第7話 初依頼はあっさりと




 翌朝。ふと思い立って、私はステータスを開いた。


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名前:ヘルミーナ

種族:宝石精霊族カーバンクル

性別:女性

外見年齢:15歳(実年齢:0歳)


基礎Lv:37

保有魔力:854200/854200


『所持スキル(アクティブ)』

《水魔法》Lv:10(MAX) 《火魔法》Lv:9 《風魔法》Lv:10(MAX) 《土魔法》Lv:10(MAX) 《光魔法》Lv:9 《闇魔法》Lv:8 《時空魔法》Lv:7 《無属性魔法》Lv:10(MAX) 《瞑想》Lv:10(MAX)

《剣術》Lv:10(MAX) 《槍術》Lv:5 《戦棍術》Lv:5

《鍛冶》Lv:6 《料理》Lv:4


『所持スキル(パッシブ)』

《魔法効率化》Lv:8 《魔力回復力上昇》Lv:10(MAX) 《魔力制御力上昇》Lv:10(MAX) 《解体》Lv:10(MAX)

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 うん、だいぶ色々と育ってるな。今さらながら、私の成長率っておかしいような気がする。昨日、それとなく冒険者ギルド職員のエルダさんにスキルレベルの目安を聞いてみたら、「レベル1で駆け出し、レベル3でベテラン、レベル5で達人」だと言われた。でも私のステータスにはレベル10が並んでいるんですよね…気にしても仕方ないことだけど。

 さて、気を取り直して、今日は再びエリルの街に行って『冒険者』としての依頼を受ける予定だ。どんな依頼があるのかな?少し楽しみだ。


 そして冒険者ギルド・エリル支部にて。私は昨日もお邪魔した2階の応接室へと案内されて、ソファーに座っている。何故?


「僭越ながら、ヘルミーナさんにお願いしたい依頼をこちらでいくつか選ばせてもらいました」


 エルダさんの言葉に、私は小首を傾げた。


「それは…指名依頼、みたいなものですか?」

「厳密に言うと違いますが、ギルドからの指名依頼のようなものになります」

「なるほど」


 とりあえず依頼票を見せてもらう。どれどれ…


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『フォレストオークの肉の納品』

推奨ランク:銀の三

達成条件:フォレストオークの肉を冒険者ギルドに納品する。最低1体分以上、上限は10体分まで。

報酬:1体分につき15000ベル

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『フォレストホースの肉の納品』

推奨ランク:銀の三

達成条件:フォレストホースの肉を冒険者ギルドに納品する。最低1体分以上、上限は10体分まで。

報酬:1体分につき15000ベル

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『ブラックカウの肉の納品』

推奨ランク:銀の三

達成条件:ブラックカウの肉を冒険者ギルドに納品する。最低1体分以上、上限は5体分まで。

報酬:1体分につき35000ベル

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「…肉の納品ばかりですね?」

「はい。こちらは需要が高いので、よく依頼が出されるんですよ。そのわりに該当の魔物達の生息地であるミラマ大森林で狩りができる人が少ないので、報酬が高めに設定されているんです」


 いかがですか?と言われて、私はあまり悩まずにこれらの依頼を受けることに決めた。というのも、もしすぐに獲物が狩れなくとも、肉については『箱庭』の倉庫に在庫があるからだ。


 依頼を受けたあと、私はさっそくミラマ大森林へと向かった。何人かあとをつけてくる輩がいたので、街を出たあと《転移》でミラマ大森林の奥地へと飛ぶ。面倒なフラグは回避するに限るよね。

 あ、ブラックカウ発見。




 それからしばらく森を探索して、フォレストオーク10体、フォレストホース10体、ブラックカウ5体を無事仕留めることができた。一旦『箱庭』に戻って獲物を解体したあと、エリルの街の外に《転移》してから街に入り、冒険者ギルドへと向かう。

 ギルドの窓口では、すぐに裏の倉庫へと案内された。そこで依頼にあった各種お肉を引き渡し、ついでにその他の素材も売り払う。依頼料を含む査定額は…257万5千ベルだった。日本円だと約2575万円くらい……うう、なんだか金銭感覚がマヒしそう。

 でもまあ、これで依頼は無事達成したことだし、今日のところは『箱庭』に帰ろう。街にいると面倒なのに絡まれそうだしね。




 『箱庭』にて。昼食を摂ったあと、私はリビングのソファーで寛ぎつつ、『幸運のルビー(中)』を量産していた。1個作成するのに魔力を3万ほど消費するので、とりあえず10個ほど作成する。それから箱庭ポイント交換の『売却』タブを開いて、1個10万Ptで10個全てを売り払った。これで所持している箱庭ポイントは106万2270Ptになった。

 私がなぜ突然こんなことを始めたのかというと、『畑』と『倉庫』のレベルを上げようと思ったからだ。なお『マイホーム』と『作業小屋』、『泉』については現状で満足しているのでこのままで良い。

 それで、現在の『畑』のレベルは40で、『倉庫』のレベルは10だ。これを、まずは『畑』からポチポチと上げてゆく。


「『畑』に関してはいくら広くても構わないんだよね。種さえ蒔いてしまえば一気に収穫できるから」


 そう、1種類の種を畑全体に蒔くと、収穫時にワンタッチで一気に収穫できるのだ。さすがのゲーム仕様、とそれに気づいた時は感動してしまった。

 という訳で、『畑』のレベルは40から80まで一気に上げた。その収穫量に見合う『倉庫』にすべく、そちらもレベルを上げてゆく。


「レベル20まで上げて、ポイント消費は合計62500Ptか。『畑』は合計4000Ptだったけど、さすがに設備はそこまで安くはないか」


 とはいえ、残りの箱庭ポイントは99万5770Ptと、まだまだ余裕だ。ひとまず箱庭ポイント交換のウインドウを閉じて、外の様子を見に行くことにした。


「おおー、畑が広がってる。レベルを上げたんだから当たり前だけど」


 80マスになり広々とした畑に、私は種を蒔いてゆく。その第1号は…『うめ(南高梅)』です。『種』タブで交換した、例の品種ごとの作物だ。ちなみに種1個で1Ptだったので、キリよく100個交換しました。私は梅酒、梅ジュースが飲みたいんだ。

 水魔法で水やりして、と。


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『畑:うめ(南高梅)』

状態:良好

収穫まで:30分

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 よしよし、美味しい梅に育っておくれよ。さて、次は『倉庫』の様子を見に行こうかな。見た目は相変わらずこじんまりしているけれど……うわあ。


「ひっっっろ。え、何これ、こんなに広がるの?」


 まるで、かつてテレビで見た某大手の通販業者が所持している巨大倉庫のようだ。ズラリと並んだ棚の間の通路は狭めだけど、それでもなお広い。

 これ、管理が大変なのでは?と思ったら、目の前にウインドウが開いた。…なるほど、このウインドウを介して管理できるらしい。ウインドウ上の操作で『倉庫』内の物を出し入れできるほか、"ソート"機能や"検索"機能まであって、なんだか至れり尽くせりな感じになっていた。もちろん、自分の手で棚から直接物を出し入れすることもできる。


「便利すぎでしょ…ありがとう神様」


 思わずその場で拝んでしまった。


 それから、私はマイホームに戻り定位置となっているリビングのソファーに座って、再び箱庭ポイント交換のウインドウを眺めていた。

 いま眺めているのは『スキル』タブだ。そこで、《調合》のスキルを200Ptで交換した。ステータスに追加された《調合》スキルをタップして詳細を確認すると、そこには現在《調合》で作れるものが一覧になっていた。


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《調合》Lv:1

・初級ポーション

・初級マナポーション

・初級解毒ポーション


 …略…


・梅酒

・梅シロップ


 …略…

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「って、梅酒と梅シロップが《調合》で作れるの?」


 これは予想外だったけど、《鍛冶》と同じくゲーム仕様な感じだったら短時間で梅酒や梅シロップを作れるかもしれない。これは期待大だね。なお梅シロップは水や炭酸水で割ると梅ジュースになるものだ。毎年作ってる人もいるよね、梅酒と梅シロップ。


 そのあとは、畑から梅を収穫したり、泉で釣りをしたりしてのんびり過ごした。明日からは、またしばらく『箱庭』に引きこもって色々しようかな。



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