第11話 内在する他人格

「ここは…どこだ?」



俺はソファーで寝てしまったはずだが…いつの間にか変な空間に俺は足を踏みいれてしまったようだ。ここからどうにかして抜け出そうとしても、そうすることは叶わなかった。



足は泥沼に沈んだかのように、動かすことを封じられ、前後に足を動かすことでさえ出来なくなった。四苦八苦している俺に、後ろから誰かが歩いてきているような気がした。



とっさに振り返るも、誰も居ない…これは当然だろう。だってここは夢の中なのだから。どうせ目が覚めれば全ては元通りになる。今起きていることは全て忘れることが出来るのだ。



拳を握り、膝に叩きつけるとようやく足を動かすことが出来るようになった。俺はこの変な空間で唯一光っている場所に向けて足を進めた。だが、足を進め始めた俺の前に黒い影のような物が立ちふさがった。



黒い影は、俺の事を見つめて動かない。黒い影を避けて通ろうとしても、俺の目の前に現れて俺が光っている場所に向かうのを阻止して来る。俺はどうして止められるのか分からず、思わずその黒い影に向けて声を荒げた。




「一体お前は何なんだ‼どうして俺が光っている場所に行こうとするのを止めようとするんだ‼どういうつもりなのか説明してくれ‼」



俺がそう言うと、黒い影はゆらゆらと揺れた後細い声で俺に何かを伝えてきた。



『俺はお前だ。そしてその逆も然りだ。俺という存在はお前の心の苦悩や怨嗟から生まれたんだ。だからお前が俺に対して今、邪魔をしないでほしいと思っているのもよく分かる。思考を共有することだって出来るんだ。』



俺はこれは夢だ…と思いながらも、心の内では否定することが出来ずに居た。何故かと言うと、今日の事に近い出来事に何回かあったことが有るからだ。



魁兄の車の中でも一度こんな感覚を覚えた。あの時は気絶するかのように眠ってしまったけれど、今は違う。多分睡眠の過程でなにかがあったのかもしれない。



『俺はお前の事を何だって知ってる。お前は本心を隠すのが本当に上手いよな?俺じゃなかったら、お前がどう思ってるかなんて心理学を専攻している人間でもわかんねぇよ。』



「…それで?どうして通してくれないの?」



『はぁ…まぁ良い。お前が今感じている感情…それは『苦悩』と『恨み』そして『怒り』だ。冤罪なのにも関わらず、話を聞いてくれない駅員に警察…そして加害者全員にお前は怒りを感じている。そうだろ?』



「間違っては居ないね。でもだから何?俺がなにかするとでも?」



『そうさ。正直意外だった。俺はお前の怒りを1番理解してるよ。だからさ…俺に体のコントロールを一時的にでも良い。渡してくれないか?』



「は?なにそれ…どういう事?」



『俺はお前だって言ったよな?あの言葉の真意を教えてやるよ。俺は正確にはお前のコピーのようなものだと思ってくれて構わない。俺は別人格だ。だから考えていることは別々だし、なにをどうしたいかの判断も別だ。ここまで言えば、何を言いたいか分かるだろ?』



「…俺になんのメリットが有るんだ?」



『メリットね…それはお前も1番分かっているんじゃないか?』



俺はそう言われ視線を床の方に落とした。魁兄には、対応を任せるとは言ったけど正直心の何処かでは自分の手で仕返しをしたいと思っているのかもしれない。



「わかった。今すぐじゃなくても、なにかの時にはお前に体を渡すよ。でもその代わり絶対に守ってほしい条件がある。」



『なんだ?』



「それは、ある程度時間が経ったら俺に体のコントロールを返すこと。ずっと渡すというのは認められない。」



『それは別に構わないさ。そもそも主人格はお前だ。俺を含めて他の奴等は全員お前に許可を貰わなきゃなにも行動できない。だが、俺の提案を呑んでくれたから俺からも対価を渡す。それは情報だ。』



「情報?」



『そうだ。それじゃあ今から言う2つの事を絶対に守れよ?1つ。絶対に心を強く持つこと。精神的に弱っていると、大変な事態に陥る可能性があるからな。2つ。お前にとってトラウマになっている場所や人物には基本合わないことだ。これらを絶対に守るんだぞ。』



影のような存在はそう言うと、すぐにどこかへ消えてしまった。そして俺も意識が現実へと引き戻されるかのように光の場所へと歩き出した。



光っている場所にたどり着くと、俺は何か嫌な感じがした。



嫌な感じがしたその刹那…俺は夢から覚めた。というか眼の前に魁兄の心配している顔が見えたため、なにかあったのだろうか?とこっちも心配してしまった。



「ん…魁兄どうしたの?」



「はぁ…心配させんなよ。翔太は今何時だか分かるか?あれからもう4時間寝てんだぞ?そろそろ起きとかないと、夜寝れなくなるからな。」



そう言うと魁兄は、俺の眼の前に飲み物を持ってきてくれた。魁兄には伝えておかなきゃ…と思い、先程の出来事を伝えることにした。



「ねぇ魁兄?俺さ…夢の中でもう一人の俺?にあったんだよね。」



「…まぁそういう夢を見たんだな。それでその夢の仲のもう一人の翔太はなんて言ってたんだ?」



確か…俺にとってトラウマに当たる場所にはいかないこと。それと、心を強く持って精神的に弱くならないことだった気がする。その旨を魁兄に伝えると、魁兄は『確かにそのとおりだな‼』と言って、俺の事を励ましてくれた。



だが、こんな風な生活をずっと続けることは出来ない。俺だって堂々と外を歩けるように鳴りたい。だから自分の冤罪を晴らすためにも行動をしなければいけないのだ。



冤罪を晴らすべく俺が最初に取る行動…それは学校側にまずは事情を説明するところからだった。もう無許可で数日も学校を休んでしまっているし、一応説明責任は有る。万が一のことを考えながらも、学校側に説明をする必要はあるだろう…








もし学校側に、虚偽の内容が伝わっていて俺の事を信じてくれないっていう事になったら…それは、トラウマに当たるのだろうか?その不安だけが拭えない。










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