちゃんは痴漢で捕まってしまった。
私は今までのお兄ちゃんが嘘で、この犯罪をした兄が本来なんじゃないかと思った。
でも私は今までのお兄ちゃんを信じることにした…しかし、お母さんとお父さんが話し合っているところに私も参加させられた。
「貴方…どうするの?」
「翔太は…いやあいつは犯罪者だ。俺は此処で厳しく処罰をしなければ、世間からどんな評価をされるかわからない。それに会社を潰してしまえば従業員が大変なことになってしまう…そこだけは避けなければいけない。」
「私ね…前々から従業員の方々から文句を言われてたのよ。もっと給料を上げてくれって。下手な対応を取れば、辞めていってしまうわ」
「…あいつらは今の御時世を理解しているのか?最近は感染症の流行で経済が…それに我が社も苦境に立たされているんだぞ…」
「確かに今私達だって苦しいものね…もう少し我慢してもらうように伝えるわ…」
「ねぇ…お兄ちゃんが本当に痴漢すると思っているの?」
「何を言っているんだ?あいつは許されない行為をしたんだ…だから家族であっても許されることではないぞ?」
「そうよ!!翔太は人としてやってはだめなことをやったの…私だってあの子がいつも学校で活躍しているのを知っているから、許したいけど許せないの…」
「なんでよ…お兄ちゃんが活躍しているのを知っているならお兄ちゃんから話を聞いてみるべきじゃない?」
「…」
「だってお父さんもお母さんもお兄ちゃんの話を一度も聞いていないじゃん!!それだけで決めつけるのはおかしいよ!!」
「…お前どうしちゃったんだ?」
「え?」
「おかしいのはお前だよ…なんで犯罪者のことを擁護しようとしているんだ?」
「何を考えているの!!しっかりしなさい!!」
「しっかりしてほしいのはお母さんとお父さんだよ!!なんでお兄ちゃんから話を一度も聞いていないのに、決めつけて…それにお父さんはお兄ちゃんの事を正直気にしていないでしょ?私前々から知ってたんだよ?お兄ちゃんの事を手段としてしか見てないこと」
「…だったら何なんだ?」
「…」
「正直お前にその事を気づかれているとは思わなかった…まぁバレているなら言ってもいいだろう。正直アイツのことは残念だと思っているよ。もっと我が社のために色々と活躍してほしかったのに…」
「どうしてよ…お兄ちゃん何か悪いことしたの?」
「そうだな…強いて言うならこの事件を起こしたことで俺の会社での株は下がる一方だし、世間からの評価も下がる一方だ」
「私も会社で最近変な視線を感じることが多くなった気がするわ…これもあの子のせい…」
私の意見は届かず、それどころかお母さんとお父さんに悪いのはお兄ちゃんだとずっと言われ、怖くなって逃げてしまった…でもその後もお母さんが部屋に入ってきてずっとお兄ちゃんが悪いと言ってきた。
「はぁ…取り敢えず、明日からは学校で変なことを言われるかもしれないけど、そういう人たちのことは無視しておきなさい?」
「うん…」
「貴方の兄のせいで貴方の生活もこれから崩れて行くのよ?だから恨むならお兄ちゃんのことを恨みなさい?たとえ暴言を言ったって、あの子が悪いんだから反論なんてしてこないわよ?」
私はこの人たちのことを親として見れなくなってきた…それにラインでは私を犯罪者の家族だと何人も仲の良かったクラスメイトが言っていた。
この日初めてお兄ちゃんのことを恨んだ。だが、私もお兄ちゃんにひどい態度を取ってしまった。そこについては謝りたいと心から思った。
でも、ひどい態度を取ったとはいえ犯罪者に謝る必要はあるのかな?というか、私はどっちの味方に付けば良いんだろう…
お兄ちゃんのことは少しは理解しているつもりだ。でも、正直お兄ちゃんが痴漢をしたなんて信じられなかった。
お兄ちゃんにひどい態度を取ってしまったのは、お兄ちゃんに抱える思いからくるものだと私は気づいていた。
私はお兄ちゃんに好意を抱いている。お兄ちゃんと居ると心が苦しいのだ。でもこれは絶対に隠し通さないといけない。
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