第14話 理不尽な言葉
校長先生と教頭先生は話を終えたらしく、近づけていた耳を離した。そして教頭先生は校長室から出て何処かに行ってしまった。
「校長先生。教頭先生に何を言ったんですか?」
「な〜に気にすることはない。君のクラスの担任と学年主任を呼んでくるだけさ。」
学年主任…たしか少し荒っぽい人だったはずだ。体罰とまではいかなくとも、生徒に無意識に苦痛を与えているとかどうとかって聞いたことがある。
授業中に話をしていた生徒に対して1時間近く怒鳴りつけたとかいう話を聞いたこともある。そんな先生がここにくるとなると、確実に俺に絡んでくることが予想できる。
「そうですか。俺は無実ですので、何を追求されても構いません。それにあなた達が高圧的な態度を取っていられるのも今のうちです。いづれ後悔することになりますよ。」
「はっはっは!!君は面白い冗談を言う才能もあるようだ!!我々が後悔する?そんなことあるわけ無いだろう‼むしろ君のようなリスクを排除することが出来て、私はとても嬉しいよ‼」
校長とそんな風に会話を重ねていると、やがて校長室の扉が開けられ中に教頭を含めた三人が入ってきた。
教頭はニタニタと笑いながら、俺の事を見ていたが俺は特に反応を返すことはなかった。ここで無駄に反応をすることはない。それよりも学年主任のこいつにどうやって対応するのかが重要だ。
「おい‼お前自分のやったことがどれだけ駄目なことか理解しているのか‼」
「ねぇ菊池君。正直に言ってほしいの。私に嘘をつかないで?」
「富士山先生。高圧的な態度を取らないでください。そんな態度では、万が一の場合に貴方の首が飛んでしまいますよ?」
口々にそんな事を言っているが、ここは俺の弁明の場だ。事実を説明すればいいだけの話だ。落ち着いて話をすれば先生たちも少しは理解してくれるはずだ。
今はこんな事を言っているけど、本心では俺はやっていないって思ってくれているはずだ。そう信じよう。
「俺は痴漢なんてやっていません。改めて言わせてもらいますが無実です。冤罪なのでしっかりと戦いたいと思っています。」
「菊池ぃ‼お前というやつはふざけているのかぁ‼」
俺は富士山先生の威圧的な声を聞き流しつつも、内心は少し不安を抱えていた。もしかしたら変なことをしてくるんじゃないかって不安だった。でも魁兄が渡してくれた電話番号を握りしめていると不思議と不安感も薄れてきた。
「ふざけてなんて居ませんよ。逆に言わせてもらいますが、どうして先生たちは俺の事を信用してくれないんですか?」
「信用?笑わせるな‼痴漢をするような人間の事を誰が信用するか‼お前のようなやつがこの学校に居ることに俺は不満だ‼」
「藤山先生にとってはそうなのでしょうね。じゃあ他の先生はどうです?」
「私も富士山先生に同感ですかねぇ…校長先生もきっとそう思っていますよ。」
「あぁそのとおりだ。正直言って今回の事件には驚いているが、別に我が校にとって1人の金づるが消えたようなものだ。別に構わないさ。」
こいつ…生徒の事を金づるって言ったか?
「そう言えば担任の先生に話を聞いていませんでしたな。どう思いますかな?」
「…正直言うと信じてあげたいです。見ず知らずの人ならともかく、私の持っているクラスの生徒ですから、やっぱり信じてあげたいって気持ちはあるんですけど…」
先生は使い物にならないようだ。冤罪を晴らすのに協力してくれるどころか、むしろ俺の事を信用すらしてくれない。
確かに痴漢というのは外聞が悪い。だけど、事件をその場で見ていないのにこんな風に思われる筋合いは俺にはない。
「そうですか。先生方の気持ちはよくわかりました。俺は先生方とは相容れないようです。」
「そうだな。私もそう思うよ。」
俺は校長先生のその言葉を聞いて、『この学校にはもう来ることはない』と感じた。これ以上ここに居たら、むしろ辛くなるだけだろう。
「おい待て‼ここで謝罪しろ‼」
「謝罪ですか?」
「あぁそうだ。我々に迷惑をかけたんだからな。犯罪者と言えど謝罪をすることくらいは出来るだろう?土下座でもして詫びなさい‼」
「間違ったことをしていないので、謝罪をする気はありません。俺は冤罪だと主張していますよね?当人が冤罪だと主張しているのに、謝罪をさせようというのは何かしらに引っかかりますよ?」
「富士山先生。そこまでにしておきなさい。そこに関しては彼の言うとおりだ。それ以上やってしまったら、訴えられても何も言えないぞ?」
「ははは‼別に私にとって、ほとんど変わらないですよ‼考えてもみてください‼これは更生なんです‼正しい行いですので問題はありません。」
「まぁ程々にしておきたまえ。変な事はしてくれるなよ?」
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