第8話 調合




 翌朝。朝食のあと、私は本日のおおまかな予定を立てていた。

 まずは《調合》のレベル上げ…のための、材料集めから。『初級ポーション』の材料の『薬草』や、『初級マナポーション』の材料の『月光草』は畑で作れるようなので、始めにそれらを作る。それから晴れて《調合》のレベルを上げられる。

 そして、ある程度《調合》のレベルが上がったら、『梅酒』と『梅シロップ』を作る予定だ。レベル1でも作れるけれど、レベルが上がってからの方が美味しく作れそうなので。


 という訳で、畑に『薬草』の種を蒔いた。収穫までの時間は10分、その間に『月光草』の種を交換しておく。そして余った時間は、泉での釣りに勤しんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『泉』Lv:6

・魚が釣れる不思議な泉。

・釣り方は、釣り糸を泉に垂らして3分待つと魚が掛かるので、それを釣り上げる。釣った魚は自動的にインベントリに入る。


現在釣れる魚:イワシ、アジ、サケ、サバ、カレイ、ヒラメ、タコ、イカ、アサリ、ハマグリ、シジミ、エビ、カニ、ホタテ、マグロ、カツオ、タイ、サンマ、アワビ、カキ、ウニ

ーーーーーーーーーーーーーーー


 現在の泉はこんな感じ。シジミとかを釣るの?と思ったら、貝類は一度に10個まとめて釣れる仕様だった。あと「種類が多くて、特定の魚狙いづらくない?」と思っていたら、箱庭ポイント交換の『雑貨』タブにありました。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:1)』…100Pt

・泉でイワシ、アジを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:2)』…200Pt

・泉でサケ、サバ、カレイ、ヒラメを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:3)』…300Pt

・泉でタコ、イカ、アサリ、ハマグリ、シジミを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:4)』…400Pt

・泉でエビ、カニ、ホタテを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:5)』…500Pt

・泉でマグロ、カツオ、タイ、サンマを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ルアー(Lv:6)』…600Pt

・泉でアワビ、カキ、ウニを釣るためのルアー。

ーーーーーーーーーーーーーーー


 痒いところに手が届く箱庭ポイント交換さん。神様ほんとありがとうございます。

 あ、『薬草』出来てる。よし、収穫っと。次は『月光草』、こちらも収穫までの時間は10分なので、再び釣りに勤しむことにする。もちろん交換したルアーを使って、釣りたい魚介を狙いうち(?)だ。


 そうしているうちに『月光草』も出来たので、収穫してから『作業小屋』へと向かった。

 初めて足を踏み入れる調合部屋には、なんだか色々な器具や魔道具が並んでいた。中でも気になったのが、この魔道具。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『ガラス瓶製造機』

・様々な規格のガラス瓶を製造できる魔道具。

・ガラス瓶の材料は魔力なので、起動には使用者が魔力を注ぐ必要がある。注がれた魔力量によって、ガラス瓶の出来上がる速さが変わる。

ーーーーーーーーーーーーーーー


「なるほど、これでポーション瓶を作れと。材料が魔力だけなのは有り難いね」


 それにしても、"様々な規格"って?と思ったら、どうやらこの魔道具では、ポーション瓶のみならず梅酒や梅シロップ用と思しき大瓶も作れるようだった。便利。


「さて、さっそく《調合》してみますか」


 という訳でレッツ調合。『初級ポーション』の材料は薬草と水、それだけだ。手順としては、水魔法で出した水と薬草を専用の鍋に入れて、《調合》スキルを使う。それから出来上がった液体を布で濾しつつ大きな水差しに入れて、水差しからポーション瓶に詰め替えて完成だ。…うん、微妙にゲーム仕様だな。しかも1回でポーション5本出来るし。

 ちなみに薬草と水の分量は適量だ。いや、なんとなく「これくらいかな」と感覚で分かるのだ、不思議なことに。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『初級ポーション』

・小さな傷を治す魔法薬。

ーーーーーーーーーーーーーーー


 出来上がったポーションはこんな感じだった。シンプルすぎない?まあ良いや、とりあえずこれを量産して《調合》スキルのレベルを上げよう。




 あれから、ひたすら『初級ポーション』を作り続けた結果、《調合》スキルのレベルは3まで上がった。そしてここからは、『初級マナポーション』を作ってレベルを上げていこうと思う。

 なお『初級マナポーション』の作り方は『初級ポーション』とほぼ同じで、材料の薬草を月光草に変えただけだ。分かりやすくて良いね。

 さあ、作るぞ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『初級マナポーション』

・魔力を少量回復する魔法薬。

ーーーーーーーーーーーーーーー


 はい、出来ました。こちらもシンプルな表記だね。その後、これを量産して《調合》スキルのレベルを上げた結果、レベルは5まで上がった。どうやら『初級』シリーズではこれ以上経験値が入らないようなので、とりあえず今はこれで良しとする。


 さて、それでは本命の『梅酒』と『梅シロップ』を作っていきますか。

 まずは『梅酒』から。材料は、現実だと確かホワイトリカーと青梅と氷砂糖だったはず…なんだけど、ここでは何故か青梅と氷砂糖のみで出来る。ちなみに『梅シロップ』も同じ材料だ。違いは何?と思ったら、《調合》スキルを使う前に魔力を注ぐか否か、が違いだった。どうやら魔力によってアルコール成分を精製(?)するらしい。正直よく分からないけれど、とりあえず氷砂糖は箱庭ポイント交換で交換しておいたものを使う。

 『梅酒』を作る手順は、保存用の大瓶に梅と氷砂糖を交互に入れて、大瓶の中に魔力を注いでから、《調合》スキルを使う。これで完成。早い。

 『梅シロップ』の場合は、保存用の大瓶に梅と氷砂糖を交互に入れて、《調合》スキルを使って完成だ。なんてお手軽。

 出来上がった2つを《鑑定》してみる。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『ヘルミーナのお手製梅酒』

・芳醇な魔力を注がれ作られた最高品質の梅酒。

・カーバンクルによって作られたため、"飲んだ者に幸運をもたらす"効果がある。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ヘルミーナのお手製梅シロップ』

・最高品質の梅シロップ。

・カーバンクルによって作られたため、"飲んだ者に幸運をもたらす"効果がある。

ーーーーーーーーーーーーーーー


「最高品質にもツッコミたいけど、後半の説明よ。表に出せないシロモノになってしまったじゃないの。今のところ出す気はないけど」


 まあ、自分で飲む分には関係ないか、と無理やり己を納得させて、私は出来上がった梅酒と梅シロップの大瓶をインベントリに放り込んだ。なお大量に生産したポーション類もインベントリの中だ。


 少し遅い昼食のあと、私はさっそく自作した『梅シロップ』を飲むことにした。グラスに梅シロップを少量注ぎ、冷たい水で割る。


「ん〜美味しい〜〜」


 飲んでみると、しつこくない甘さが感じられて美味しかった。ついゴクゴクと飲み干してしまってから、ぷは、とグラスから口を離す。これは良いものを作ってしまった、と自画自賛しつつ2杯目を注いで、今度はゆっくりと味わって飲む。


 そうして存分に梅シロップを楽しんだあとは、泉へと向かった。本日の予定を消化してしまったので、夕食に向けて釣りをすることにしたのだ。まあ夕食、というよりは晩酌になるのだけど。


「梅酒が私を待っている。ていっ」


 気合いを入れて釣針を泉に投げ入れる。何が釣れてもツマミになるので、今回はルアーは付けていない。

 それから私は、夕暮れ時まで釣りに勤しんだのだった。




 そして待ちに待った夕食の時間。何を作るか悩んだ結果、お刺身盛り合わせとアジのなめろう、アサリの酒蒸しを作った。ちなみにお刺身は、サーモン、ヒラメ、タコ、イカ、エビ、カニ、ホタテ、マグロ、ウニの9種類を盛り合わせた。その中でもサーモンとウニが多めになっているのは、単に私の好物だからである。魚介類はなんでも好きなんだけどね。もちろん、お肉も好きだけど、本日は魚介類です。

 では、まずは梅酒から。


「…はあー、何これ、美味しすぎない?」


 お手製梅酒はとても美味しかった。ロックで飲んでいるのだけど、まろやかな口当たりで甘味もしつこすぎず、いくらでも飲んでいられそうだった。せっかく作ったのでツマミも食べるけれど、主役は間違いなくこの梅酒だろう。

 それでも、今世の私はそこまでお酒に強くないので、3杯目くらいで梅酒は止めておいた。また記憶を飛ばすのは勘弁だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る