第11話 お給料日と、飲み会
王都の屋敷に使用人達を雇ってから、数日が経った。当初の予定通り、屋敷内から《転移》で『箱庭』へと飛んでいるけれど、アグネス達は驚きはしたものの契約通り口外することはないようだった。それで、今後のことも考えた結果、彼女達には『箱庭』の存在を明かして、"秘密"として情報を共有することにした。
ただ、『箱庭』の説明が難しかったので、"私が生まれた時に神様からもらった特殊な空間"と説明したら、ひどく驚かれた。当たり前だよね。しかもそのあとに、"作物は季節を問わずに少しの時間で育つ"とか"魚介が釣れる不思議な泉がある"とか説明されたら、余計に混乱するよね。
でも彼女達は、わりとすぐに納得してくれた。その上で、『箱庭』よりも私が持つインベントリーー"生き物(植物を除く)以外をほぼ無限に収納できる能力"と説明したーーの方を外部に明かさないように忠告を受けた。なんでも、似たようなことは時空魔法の《アイテムボックス》で出来るけれど、"時間停止"の機能はアイテムボックスには付いていないらしい。
「バレたら即、数多の国や商人達に狙われますよ」
と、アグネスに真剣な顔で言われた。そうですね、気をつけます。ただでさえ狙われやすい
いや、人を雇ったからにはきちんとお給金を支払わねば、と冒険者ギルドにルグミーヌ湖沼地帯の魔物の素材を多めに売却したんだよね。それで、稼いだ数千万ベルは屋敷の金庫室に仕舞って、執事のアグネスに管理を任せたのだ。経費はここから賄ってね、と。
まあ、過ぎてしまったことは仕方がないとして、これから気をつけようと思う。
さて、実は本日はお給料日です。毎月末日に支払うという契約なので。
この世界では、24時間=1日間、7日間=1週間、5週間=1ヶ月、12ヶ月=1年間(420日間)となっている。そして本日は、4月の35日だ。ウチはこの世界ではよくある日払いではなくて月給制なので、例え数日間しか働いていなくとも満額支払うつもりである。
せっかくなので、"布の街"エリルで可愛い柄の布の袋を6つ買ってきて、それぞれの名前を刺繍したものをお給金袋にしてみた。さらに銀貨(1万ベル=約10万円)では使いづらいだろうから、商業ギルドで小銀貨(1000ベル=約1万円)に両替してもらってそれぞれの袋に詰めた。
「という訳で、こちらが今月のお給金になります」
そう言いながらそれぞれに袋を手渡すと、6人は中身よりもまず袋の柄や刺繍に気づいて反応をくれた。
「わあ、可愛いですね、この袋!」
「それぞれ色味が違うのか、凝ってますねえ」
「もしかして、この名前の刺繍は主様が…?」
上からベティ、イライザ、アグネスである。そしてアグネスの疑問には「そうだよ」と答えておいた。すると皆、何やら感激していたので、箱庭ポイント交換で《裁縫》スキルを交換してまで刺繍したかいがあったというものだ。
ただし、中身を見た彼女達は皆一様に呆然としていたけれど。商業ギルドのジョゼットさんから聞いた相場よりは少し多いけど、事前に説明していたし、そこまで驚くことかな。
というか、元々私は散財するために王都に来たはずで、お屋敷を買ったり人を雇ったりと確かに散財はしているのだけど、財産はむしろ増えている気がする。一昨日なんかは魔物の素材を売却して増やしているし…。でも、そもそもお金を貯め込むと経済が滞るという危機感(?)から散財しようと思った訳で、色々と購入したりしてお金を回しているから別に構わないのかな?なんて今は思っていたり。
そういえば、私のステータスについてだけど。ここ最近、ルグミーヌ湖沼地帯で狩りをしていたからか、基礎レベルがまた少し上がっていた。
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名前:ヘルミーナ
種族:
性別:女性
外見年齢:15歳(実年齢:0歳)
基礎Lv:52
保有魔力:3157200/3157200
『所持スキル(アクティブ)』
《水魔法》Lv:10(MAX) 《火魔法》Lv:10(MAX) 《風魔法》Lv:10(MAX) 《土魔法》Lv:10(MAX) 《光魔法》Lv:10(MAX) 《闇魔法》Lv:10(MAX) 《時空魔法》Lv:10(MAX) 《無属性魔法》Lv:10(MAX) 《瞑想》Lv:10(MAX)
《剣術》Lv:10(MAX) 《槍術》Lv:10(MAX) 《戦棍術》Lv:8 《体術》Lv:7 《隠密》Lv:8
《鍛冶》Lv:6 《料理》Lv:8 《調合》Lv:8 《錬金》Lv:5 《裁縫》Lv:5
『所持スキル(パッシブ)』
《魔法効率化》Lv:10(MAX) 《魔力回復力上昇》Lv:10(MAX) 《魔力制御力上昇》Lv:10(MAX) 《解体》Lv:10(MAX)
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…見ると分かる通り、保有魔力の伸び方がエグい。だって45レベルの時は104万くらいだったのに、52レベルで315万って。同じ精霊族のイライザには、"精霊族は保有魔力が増えやすい"と聞いたけれど、これはちょっとどうなんだろう。いやまあ、魔力があって損は無いんだけどね?
それはさておき。本日のメインイベントーーお給金の手渡しーーは終わったので、私は一旦『箱庭』へと《転移》した。畑に小麦の種を蒔いてから、倉庫へと移動する。今回の目的は《調合》での果実酒作りだ。そのための果物を倉庫で色々と見繕ったあと、作業小屋へと向かう。
よし、作るぞ。
〜数時間後〜
梅酒、林檎酒、杏酒、柚子酒、苺酒、桃酒、蜜柑酒、サクランボ酒、ブルーベリー酒、キウイ酒、パイナップル酒…と思いつくままに果実酒を作り上げた。《調合》すると熟成まで終わっている状態で出来上がるので、このまま大瓶ごとインベントリに仕舞って、屋敷の"時間停止"付き食料庫に詰め込んでくるつもりだ。なおそれぞれの瓶には、何のお酒かを記載してある。
なぜいきなり果実酒などを作り始めたのかというと、屋敷の使用人の皆さんが全員成人済みかつお酒好きなことが判明したからである。これはもう、皆で飲み会するしかないよね、と思った次第だ。もちろん、果実酒以外にもお酒を用意するつもりだけど、それはアグネスに手配をお願いしてきた。こういう時にお金を使わないとね。
なお、ツマミはイライザに作ってもらうので、食材については『箱庭』産のものを追加で食料庫に詰め込んでおいた。何故か《錬金》で各種チーズが作れたので、それも併せて。
ちなみにチーズの原料のミルクは、箱庭ポイント交換の『調味料』タブにあった。ご丁寧に『牛のミルク』と『山羊のミルク』があったので、遠慮なくチーズ作りに使った。
そして、数日後の夜。屋敷の食堂にて、懇親会という名の飲み会が開催された。氷砂糖を贅沢に使った果実酒は皆に大人気で、この国のお酒よりも消費されていたと思う。
「あるじさまぁ〜、このおさけ、あまくておいしいれすぅ」
「シェリル、呂律回ってないよ」
「あはは、その子は大丈夫ですよ、主様。酔うといつもこうなので。ん〜美味しい〜」
「本当に、こんな美味しいお酒が飲めるなんて…幸せです」
早々にヘベレケになったシェリルを放置して、ベティとダイアナはマイペースに果実酒を楽しんでいる。
「この柚子酒というのは良いですね。食事にも合いますし」
「アタシは梅酒が好きだねぇ。もちろん、他のもすっごく美味いけどさ」
「私は桃酒の甘さがたまらないです〜」
アグネス、イライザ、フローラの年長組も果実酒に夢中だ。うん、楽しんでくれて何よりです。
なお私は、林檎酒の水割りを片手にイライザ謹製のツマミをもぐもぐしています。ヤバイ美味しいのよ、これ。やっぱりプロの料理人の料理は違うね。
こうして、この日の夜は更けていったのだった…。
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