第21話 補充
うんざりするパーティを殺した後の旅路は平和なものだった。
次の日の昼過ぎには町へ到着し、冒険者ギルドで襲われたと報告する。
何かされるかも知れないと最初から思っていたエリーがバカとのやり取りを魔石に録画していたのでそれも提出した。
依頼主とBランク冒険者の報告とあってか、多少の質疑応答はあったが最終的に信用された。またジャスパーさんへは依頼料の返却と補償金が渡された。
僕たちはうんざりパーティの所持品などを自由に出来る事になったので、いくつか有用そうなアイテムとギルドに預けているお金を全てもらった。
正直Dランクパーティが持っているお金には期待して無かったが、思っていたよりも大幅に多かった。
恐らく今回僕たちを狙うように依頼した黒幕から前金を貰っていたのだろう。
エリーに使った解毒剤を補充する事も忘れない。今後を考え少し多めに買っておく。
「はいエリー、念の為に少し多めに持っておくといい」
「分かった」
「それとベンにも。ベン、後で使い方を教える。今後もしも僕がすぐに助ける事が出来なかったりいなかったりした場合、君がエリーを助けるんだ、分かってるね?」
「ワフ!」
エリーもベンも昨日の事を反省しているのだろう。
昨日エリーは解毒剤を持っていたのに使えなかった。
おそらく思ってもいなかった状況で冷静な判断が出来なかったのだろう。
ベンがいつでも使えるようになれば仮に身動きが出来ない状況下でも何とかなる可能性が上がる。それは生存率が上がる事につながる。
「ベンよ、お前本当に私の従魔だよな?」
「ワフ?」
「いや、私の意見も聞かずにホープの言う事を聞きすぎではないかと思っただけだ」
「ワフ!」
「そうだな、ベンの言う通りだ。変な事を言ってすまなかった」
「ワフ!」
いつも不思議に思うけど「ワフ」だけでよく会話が成り立つな。テイマーとは凄いと感心してしまう。
今回この町でジャスパーさんは新たに冒険者を雇うことはしないらしい。
あんな事があったのに僕たち二人を信用してくれているのは素直に嬉しい。冒険者ではなく僕たちを信用してくれていると言う事だからね。
「ホープよ、それは何に使うのだ?」
今僕たちは日用雑貨店にいた。
「冒険者が依頼中であるにも関わらず買うんだ。それも数日以内にまた襲われるかも知れない状況で。なら一つしか無いでしょう?」
「まさかそれが武器になるのか」
「このままじゃ使い物にならないけどね。取り敢えず二人分買おう」
今回の件、僕はかなりムカついている。
僕がいると分かっていながら自分では手を汚さずに殺しを行おうとするとは舐めてくれたものだ。
あいつら絶対に後悔させてやる。
宿に戻り僕はさっそく作業に取り掛かる。先程買った道具で武器を作るのだ。
「ホープ、ラシャドが不審な奴が二人ほどこの宿を見張っていると報告してきたぞ」
「多分監視役だろうね。襲ってはこないだろうから無視でいいと思う。動きがあればまた教えてって伝えといて」
「分かった、そう伝えておく」
ラシャド、エリーの従魔であるダークアウルの名だ。
今はもう夜更け、辺りは暗く光もほとんどない。そんな状況ではフクロウの魔物、それもダークアウルという闇で真価を発揮する存在を舐めているな。こちらの戦力を調べているはずだろうに。
どうせまた低ランク冒険者か素人でも雇ったに違いない。
町中で襲ってくるほど相手もバカではない。おそらく次の町へと続く道中に本命、黒幕本人たちが出てくる事だろう。
まったく、次の町についたらきっと昂りを抑えられずにその日のうちに適当な子を直ぐに宿へ連れ込んでしまいそうだ。
明日はジャスパーさんの手伝いをする予定だ。外の雑魚など無視して僕たちは寝る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます