第12話 学校

「翔太…お前本当に学校に行くのか?」



「うん。俺自身、しっかりと話をしたいって思って…駄目かな?」



「いや駄目ではないけど…本当に大丈夫なのか心配になってね。だって学校に行ったら、何をされるかわからないんだぞ?例えば校長や教頭は、話を聞いているだろうから翔太の事を責めたりするかもしれない。それに最悪の場合、手を上げてきたりする可能性だってあるんだぞ?」



「それでもいかなくちゃいけないんだ。学校にだって連絡をせずに何日も休んじゃってるし、その事についてだって説明をしないといけないんだ。」



「それくらいだったら俺がやってやるから。今は体を休めておくのが大切だ。それに頭が痛いんだろう?だったら、やっぱりだめだ。」



魁兄は今まで、理由もなく俺の事を否定したりはしなかった。そこにはいつも明確な理由があったから俺もこの判断には納得せざるを得なかった。



俺自身、緩和されたとはいえ頭痛に悩まされている身だ。だから体を休めないと行けないというのには納得がいく。でもここで引いたら、ずっと学校に行くことが出来なくなってしまう…それはだめだ。



「ここで頑張らないと、ずっと俺は引くことになる。それに任せるとは言ったけど、学校のことは自分で解決したいんだ。」



「…わかった。その代わり俺も協力するよ。それくらいは良いだろう?」



「うん。大丈夫だよ。それじゃあ明日、学校に行って事情を説明しようと思うんだけど、なにかアドバイスを貰えないかな?」



俺がそう言うと、魁兄は少し悩む素振りを見せた後俺にこう言った。



「よし。まずはこれを…しっかりと持っていきな。」



魁兄から渡された紙を見ると、なにやら電話番号のようなものが書いてあった。魁兄から渡されたのを見るに、魁兄の電話番号だと容易に想像できる。



「これは、魁兄の電話番号であってる?それとも魁兄の知り合いの人の電話番号?」



「これは俺のスマホの電話番号だよ。どうしてこれを渡したのかって言うと、もし学校でなにか言われたり、変なことをされそうになったら迷わずその番号に電話をしてね。それと…制服借りてもいいかな?」



「良いけど…何かするの?」



「いや変なことはしないから安心して。ただ、翔太の身を守るために必要な物を付けるだけだ。それと明日行ってから、学校に再び行くことになったらそれが役に立つことになるかもしれないからな。取り敢えずは気にしなくて大丈夫だよ。」



魁兄に、制服を手渡すと魁兄はなにか装置のようなものを制服の裏側に付けたりしていた。ほとんど気にしないような大きさだったので、制服を身に着けても問題ないだろう…と思った。



「魁兄。俺明日に備えて少し早く寝るね。」



「あぁ。明日は俺が車を使って学校の前まで送っていくから、大丈夫だ。」



魁兄が車で送ってくれるというのは本当にありがたい。今も足が何故か動きにくいし、ぎこちなく動いているのをもしかしたら魁兄が見ていたのかもしれない。気を使わせてしまったな…



「ありがとう。魁兄のお陰で明日は多少ゆっくり出来るよ。本当に助かった。」



「気にしなくていいよ。それよりも1つ気になったんだけど、翔太は学校で何をするつもりなの?話を聞く限り、校長先生や教頭先生と話し合いになると思うんだけど…」



「うん。そのつもり。校長先生や教頭先生だって、すぐに害そうとはしないはずだよ。だってそんな事をすれば俺が誰かに言えばなんとでもなっちゃうからね。」



だが校長や教頭は今まで関わったことがない人達だ。それにこっちの事を学校関係者である以上、詳しく知っているはずだ。だから俺の事件に関しても何かと説明されているはずだ。



もし俺の事件のことを知っていれば、明日の説明をしに行く段階で校長や教頭がこちらにその件についての話を聞いてくるだろう。だからそこで、変に動揺をしたりしなければ何も問題ないはずだ。



「よし…明日ははじめの勝負どころだ。しっかりと頑張らないと‼」



俺は魁兄が用意してくれた部屋で一夜を明かした。魁兄が用意してくれた部屋はあの家で寝たりするよりも遥かに良かった。



魁兄は俺のために様々なものを用意してくれたようで、朝食も取って久しぶりにゆっくりとした朝を送ることが出来た。



8時位になり、魁兄の車に連れられて俺は学校へと向かった。学校の校門前につき、魁兄とは一度ここでお別れだ。



「それじゃあしっかりと頑張ってくるんだよ‼本当に大変な時は俺がいつでも駆けつけるから安心して頑張ってこい!!」



魁兄は俺の心情を察しているかのように優しく接してくれた。



俺も頑張らなければならないな…

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