第13話 校長
学校に着いた後、俺は教室には向かわず職員室へと向かった。職員室ではまだ職員会議が行われているだろうから、校長先生や教頭先生が出張していないはずだ。この学校の職員会議では休みの先生などを把握するという意図があるらしい。
「ふぅ…緊張するな。でもしっかりしないと。」
俺は職員室の扉をいつでも開けられるように、職員室の横で待機していた。やっぱり職員会議をしているであろうこの状況で、職員室の扉を開けて先生たちを呼ぶのは恥ずかしさなどもあって、止めることにした。
そして数分経つと、続々と教員が職員室から出てきた。出てきた教員の中には見知った人も居たが、俺は話しかけたりせずに、目的である校長先生や教頭先生への事情説明をするべく職員室の扉をノックした。
職員室に入るとやはり中に残っている教員からの視線が俺に集まった。当然だが、もうすぐ授業が始まろうとしていたのだ。『もう授業が始まろうというのに、職員室に入ってくるということはよほどの事があるんだろうな…』というかのような表情をしていた。
校長先生と教頭先生がどこに居るのか聞くと、1人の教員が校長先生と教頭先生がいる場所を教えてくれた。いわゆる校長室だ。
俺はその場から逃げるようにして、校長室に向かって歩き出した。職員室の中で感じたのだが、やはり視線が冷たかった。もちろん俺の事を知らない教員も居たようなので、全員がそうではなかったが、次に職員室を訪れる時はあぁはならないだろう。
『あの生徒が噂の生徒ですよ‼』みたいな感じで、学校全体に周知されるだけだろう。その後は想像に容易い。さっきのように親切に接してくれることはないだろう。
「はぁ…憂鬱だな。」
俺はそう言葉をこぼしながらも、校長室の扉をノックした。そして入室の許可を得た後、校長室の中に入った。
校長室の中では、校長先生と教頭先生が何かについて話していたようだった。話の内容は聞こえなかったけど、おそらく俺についての話し合いだろう。
校長と教頭であれば、学校外で生徒が起こした事件について警察に情報を提供されるだろう。だから話し合いをして、早急に俺への処分を決めたかったのだろう。
「…どうして君がここに居るのかね?」
「今日は校長先生に話があってきました。それと教頭先生にも話を聞いてほしくて、学校に来ました。この理由じゃだめですか?」
「はぁ…別に構わないが、何をするつもりだ?校長である私と教頭に何かあるんだろう?話してみろ。」
「じゃあ言いますね。校長先生。それと教頭先生。お二方は俺が巻き込まれたあの件についてどれくらい情報を持っていますか?」
「巻き込まれた?…あぁあの件か。正直君に失望したよ。私は君の事を少し過大評価していたようだ。運動も勉強も一定以上の成績を収めている上に、ボランティア活動を含め地域活動にも貢献。更には部活動でもいい成績を残す素晴らしい生徒だったが、それは仮初だったようだな。」
「全くを持って君には騙されましたよ‼君は今までボランティア活動をしたりして、我々教員の心を騙していたんですね‼本当はやりたくないことでも、我々の評価を上げるためだけに我慢していたんでしょう‼」
「校長先生。俺は巻き込まれてしまっただけです。校長先生はどこまで話を聞いてるのか教えてほしいんです。情報に齟齬があるのは嫌ですから。」
俺がそう言うと、教頭先生は悩むような素振りを見せたが了承してくれた。
「ふむ…まぁ良いだろう。」
「校長先生‼こんな下劣な犯罪者の言うことなんて信用してはいけませんよ‼それに校長先生‼さっさと処分について言い渡しましょうよ‼」
「別に処分についてはもう決定済みだ。これから変わるわけじゃないし、少し遅れようが構わないだろう?」
「それもそうですな‼」
「さて…巻き込まれたね。本当によくそんな嘘を付けるもんだ。君はペテン師かなにかか?」
「…」
「だんまりか。まぁ良い。それよりも情報だったね。私が警察に説明されたのは、君が電車の中で痴漢を行為をした上、痴漢を認めなかったというところまでだな。その際に冤罪だって言っていたらしいじゃないか。嘘をつくのは止めたまえ。みっともない。」
「そのとおりですぞ‼君は自分のした行為について反省はないのかね‼」
「…」
「話をするつもりがないようだな。君は我々に要求を突きつけるだけ突きつけて自分にとって嫌な話題が出たら何も喋らないつもりか?」
「喋らないってわけじゃないです。ですがもっと詳しく教えてくれないと俺だって正しい情報を伝えることが出来ません。少なくとも俺はこの事件は冤罪だと主張してるんですから。」
「へぇ〜冤罪ね。じゃあ聞かせてほしいんだけど、冤罪だと決定づけるような決定的な証拠はないのかね?もしそういった類のものがあるんだったら、冤罪を晴らすのに協力してあげようじゃないか。だが、この場で証拠を出すのが条件だ。後から証拠を持ってきても私は協力しない。」
「別に協力してもらいたくて話をしにきたわけじゃないので、構いません。」
「はぁ…君は本当に面倒くさいな。教頭先生。ちょっと耳を…」
「?分かりました。」
校長先生は教頭先生に何かを伝えたようだ。俺にはその声が聞こえなかったため、なにを話しているのか分からなかった。
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