第20話 ドレスの完成と、宝飾品
結論から言うと、白金ランクの依頼というものは存在しなかった。というのも、そもそも白金ランクという存在が規格外の代名詞であり、数が圧倒的に少ないからだ。なので、私は金ランク向けの依頼を受けることにした。
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『ブラックドラゴンの逆鱗の納品』
推奨ランク:金の一
達成条件:ブラックドラゴンの逆鱗を冒険者ギルドに納品する。最低1枚以上、上限は10枚まで。
報酬:1枚につき150万ベル
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逆鱗はドラゴン1体につき1枚しかない部位だ。しかもブラックドラゴンは『竜鱗の迷宮』の第6〜9階層の、各階層に1体ずつしか出現しないので…よし、どうせなら第6階層から最下層である第10階層までを周回しよう。
ということでやって来ました、『竜鱗の迷宮』。第6階層からスタートして、各階層でブラックドラゴンを仕留めて、ついでにお宝も手に入れつつ最下層まで《飛翔》の魔法で突っ走る。なお攻撃方法は以前と同じ《レーザー》の魔法です。逆鱗は喉の下の方にあるので、《レーザー》で眉間を貫いて倒す戦法だ。
最下層でボスであるゴールドドラゴンを秒殺して、出現した大きな宝箱をインベントリに回収する。そして一旦外に出て、また第6階層へ。この流れを3周ほど繰り返して、ようやくブラックドラゴンの逆鱗が12枚ほど集まった。ちなみに、倒したドラゴン達はその場で『自動解体の杖』を使って解体済みだ。うん、やっぱりこの魔道具、便利だね。
ガニーの冒険者ギルドへと戻ると、私はギルドカードと依頼票と共にブラックドラゴンの逆鱗が10枚入った袋を窓口に提出した。すると受付のお姉さんがモノクルのようなものを片目に着けて、袋の中身を確認したあと、
「依頼達成ですね。お疲れさまでした」
そう言って、1500万ベルーー白金貨1枚と金貨5枚ーーが入った袋を手渡してくれた。なるほど、さっきのモノクルのようなものは《鑑定》の魔道具なのかな?まあ良いや、とりあえず報酬とギルドカードをインベントリに仕舞って、と。次は解体済みのドラゴンの素材を売るために買取り窓口に並んで、いつものごとく裏の倉庫に案内されたので、職員さんに指示された通りに素材を積み上げてゆく。
査定のあと、報酬をもらってギルドをあとにすると、私は王都の屋敷へと《転移》して、遅めの昼食を摂ることにした。なお本日のメニューはチキンカツ定食だった。美味しかったよ、さすがイライザだ。最近彼女は和食作りにはまっているらしく、白米と味噌汁が食卓によく並ぶようになった。
ちなみに和食の料理本や味噌や醤油などの調味料を彼女に渡したのは私だ。本は箱庭ポイント交換にあったから、何冊か纏めて渡しておいた。調味料も同じく。だって、イライザの作る美味しい和食が食べたかったんだもの…。
それから、しばらくして。前に注文していた私のパーティードレスやドレスワンピースが届けられた。届けてくれたのは、デザイナーのナターシャさんと、数人のお針子さん達だった。
「ご注文いただいていたパーティードレス3着と、ドレスワンピース5着をお届けに参りました」
「ありがとう。さっそく見せてくれますか?」
「もちろんです。ではまずはパーティードレスから」
ナターシャさんは《アイテムボックス》を使えるらしく、そこから3着のパーティードレスを、それを着せたトルソーごと取り出した。なるほど、これは見やすいな。
パーティードレスは、濃い赤色を基調としたものと、深い青を基調としたもの、水色を基調としたものを作ってもらった。パーティードレスと言っても、形はこの世界の常識に当てはめたもので、脚は極力見せない形のものだ。肩まわりはけっこう出てるのにね。上は良くて下はダメなのは何故…?まあいいや、今はドレスのデザインについての話だ。
濃い赤色のものはエンパイアラインで、深い青色のものはマーメイドライン。水色のものは王道のAラインにしてもらった。それぞれ装飾は金糸や銀糸での刺繍や、繊細なレースにしてあって、とても上品な仕上がりとなっている。それに手触りもとても良い。さすがは"布の街"エリル産の生地だ。
3着とも試着して、ピッタリだったので次はドレスワンピースを見せてもらうことにする。こちらはデザインは5着ともほぼ同じで、刺繍の模様と布地の色が違う作りになっている。
色はそれぞれ、黒、白、濃紺、深緑、真紅だ。どれもスパイダーシルクを使った高性能な品で、試着してみたけれど着心地がとても良かった。あと魔法による各種付与が通常よりも容易に掛けられたのも、スパイダーシルクの性能だろう。
「どれもとても素敵です。ナターシャさんもお針子さん達も、素晴らしい仕事ぶりですね」
「ありがとうございます、ヘルミーナ様」
それから、アグネスに預けていた代金をナターシャさんに手渡してもらう。相場より多めに用意しておいたので、ナターシャさんは驚いていたけれど、笑顔で押し切った。こういう時じゃないとお金を使う機会が無いんだよ、本当に。
その翌日、私は『箱庭』の作業小屋にて、『竜鱗の迷宮』で手に入れた宝飾品達を改めてじっくり眺めていた。前は何も気にせず鋳溶かしたけれど、オークションで王侯貴族に売れるだけあって、これらの宝飾品は出来が良いのだろう。
「これを再現するセンスは、私には無いよね…」
せっかく素敵なパーティードレスを作ってもらったのだから、それに見合う宝飾品を用意しよう!と思い立ったのはいいものの、気の利いたデザインが全く浮かばない。だからこうして、既存の宝飾品からデザインを勉強しようと思ったのだけど……難しい!そもそも私、流行りとか知らないし、これは無理なのでは?
午後、気分転換でガニーの冒険者ギルドに赴いたら、ちょうど休憩時間に入ったというローナさんと会ったので、
「ドレスに合うお洒落な宝飾品が作れません」
と愚痴ったら。
「本職の人に製作を依頼すれば良いんじゃない?というか、ドレスはそうしたんでしょう?」
と、不思議そうに首を傾げられた。……そりゃそうだ。むしろ私、何故いままでそれを思いつかなかったのか。当たり前のように自作することしか考えていなかったよ。
ああでも、宝石は私が作ったものを使ってほしいのだけど、素材持ち込みとかってアリなのかな?それもローナさんに尋ねると、
「自分で手に入れた素材を持ち込んで職人に作ってもらう人は、まあそれなりにいるわよ」
とのお答えが返ってきた。なるほど。
それから、ローナさんに腕の良い宝飾職人を教えてもらって、なんと紹介状まで用意してもらった。
曰く、「変わった人だけど、腕は確かで口も固いわよ」、とのこと。なお、所在地は王都ではなく、ガニーから見て北西に位置する街、クイユらしい。
クイユは、別名"宝飾の街"とも呼ばれている。数多の鉱脈を内包するミゼ山脈の麓にある街で、近郊には宝石を多く産出する迷宮があるらしい。そんな環境なので、宝飾職人がたくさん居るのだとか。
ちなみに、クイユの近郊にある迷宮の名称は『カーバンクル迷宮』らしいです。…そこに
まあ、迷宮には今のところ用はないし、クイユに着いたら真っ直ぐに
宝石のカットも、プロの職人さんにお願いしたいから…用意する宝石は、少し大きめの塊にした方が良いかな?いや、いくつかサイズを用意すべき?……いっそそれも宝飾職人さんに聞こうか。どの宝石をどのくらいの大きさで、いくつ必要なのか。私の保有魔力はそうそう空にならないような量なので、その場で作っても良いし。
なお、ステータスについては最近見ていなかったけれど、国王陛下からの指名依頼などをこなした結果、色々と成長していた。
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名前:ヘルミーナ
種族:
性別:女性
外見年齢:15歳(実年齢:0歳)
基礎Lv:92
保有魔力:37804900/37804900
『所持スキル(アクティブ)』
《水魔法》Lv:10(MAX) 《火魔法》Lv:10(MAX) 《風魔法》Lv:10(MAX) 《土魔法》Lv:10(MAX) 《光魔法》Lv:10(MAX) 《闇魔法》Lv:10(MAX) 《時空魔法》Lv:10(MAX) 《無属性魔法》Lv:10(MAX) 《瞑想》Lv:10(MAX)
《剣術》Lv:10(MAX) 《槍術》Lv:10(MAX) 《戦棍術》Lv:10(MAX) 《体術》Lv:10(MAX) 《隠密》Lv:10(MAX) 《弓術》Lv:5 《投擲術》Lv:5 《暗器術》Lv:5 《刀術》Lv:10(MAX)
《鍛冶》Lv:10(MAX) 《料理》Lv:10(MAX) 《調合》Lv:10(MAX) 《錬金》Lv:10(MAX) 《裁縫》Lv:8
『所持スキル(パッシブ)』
《魔法効率化》Lv:10(MAX) 《魔力回復力上昇》Lv:10(MAX) 《魔力制御力上昇》Lv:10(MAX) 《解体》Lv:10(MAX)
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基礎レベルがとうとう90台になって、保有魔力が3000万を超えた。以前試したけれど、ルビー(極大)を作成するのに必要な魔力が10万ほどだったので、もう私は宝石作りでは魔力が枯渇することはない気がする。…等身大の宝石とかを作ったりしたら空になるかも?やらないけど。
「とりあえず、明日はクイユに向かおう」
《飛翔》の魔法で空の旅だ。地図を見る限り、ガニーからクイユまでは、"布の街"エリルからガニーまでよりは近いはず。
「新しい街、楽しみだな」
期待に胸を踊らせつつ、今日のところは王都の屋敷に帰って早めに就寝する。おやすみなさい。
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