第6話 感謝しかない

◇ ◇ ◇ ◇


 少女は押さえつけられ、それを見る男たちは諦め、しかし懇願する。少女をやるから自分達は助けてくれと。

 その言葉に少女は絶望し、涙を流しながらこの後訪れるだろう未来を幻視してしまう。


 しかし闇はそんな事は知らないとばかりに少女の服を剥ぎ、痛みを伴う事など些事だと考え一気に奥へと侵入した。

 動けない男たちは顔を顰めながらも少女と闇から目を逸らすことは出来ない。

 それほどに魅力的な光景だと理解し、そして羨望の眼差しを向けていた。


 本来ならばあそこで少女を穢していたのは自分達だったはずなのに、と。


 少女は泣き、助けを求め、そして自分の無力を嘆く。

 やがて少女は考える事をやめ、時間が経つのを待つだけの人形となってしまっていた。

 ただただ奥に届けられる無数の尖兵を受け取る人形へと。


◇ ◇ ◇ ◇


 眼下には壊れてしまった少女が倒れており、目の前には【白い騎士ホワイトナイツ】のメンバーがこちらを恨めしそうに見ていた。


「そんな目で僕を見ないでくれ。まさか処女で、誰も手を出していないなんて思わなかったんだ」

「そういう問題では無いと思うのだが」

「そう? まあいいや。エリーのご要望通り無理やりに出来たと思うんだけど、どうだった?」

「良かったぞ。帰ったら記録した魔石を楽しむとしよう」


 下心丸出しでパーティに少女をスカウトして入れたくせに、まだ誰も手を出していなかったのは以外だったな。そのおかげでこの子が本気で痛がって助けを乞う姿が見れたし、狙っていただろうこいつらが僕を視線で殺せるくらい睨みつけてきて最高に気持ちが良かった。人の女や狙っている女を横から搔っ攫い犯す事が大好きな僕としては感謝しかないな。ありがとうお前たち、最高に気持ち良かったよ。


「しかし首だけで大丈夫だろうか?」

「いいんじゃない? わざわざ死体全部町まで持って帰るのは大変だし」

「そうか、ならこいつもそうするか」


 そう言ってエリーは自分を狙って来た元Cランク冒険者の首を刎ねた。

 映像を記録するために撮影準備をしていたのだが、僕が想定していたレベルよりも低かったのか、完了した時には既にエリーは無傷で賞金首の男を倒していた。正確には胸を一刺しだ。


「とりあえず【白い騎士ホワイトナイツ】のメンバーも首を刎ねるけど、この子どうしようか?」

「別に刎ねたらいいだろう。そもそもこいつらが私たちを殺そうとしたり犯すと言っていた場面は違う魔石に証拠として記録している。ダンジョン内で殺しに来たんだ、返り討ちにあっても文句は言えん」


 そういえばこいつらが部屋に来る前から撮影してたんだったな。一応戦闘の様子も撮っているし、こちらに不都合な場面は消してしまえばいいか。


「じゃ、そういう事だからみんなバイバイ」

「ひっ、助けてくれるんじゃ――」


 仲間の毒牙から助けただけありがたく思ってくれ。

 僕は【白い騎士ホワイトナイツ】の残りメンバーも躊躇なく首を切り飛ばす。

 血が舞う光景は綺麗だけど、服が汚れてしまうのは難点だな。


「ほらベン、全員の首以外は好きにしていいよ」

「ワフ!」


 生首を含む死体全てをベンの影の中へと入れ、ベンにプレゼントだ。これでまた一つベンは強くなる。


「しかしベンが召喚術師とネクロマンサーのジョブを持ってるなんて誰も思わないよね」

「そうだな。まあそのおかげで殺しが安全に出来、お前は女とやれ、私はそれを見る事が出来る。素晴らしいな」

「ワフ!」


 ベンもどこか上機嫌に見えるな。首はなくともスケルトンの素材だからな。素材にされた人間のスキルや魔法が少しではあるが使えるので、野生のスケルトンとは強さが全然違う。

 ベンには沢山の死体を上げているので数の暴力が有効な時は頼る事も多い。

 召喚術でウルフも群れで召喚出来るのでまずルーキーに負ける事はない。なんだったらCランクパーティにも負ける事はないだろう。


「しかしギルマスの言ってた一階分の上下階層、真上または真下になら低レベルでも召喚できるって確かに盲点だったなぁ。5m以上離れた場所に召喚出来ない術師でも確かに可能な長距離召喚だ」

「そうだな。変にそんな知識を持っていたせいで冤罪が起こってしまったのは残念だが勉強にはなった」


 同じ日にダンジョンにいたというだけで冤罪を吹っ掛けられ、目の前で狙っていた女を犯され、最終的には殺されるとは運のない奴らだったな。


「そうだ、帰ったらアイリちゃんどうしようか。僕としてはもういらないんだけど」

「別に家から追い出せばいいだろう。私が強く言えば出ていくだろうし、私たちが……いや、今殺せばいいのではないか?」

「今って?」

「ベン、先に帰ってあの娘を殺してきてくれ。一度犯した後のほうがいいかもしれないな。そうすれば不法侵入した強姦魔がやった事に出来るだろう」

「なるほど、僕たちはダンジョンにいるから疑われないって事か。じゃあベン、殺した後でも前でもいいから一度犯しといてくれるかい? 一応人間がやったようにみせてね」

「ワフ!」


 僕とエリーの言ったことを正しく理解したのだろうか、ベンは一つ返事をすると影へと入り、消えていった。


「じゃあ僕たちはもう1日か2日くらいダンジョンで暇をつぶそうか」

「そうだな、そちらの方がアリバイとして十分だろう。それにベンの影の中に入れていれば生首も劣化しないしな」


 僕たちはダンジョンに来る前に想定していた日程を消化し、何食わぬ顔で町に戻るのだった。

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