第16話 謝罪の気持ち(妹視点)
あの日から家族は変わってしまった。元々お兄ちゃんには思春期ということも相まって、あまりいい関係を築くことが出来ていなかったが、女友達も口を揃えて『そんな物だよ〜』と言うので私はそこまで重く考えていなかった。
しかし私は、あの日以来その発言を信じていたことを後悔することになった。まず私は違和感を感じていたにも関わらずお兄ちゃんに対してひどいことを言ってしまった点だ。
違和感と言っても、自らの気づきと言ったほうが正しいかもしれない。翌々考えてみれば容易に考えられる話だが、私は父親と母親から聞いた話でしか今回の件を聞いていない。
つまり父親と母親が勘違いをしていて、間違った情報を正しいと信じ込んでいた場合私も間違った情報を正しいと認識してしまうのだ。そこに気づいたときにはもう遅かった。
最初こそ少し疑問に思っていたくらいだったけど、急にお兄ちゃんの知り合いを名乗る男性が入ってきた時はとても困惑した。
しかも聞いた話を聞いていくと、相手の職業は弁護士だと言うことがわかった。それも今回の事件について明確に戦うと意思表示をしている弁護士だ。この件についてなにか知っているかもしれない。
そう思った私は、その弁護士さんと話をしたかったが話をしたくても、きつい言葉を使ってしまったためか、相手の顔を見れば、明らかに怒りを抑えているような表情をしていた。
謝罪の言葉を伝えたくても、喉でつっかかり喋ることが出来なかった。お兄ちゃんのことについて正しい情報を得たくても、父親と母親が家に居るためどうしようもない。慰謝料を払ってもう解決したつもりになっているのだろうか?
母親は父親に弁護士を名乗る知人が来たことを伝えたらしいが、まともに相手をしてもらえなかったようだ。
父親がいくら社長だとはいえど、結局1人間であることには変わりない。もしお兄ちゃんの事件が冤罪だということが判明したら、その件についてしっかりと謝罪をしなければいけない。
もっともお兄ちゃんが私達のことを許してくれるかは分からない。一度突き飛ばされたようなものなのだから、拒絶されてどれだけ酷い言葉を浴びせられようと、私達が何かを言ったりすることは許されない。
私は悩みに悩んだ。
もしお兄ちゃんが言っていることが正しくて、お父さんやお母さんが言っていることが間違っているとしたら?今からでも謝ったほうが良いんじゃないか?そう言った感情が頭の中を駆け巡っていた。
結局私は何が正しいのか分からず、謝りに行ったほうが良いのかも、それともなにも関わらないほうが良いのかも分からなかった。
2階の自室のベットに体を預けて私はまぶたを閉じた。
お兄ちゃんはいつも私を気遣ってくれたし、優しくしてくれた。
例えばもう7年位も前の話だが、当時の私は内気な性格で人と関わりを持つことに少し恐怖を抱いていた。今でこそ人と話をしたりするのは得意だが、当時は友達と呼べる人は殆ど居なかった。
お兄ちゃんはそんな私の事を気遣ったのか、なんどか私のクラスに来て昼休みなんかに話し相手になってくれた。
お兄ちゃんが私のクラスに来てくれるようになってからは、私にも友達と呼べるような人ができた。兄妹という共通のワードで話をすることが出来るようになった私は、交流することが出来るようになった。
他にも私がまだ幼い時に、熱を出して心寂しかった時、お兄ちゃんは風邪が移ってしまうかもしれないのにもかかわらずそばに居てくれた。案の定私が治るのとほぼ同じタイミングで風邪になってしまったが、今でも思い出すことが出来る話だ。
そんなお兄ちゃんに私は中学生の時から強く当たるようになった。
小学生の時までは自分の気持ちを素直に伝えることが出来たのに、どうしてもお兄ちゃんには素直になれなかった。
周囲の子に相談しても、むしろお父さんに強く当たることのほうが多いそうでお兄ちゃんが居る子に聞いても、お兄ちゃんに特に当たったりすることはないそうだ。
中学生になった私を気遣ったのか、お兄ちゃんが私に声をかけたりしてくる回数はめっきりと減った。でも話しかけてくれる回数が減ったのはむしろ不満だった。
私は話しかけてくれるお兄ちゃんの事が大好きだった。色々な面白い話をしてくれたこともあったし、なによりも私の事を気遣ってくれる態度が好きだった。
私が眠そうにすれば良い所で話を切り上げたりしてくれるし、辛そうな表情をしていれば相談にも乗ってくれた。
毎日のように話しかけてくれていたから、話しかけられるのが当然だと感じていたのかもしれない。お兄ちゃんは前のように笑い話をしてくれるというわけではなく、伝言を頼まれた時にその伝言を伝えるくらいだった。
お兄ちゃんは私の事を嫌いになったのかな?そう考えた日々もある。でも今考えれば、私のことを心から考えてくれていたからなのだと分かる。
そんなお兄ちゃんに私は事あるごとにきつく当たった。喧嘩に発展仕掛けたことも何度もあるけれどその度に
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