第53話 不純な救助

 森に到着した僕たちはダニエル達と別れて森の中へと入って行く。


「チェルシーちゃんと来た時と殆ど変わってないね」

「ダンジョンの方が稼げるからあまり冒険者が来ないのだろう。森で金になるような依頼はルーキーでは受けられないしな」

「確かにそれもそうか。浅いエリアに生える薬草の採取はあまり稼げないし仕方ないか」


 採取量に対し支払われる金額がかなり安いんだよなぁ。それなりに時間を拘束されるのもあって、町で働く方が安全でしかも稼ぐことが出来るしね。


 そんな会話をしながら森の中を分け入って行く。アデラインが匂いを辿り、僕たちはそれに着いて行くだけだからかなり楽だ。


「アウ?」

「本当か?」

「アウ」

「ラシャドちょっと様子を確認して来てくれ」

「ホッホッ」


「急にどうしたんだい? 魔物の巣でもあるのかい?」

「いや、どうやらあっちにケガ人がいるようだ。嗅いだことのある二人組らしい」

「嗅いだことがあると言ってもギルドには何組も二人組の冒険者はいるよ。チェルシーちゃんかココちゃんのパーティかい?」

「アウ!」

「どうやらそのようだな」

「チェルシーちゃんは兎も角、ココちゃんはまだ抱いてないから死なれると嫌だし助けに行かない?」


「確かに私もあいつが寝取られる姿を見たい。仕方ない助けに行ってやるか」


 僕たちはラシャドが向かった方へとアデラインを先頭に進んで行く。


「どうやら戦闘をしているみたいだな」

「ラシャドは何をしてるの?」

「いや、ラシャドが戦ってるようだ。かなり魔物の数が多いな」

「この辺の生物相手にラシャドがまだ戦闘を?」


 この辺はまだまだ強い相手はいないはず。それこそラシャドなら多少数がいても簡単に蹴散らす事が出来る相手ばかりだ。

 そう考えながらラシャドが戦っている場所まで辿り着くと理由が分かった。


「かなりの数に囲まれてるね。ココちゃん達を守りながらじゃ流石にキツそうだ」

「アデライン、数を減らせ」

「アウ!」


 エリーが指示を出すと、アデラインは一気に加速して魔物の群れへと突っ込み、数をどんどん減らして行く。アデラインが数を減らしていくおかげでラシャドに余裕が生まれ、攻撃に転じ始めた。

 そして何十といた魔物の群れは全て一匹と一羽によって蹂躙され、全滅した。


「よくやったな」

「アウ!」「ホッホッ!」

「二人とも大丈夫かい?」

「あ、ホープさんにエリーさん! 助けていただきありがとうございます!」

「それはアデラインとラシャドに言って上げるといい。それよりレオくんは話せる?」

「ガハッ、ココだけでも、たすけ、てください……」

「レオ!」


 レオくんは足と脇腹に矢が刺さり、脇腹の方は鏃が貫通して反対側から見えていた。


「ポーションは?」

「もう全て使い切ってしまって、ホープさんお願いします! レオを助けてください!」

「分かった。レオくん、ちょっと痛いけど我慢するんだぞ!」


 そう言って僕は貫通している矢の羽側を折、鏃側から残った矢を一気に引き抜き、ポーションを貫通した脇腹へと振りかける。するとレオくんが痛みに悶え、そして傷口が塞がっていく。


「次は足の方を抜くから我慢しろ!」


 思っているより深く刺さっていたので、矢を押し込み鏃が現れるように貫通させ、先ほどのように一気に引き抜きポーションを振りかけた。


「取り敢えず傷は塞いだ。まだ血や体力は戻ってないからレオくんは動けるようになるまで休むんだ」


 僕とエリーが来たことと、自分が助かりココちゃんも助かったと安心したからか、レオくんは素直に目を瞑りその場で眠りについた。


「ありがとうございました」

「それよりどうしてウルフとゴブリンの群れに囲まれていたんだい?」


 ウルフとゴブリンが棲息している森なのは確かだけれど、それにしては数が多く、それぞれの魔物が仲違いせず協力して二人を襲っていたように見えた。

 中にはゴブリンライダーもいたくらいだ。


「ダンジョンと違う環境でいつもより注意深く進んでいたのですが、罠に引っかかって一気に囲まれてしまいました」

「ホープ、彼方からまた魔物が来るぞ」


 理由を聞いているとエリーが一方向を見ながらそう言う。


「これは近くに巣がありそうだね。規模を確認して殲滅出来そうなら僕らで、と行きたいけど、流石にケガ人を置いては行けないか」

「ラシャド、確認だけして来てくれ」

「ホッホッ」


 エリーの言葉でラシャドは魔物が来ている方向へと飛び立ち、そして魔物たちを無視して更に奥へと消えていった。


「一度森から出よう。僕がレオくんを運ぶからアデラインが先頭、その後ろを僕とココちゃん、殿にエリーだ。いいかい?」

「分かった、殿は任された」


 僕たちは簡単な隊列を組み、無事に森から脱出することに成功したのだった。

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2025年1月5日 22:03 毎週 日曜日 22:03

新人狩りの冒険者~寝取りデバッファーはルーキーの未来を奪い摘み取り貪り喰う~ ミギニール @hanzo999

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