第7話 心の支えになれるなら
実の母親から許可が出た以上、数十日数ヶ月と預かることなんてしないが、それ以上に翔太のことが心配だ。小学生の時に俺と話をするようになる以前に、1つ問題が起きたことがある。
それは上級生による下級生へのイジメだった。いじめられていたのは翔太だった。だから後からその事実を知ったときには驚愕したのを覚えている。この事はもうすっかり忘れていたのに何故か思い出してしまった。
とりあえず病院に連れていくことにした俺は、翔太を車に乗せたまま病院へと向かった。近所には病院が1つあるため、この付近の住人は大抵そこを頼るのだ。
受付付近に医師である友人がいたのでなんとか事情を話して説得し、受付を済ませた。その後熱を測ってみたが…どうやら熱があるわけではないらしい。それに咳き込んだりしている様子もないことから、風邪ではないことがわかった。
「…わからないな。どうすれば良いのか…」
悩んだ俺は、『翔太は精神的に参ってしまったのではないか?』と考え受付付近に立っていた精神科の医師である彼の力を借りることにした。成人の日の時にあって、ここで働いていると言っていたしな。
幸いにも空きがあるようですぐに見てもらうことができた。精神科医の先生である友と翔太は何かを話しているようだったが、非常に険しい表情をしていた。もしかして何か良くないことでも起こっているのだろうか?
俺は心配になりつつも、翔太のことを見守ることしかできなかった。診察が終わり数分経つと友人に改めて呼び出された。
そして友人は先程の翔太と話している時の表情とは打って変わって険しい表情をして話し始めた。
「これは確定事項ではないし、決して俺だけの情報を鵜呑みにせずに聞いてくれよ。それと幾つか質問をさせてほしい。お願いできるか?」
「あぁ大丈夫だ。それより何を答えれば良いんだ?」
「ではまず…直近でなにか非常に大きなストレスを抱えるような出来事はあったか?」
俺は首を縦に振り言葉を発した。
「あったらしいとしか言えないな。本人曰く、冤罪に巻き込まれたと…」
「それはいつの話だ?」
「確か昨日の話だ。昨日電車に乗っていて緊急停止された時に転倒したと聞いた。その際に女性に体の一部が触れてしまった。と言っていたな。」
「なるほど…さっきも言われたから事情は把握した。それでは次の質問だ。なぜ家族でもないのにこの子を連れてきたんだ?失礼だが、関係なんて持ってないようにしか見えなくて…そこら辺を詳しく教えてくれるないか。」
「分かったよ。まず俺とこの子との関係から説明するな。この子とは小学生の時に関係ができてからというもの、ずっと一緒に色々なことをしてきたんだ。そんなこの子が俺のことを頼ってきたんだ…何かあったのではないかと思って、家に行ったら案の定…という感じだ。」
「なるほど。それって小学6年と1年で組み合わせてやるあの時の話か?」
「そのとおりだ。一応この子の親の了承をもらっているから安心しろ。病院に必要な物もある程度はもらってるが…それとは別に、なにかあった時には対応してもらうために、一応いつでも連絡がつくようにはしている。」
「…分かった。色々と聞きたいことはありますが、とりあえず今は彼のことについて話をすることにしよう。」
「お願いします。」
「親の了承を得ているのにも関わらず、親以外の人間が連れてくる…私には彼が家族と上手いことやれていないように思えます。そこの所…実際どうなんだ?」
「…上手くいってないのは確かだろうな。俺もこの子を病院に連れてくるまでの過程で、一度話したことが有るが…なんとも掴みにくい人だった。」
「まぁわかった。まとめさせてもらうが…この子は家族とは上手くいっておらず、かといって助けてもらえる人物はお前しかいなかった…あってるか?」
「だいたいはな。それよりも聞いてほしい。この子ずっと頭が痛いと言っていたんだ。それに今もずっと頭を抑えているだろう?何が原因なのか探ってくれないか?」
「…俺はそういうのの専門じゃないから、わからないぞ?」
「だったらその先生を呼んでくるなりしてくれ頼む‼」
「…わかった。来てくれるかは別として頼んでは見るよ。それじゃあ少し待っててくれ。」
そう言うとあいつはどこかへ言ってしまった。俺と翔太は残って待機することになった。翔太の方を見るとよほど痛いのか、頭を抑えたままぐったりとしているようだった。
高校生になって不安定だった時期をある程度超えているとは言え、今回の件で翔太に押しかかってきたストレスは計り知れないくらい膨大だろう。翔太の苦しみは大きいはずだ。
俺は翔太の頭を撫でながら、1つ決意を固めた。まず最初に、自称被害者を徹底的に調べ上げる。その後翔太のことを押さえつけたやつも調べ上げる。ついでに慰謝料もどうにかして回収する。そして最後に…翔太の事を信じてやれない家族にも何かしら制裁を与えよう。
俺がやらなきゃ、翔太は一生涯この傷を背負って行きていくことになる。その傷を少しでも癒やし、何があっても味方して助けるのが俺の役目だ。
だが常日頃から一緒に入れるわけではない。だれか俺の代わりになれるような人がいれば…と俺は心のなかで思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます