第22話 黒幕の正体

 次の日、命を狙われるかも知れない状況でもジャスパーさんは商品を完売させる事に成功していた。

 この人キモが座ってるな。それに続けて完売って普通にすごい。やり手だ。


 仕入れも特に何があると言うわけでもなく、すんなりとこの町を出発する事が出来た。

 こちらを見張っていた奴らは本当に見張っていただけだったわけだ。


 休憩ポイントで休んでいるとついに本命が現れた。


「久しぶりだなボス」

「久しぶりだねレナルド。あとボスはやめてくれといつも言ってるだろう」

「そう言えばそうだったな! リーダー元気にしてたか?」

「まったく、冒険者ギルドの人間に金を渡して僕たちの動向を調べてたんなら知ってるだろ」


 やっぱりコイツらだったか。エリーと組む前のパーティメンバー、レナルド。

 それにレナルドの後ろにも他のメンバーが揃い踏みだ。


 ギルドには遠距離で連絡をすることが可能な魔道具がある。これは基本的にギルド職員しか使うことが出来ず、その内容も業務に関するもののみになっている。しかし多少お金を積めば個人的な使い方をしてくれる職員がいるわけだ。


「それで帝国のAランクパーティ様が何の用だい? 出来れば話し合いで終わってくれると嬉しいんだけど」

「ホープくんは今レベルいくつですか?」

「フレイヤ、教えてほしければ先に君のレベルを教えるべきだと思うのだけど違うかい?」

「そうですね、私は火炎魔法使いレベル65と風魔法使いレベル41です」

「僕が抜けてから火炎が5、風が1上がったのか」

「そうです、この四年で頑張りました。それでホープくんはどうですか?」

「僕は62だよ。これで満足かい?」

「おいリーダー、パーティから抜けて1しかレベルが上がってないじゃないか。何してたんだよ」

「レナルドの言うとおりです、ホープくんは何をしてたんですか。そんな女と組むからレベルが上がらないんですよ。だから私たちの元へ戻ってきてください」


 戻ってこいって言われてもな、僕がお前たちと組むのが嫌になったから抜けたんだぞ? 戻るわけないだろ。


「イザベルとサイラスも同じ考えなのかい?」

「はい、ワタシもホープさんに戻ってきて欲しいと思っております」

「オレもそのつもりだったが、どう考えても腑抜けてるようにしか思えない。鍛え直す必要がありそうだ」


 コイツらもか。うざいなぁ。


「僕は戻るつもりはないよ。レベルとランクが上がったせいで人間性が下がった君たちとパーティを組むなんてごめんだからね」

「人間性が下がったってどういうことですか? ホープくん、私には心当たりがありません」

「本当に言ってる? Aランクパーティがもう少しという辺りから君たちは人が変わったように周りを見下し横柄な態度が目立つようになった。依頼者にも高圧的になり、依頼中もリーダーだった僕の指示をまともに聞かない。ギルドでは他の冒険者に絡み理不尽な暴力を振るうことだってあった。そしてAランクパーティになってもそれは変わる事がなかった。そんな奴らと一緒なんて僕には耐えられないね」


「おいおいリーダー、俺たちは力がある選ばれた人間なんだぜ? それくらい当たり前の権利だろ。むしろ俺にはリーダーの考えかたのほうが理解できないぜ」

「レナルドの言う通りです。私たちは選ばれた人間なんですから当たり前じゃないですか。何をしても許される環境にいながらそれを行使しない方がおかしいですよ」

「そうかい。じゃあそのうち僕はジョブが一つの選ばれなかった奴だってことで理不尽な目に合わされるところだったわけだ」


「そんなことするわけないだろリーダー。仲間にそんなことをするほど俺たちは腐ってないつもりだぜ?」

「それを信じたとしても一緒にパーティを組むことは二度とないよ。僕は君たちと一緒だと思われたくないからね」

「はあ、ならやっぱ力づくしかないか」

「レナルドちょっと待ってください。ホープくんが戻って来てくれれば彼女と合わせて帝国最強のパーティになれるかもしれないんです。一緒に帝国の冒険者のトップになりませんか?」


「そういえば一人見たことない人がいるけど、新しいメンバーかい?」

「おお、そうだ。彼女はバッファーと神官のジョブを持つマヤだ。レベルは62と53だ」

「ちょっと勝手にジョブとレベルを言わないでください! はあ、初めましてマヤです。一年ほど前からこちらの【愚者と賢者トリックスター】に入れさせてもらっています」

「初めまして、聞いてるとは思うけどホープだよ」


 やはり彼女もジョブが二つあるのか。

 パーティメンバーの過半数がジョブを二つ持っていればAランクパーティとして認められるからどうかと思ったが、選ばれた側の人間だったわけだ。


「ジョブが一つの貴方を皆さんが欲しがる理由が分かりません。それにサイラスさんの言うように腑抜けていたのでしょう? パーティに入れない方がいいのではないですか?」

「うーん、俺もまさか四年でレベルが1しか上がってないとは思わなかったからなあ」

「そう思うなら帰ってくれ、僕は今依頼を受けてる最中なんだ」


 これならさっさと帰ってくれるかも知れないな。


「ホープ、まさかコイツらをタダで帰らせるつもりか?」

「どうしたのエリー、出来れば僕としてはさっさと帰ってほしいと思ってるんだけど」

「コイツらは私や依頼主であるジャスパーさんの命を狙ったんだぞ?」

「ああ、すまんすまん、リーダーに帰ってきてもらうのに邪魔だと思ったんだ。お前みたいな二流と組んだせいでリーダーが腑抜けたんだ。むしろ責任をとって欲しいくらいだぜ」

「何だと? 貴様殺してやろうか?」

「お、やるか? いいぞ、返り討ちにしてやる」


 そうか、確かに命を狙ってきた奴らを黙っては帰せないか。


「エリー落ち着いて、気持ちは分かった。ジャスパーさん、今からコイツら全員片付けたいと思うのですが構いませんか?」

「え、あ、はい。ですが2対5ですよ? 勝てるのですか?」

「問題ありません」

「はあ、分かりました。出来るだけ穏便にお願いしますね」


 依頼主の許可ももらったしやるしかないか。


「おいおい、本当に俺たちに勝つつもりかよ? リーダーでも流石に無理だぜ。デバッファーとテイマー、魔物も二体しか引き連れてないなんて、ジョブもレベルも数も負けてるんだぜ?」

「問題ないよ。君らよりエリーやその従魔たちのほうがずっと賢いからね」

「言うじゃねえかリーダー。お前らやるぞ、現実を教えてやる」

「ホープくん、死んでも文句言わないでくださいね」

「ホープさん、出来るだけ早く降参して下さい」

「腑抜けた根性叩き直してやる」

「せっかく会えましたが、もうさようならとは悲しいですね。殺してあげます」


 僕まで殺すって目的変わってるじゃないか。

 はあ、コイツら本当に僕とエリーたちを舐めすぎだ。

 現実を教えてやろう。誰に喧嘩を売り、殺意を向けたのかを分からせてやる!

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