第2話 二日目




 翌朝。まだ薄暗いうちにベッドの上で目覚めた私は、《クリーン》という清潔化の魔法で綺麗にしたとはいえ、自身が1枚しか服を持っていない、という事実に気づいた。なお着っぱなしの服はシンプルな白いワンピースである。

 とはいえ、この現状を打開できる術なんて、箱庭ポイント交換しかないんだけど…。

 箱庭ポイント交換の『衣服・布・糸』タブを開いてみると、実に様々な衣服がズラリと並んでいた。その下には、色とりどりの布と糸が。


「といっても、しばらくは農作業と魔法や武術の訓練しかしないし、シンプルで動きやすい服で良いよね」


 ということで、丈が長めの長袖チュニックと長ズボン、あと下着を数枚交換しました。なおチュニックとズボンの色は黒だ。なんだか部屋着っぽいけど、これが上下セットで30Ptとお安かったので気にせず選んだ。

 昨夜、またルビー(小)を作って売ったので、服を交換した現在の箱庭ポイントは14350Ptほどだ。そして寝る前に色々と見ていて気づいたのは、"現在の『箱庭レベル』で増設できる設備を全て増設しないと、次の『箱庭レベル』には上げられない"ということだった。なので、増設していなかったマイホーム(Lv:2)と作業小屋(Lv:2)を1500Ptで増設しておくことにする。これで残りは12850Ptだ。


「うーん…もう1個、箱庭レベルを上げてしまおうかな。畑増やしたいし」


ーーーーーーーーーーーーーーー

『箱庭Lv:3』…2000Pt

〈解放設備〉

 倉庫(Lv:3)…600Pt

 畑(Lv:5〜8)…各100Pt

ーーーーーーーーーーーーーーー


 以上が『箱庭レベルアップ』タブの記載である。どうやら今回はマイホームと作業小屋のレベルアップはないらしい。…全部で3000Ptだし、上げてしまおう。


「交換、と」


 さて、畑の様子を見に行きますか。さっそく交換した衣服に着替えて、私はマイホームの外に出た。ちなみにマイホーム(Lv:2)ではリビングが広くなっていた。なんというか、地味な変化だな。

 外には、8マス(?)になった畑があった。まずは昨日最後に植えておいた作物を収穫してから、新たに種を蒔く。本日最初に蒔いた種はこちら。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『畑:小麦』

状態:良好

収穫まで:10分

ーーーーーーーーーーーーーーー


 これで8マス全てを埋めてみた。小麦粉はけっこう使いそうだからね。あと、1種類を全体に蒔く方が作業が楽だと気づいたのも理由のひとつだ。

 そして作物が出来上がるのを待つ間に、魔法の訓練をする。上に向けた手の平の上に、各属性の球体を作り出す…というのが訓練方法だ。昨日、思いつきでやってみたらステータスに各種属性魔法のスキルが生えたので、有効かつ手軽な訓練方法としてやってみている。


 …あ、もう収穫できるな。収穫収穫、と…?『小麦粉』と『小麦の種』が1マスから10個ずつ手に入ったぞ?


「ていうか小麦粉の袋デカ。米の時も思ったけど、この袋はどこから…?」


 そもそも小麦、すでに挽かれているのかよ、という。便利だけどさ、やっぱりシュールだよね。

 まあともかく、8マスの畑に今度は『米の種』を蒔いて水やりをする。そしてまた魔法の訓練を再開して、10分後に収穫。次に育てる作物は『白ブドウの種』で、種蒔きして水やりして…のエンドレスループだ。これを昼食の時間までやった。


「なんという作業ゲー感…楽しいし好きだけど」


 午前中に収穫した作物は、『小麦粉』『米』『白ブドウ』『赤ブドウ』『イチゴ』『じゃがいも』『とうもろこし』『にんじん』『キャベツ』『たまねぎ』『トマト』『ナス』『ピーマン』『リンゴ』『オレンジ』『モモ』の16種類だ。なんと畑で果樹も出来た。30分でわさっと木が生える光景にはちょっと驚いたけど、収穫したら木ごと消えたのにはホッとした。残ってたら困るし。


 さて、昼食の時間だけど、昨日作ったとうもろこしご飯がまだ残っているのでそれを食べようかな。デザートとして、収穫したばかりのモモを食べてみる。


「うわ、モモうま…!」


 甘くてジューシーで、とにかく美味しかった。思ったけど、『箱庭』産の作物は軒並み美味な気がする。何故かはちっとも分からないけれど、まあ美味しい分には良いだろう。


 午後からは、再び農作業と魔法の訓練のエンドレスループだ。…そして気づいたら夕方で、辺りは段々と暗くなってきていた。そんなに集中していたのか、私。

 そういえば、『箱庭』にある倉庫の仕様についてだけど、なんとデフォルトで『時間停止』機能が付いていることが分かった。なので大量に収穫した作物は全て倉庫に仕舞っている。レベル3になって容量も増えていたしね。

 というか倉庫と作業小屋、そしてマイホームについては、外観は今のところ最初と全く変わっていないのだけど…内部は広がっているし、異空間扱いなのかな?


「まあいっか。便利なのは間違いないし」


 細かいことは気にしないで、とりあえずステータスを見よう。さてさて、スキルレベルは上がっているかな?


ーーーーーーーーーーーーーーー

名前:ヘルミーナ

種族:宝石精霊族カーバンクル

性別:女性

外見年齢:15歳(実年齢:0歳)


基礎Lv:1

保有魔力:43600/54000


『所持スキル(アクティブ)』

《水魔法》Lv:5 《火魔法》Lv:3 《風魔法》Lv:3 《土魔法》Lv:3 《光魔法》Lv:3 《闇魔法》Lv:3 《時空魔法》Lv:1 《無属性魔法》Lv:3 《瞑想》Lv:4


『所持スキル(パッシブ)』

《魔法効率化》Lv:3 《魔力回復力上昇》Lv:3 《魔力制御力上昇》Lv:4

ーーーーーーーーーーーーーーー


 うん、まあまあスキルレベルは上がっているな。保有魔力も増えているし。

 ちなみに、清潔化の魔法である《クリーン》は《無属性魔法》の括りに入っている。というか、各属性魔法や時空魔法で括れない魔法は大抵《無属性魔法》に括られているようだ。無属性、便利な言葉だね。


 マイホームへと帰宅したあと、リビングのソファーに座ってから《瞑想》をして魔力の回復に勤しむ。そして保有魔力が満タンになったあとは、金策…もといポイント策に励むことにした。今は保有魔力が54000あるので、ルビー(小)を一度に5つ作り出せるのだ。

 手の平の上に魔力を凝縮させて、小さなルビーを5つ分イメージする。すると身体からごっそりと魔力が抜けて、1拍おいて手の平の上にルビー(小)が5つ、出現した。よし、成功。

 そして、出来たてホヤホヤのルビー達を『売却』タブで売り払って、50000Ptを入手した。これで箱庭ポイントは59850Ptとなった。……箱庭レベル、もっと上げれるな。ということで、『箱庭レベルアップ』タブを見てみる。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『箱庭Lv:4』…3000Pt

〈解放設備〉

マイホーム(Lv:3)…2000Pt

倉庫(Lv:4)…800Pt

作業小屋(Lv:3)…800Pt

畑(Lv:9〜12)…各100Pt

ーーーーーーーーーーーーーーー


「合計7000Ptね。余裕余裕、一括で交換しちゃおう」


ーーーーーーーーーーーーーーー

『箱庭Lv:5』…4000Pt

〈解放設備〉

倉庫(Lv:5)…1000Pt

畑(Lv:13〜16)…各100Pt

泉(Lv:1)…1000Pt

ーーーーーーーーーーーーーーー


「合計6400Ptか。これも一括で」


ーーーーーーーーーーーーーーー

『箱庭Lv:6』…5000Pt

〈解放設備〉

マイホーム(Lv:4)…3000Pt

倉庫(Lv:6)…1500Pt

作業小屋(Lv:4)…1000Pt

畑(Lv:17〜20)…各100Pt

泉(Lv:2)…2000Pt

ーーーーーーーーーーーーーーー


「合計12900Pt。これも一括で交換っと……ん?」


 残り箱庭ポイントは33550Pt……って、そうじゃなくて。箱庭レベル5から、なんか見慣れない文字列がなかった?


「『泉』…?」


 なんだこれ。…見に行った方が早いかな。という訳でお外に出てみると、『箱庭』の入り口の隣に小さな泉が出来ていた。近寄ってまじまじと眺めると、期待通りウインドウが開いた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

『泉』Lv:2

・魚が釣れる不思議な泉。

・釣り方は、釣り糸を泉に垂らして3分待つと魚が掛かるので、それを釣り上げる。釣った魚は自動的にインベントリに入る。


現在釣れる魚:イワシ、アジ、サケ、サバ、カレイ、ヒラメ

ーーーーーーーーーーーーーーー


「まさかの釣りポイントきた」


 これは嬉しい…けど、この泉は海水なのか?というような魚のラインナップだな。別にいいけど。

 とりあえず今はもう夜なので、釣りは明日からだ。…私、魚捌けないんだけど、大丈夫だろうか?何かスキルとか、探しておこうかな…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る