新人狩りの冒険者~寝取りデバッファーはルーキーの未来を奪い摘み取り貪り喰う~
ミギニール
一章
第1話 若者は摘まれ
くそ! くそ! くそ! 聞いてないぞ! なんでこんな所に魔物の群れがいきなり現れるんだよ!
ここのダンジョンはモンスターハウスが無いって言ってたじゃないか!
「まったく、勝手に一人で進んで行かないでくれ。みんな心配してるぞ? ってこれはちょっとマズいな……」
小走りで俺がいるダンジョン部屋へとやってきたのは先輩冒険者のホープ。まだ冒険者になったばかりな俺達ルーキーの引率として冒険者ギルドが推薦し、ついてくる事になった人だ。
「俺だけで大丈夫だ!」
「まて、一人で突っ込んでいくな!」
俺はこの人を認めていない。いくら先輩だろうがデバッファーとかいう敵を弱くするだけの陰湿野郎の言葉なんか誰が聞くかよ。
「おら! <火炎切り>!」
「馬鹿野郎! こんな狭い部屋で火を使うな! いくらダンジョンとはいえ、すぐに空気が循環されるわけじゃないんだぞ!」
「うるせえ! <火炎切り>! <
知った事かよ、俺は魔法剣士で、特に火魔法が得意なんだ。そしてこれが一番魔物を倒すのに効率的だ。
素早く倒していかなければ活路は見出せないのだから気にする必要なんてない。
「はぁ、本当はもう少し後にしようと思ってたんだけど……流石に僕は酸欠で死にたくないからさ」
後ろで何かをつぶやく陰湿野郎。突っ立ってないでお前も戦えよ!
「なんで一人で突っ立ってるんだ! 手伝えよ! じゃないとお前も死ぬんだぞ!」
「どんどん口も悪くなるし、もういいか。<
お前の態度が気に入らないからだろうが!
だがやっと手伝う気になったのか、陰湿野郎は<
あれ、いきなり敵の攻撃が速くなった? いや、俺の動きが遅くなっているのか? なんでだ?
「ぐはっ!」
急に動きが遅くなってしまい魔物の攻撃を捌くことが出来なくなった俺はスケルトンウォリアーに切り付けられた。
痛い! 怖い! 誰か助けて!
「ひっ! ほ、ホープさん助けて!」
「なんだ、まだ気づいてないのかい?」
「な、なににですか? た、助けて!」
俺の必死の懇願に呆れた顔を見せる陰湿野郎。
「きみの動きが遅くなったのは僕が<
「な、何言って、パーティメンバーにデバフは効かないはずじゃ……」
「あー、低レベルのデバフなんて体感では分からないからね。高レベルのデバッファーを甘く見過ぎだよ。まあ普通味方にデバフをかけるような奴はいないから知ってる奴も少ないし仕方ないか」
「そんな……」
「安心しろ、ちゃんときみの仲間は無事町まで送り届けてやるからな」
「で、出来るわけがない! これだけの魔物の数だぞ! お前も俺と一緒に死ぬんだ!」
そうだ、まだ数十といるスケルトンウォリアーとウルフの群れ相手にデバッファーなんかが助かるはずがない!
「ああ、これか。これなら大丈夫、僕を襲う事はないからね」
「何言ってるんだよ、ついに気でも触れたか?」
「はあ、さっきから僕に一切攻撃してきてないって気付いて無いの? ほんときみってダメダメだね」
え、たしかに息も切らさず、いや一歩も動いていない……。なんでだ?
「まあいいや、僕は一度みんなの所に戻るよ。ああ、安心して、アイリちゃんは後で僕が沢山可愛がってあげるからね」
「待て! 行かないでくれ! 助けてくれ!」
俺が助けを求めても、いやらしい笑みを浮かべた陰湿野郎はこちらを一瞥もすることなく消えていってしまった。
「くそ! アイリに何かしやがったらゆるさねえからなあ!!! <火炎切り>! <火炎切り>! <
早く戻らないと! はやく戻らないと! はやくもどらないと! はや、くもど……あれ? めのまえが……なにもみえない? な、んで?
手足はしびれ、めまいがおこり、耳も聞こえず、俺は自分が倒れていることに気付く。
ああ、俺はここで死ぬのか。アイリごめん、俺が勝手に一人で進んだばかりに、守ってあげら――
そこには夢と希望を溢れさせた若き新人冒険者の首を持ち上げるスケルトンウォリアーと、勝鬨の遠吠えを上げるウルフたちの姿だけが残っていた。
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