第8話 昇格の最低条件
早朝から僕とエリーは冒険者ギルドで依頼を物色していた。
いくらランクが下がらないとは言え、金は減る。生活するためには仕事をしなくてはならないのだ。
「うーん、どれも難易度のわりに金払いが悪いね」
「そうだな。報酬自体は我々Bランクの物の方が多いが、どう考えても低ランクへの依頼の方が魅力的だ」
「少し別の町に行って当分そこで仕事をするってのもいいかもしれないね。商隊の護衛依頼をついでに受ければお金も手に入るしどうかな? いい気分転換にもなると思うよ」
「なるほど、確かにいい考えかも知れないな。ここ一年この町でしか依頼を受けていなかったしそうするか」
決まりだな。後は護衛依頼なんだけど、Bランクに頼むような商隊がいなかった。まあ依頼料高いからね。
「すみません、このDランク以上への護衛依頼って受けちゃだめですか?」
「受けてはダメという訳では無いのですが、あまり外聞もよくありませんし、いくらお二人がBランク冒険者だとしても報酬はここに書かれている以上を頂けるわけでもありません。それでもよろしいのでしたら受け付けますが、いかがなさいますか?」
「僕はジョブだけで難癖つけられる事が多いから別に外聞は気にしないかな。まあBランク冒険者としての信頼は失いたくはないけどね。エリーはどうだい?」
「時間ギリギリまで待って、他に誰も受ける者がいなければ我々が受ける。それならどうだ?」
「それでしたら問題ないかと。むしろこちらとしては助かります。ではこちらの依頼は明後日の正午が受注期限になってますので、それを目安にもう一度いらっしゃってください」
「そうさせてもらう」
僕たちは明後日もう一度冒険者ギルドに来ることになった。
うーん、受注出来ない可能性もあるってなんだかモヤモヤするな。
「暇になっちゃったね。体を動かしにダンジョンでも行く?」
「そうだな、金にはあまり困っていないが、肉でも取りに行こう」
魔法剣士のガキや【
「じゃあ体を動かすついでにベンのご飯を取りますか」
「ワフ!」
僕の言葉にベンが答えるがエリーは微妙な顔をしている。
「どうしたの?」
「いや、ベンは私の従魔のはずなんだがホープに懐きすぎな気がしてな。たまにベンはホープの従魔なのではないかと不安になる」
あー、確かにベンは結構僕に懐いてるな。
ベンは基本的に影から出てこないので、ベンの存在を知っている者がかなり少ない。
慣れた相手、または敵の前にしか現れることがないのでかなり僕を信頼してくれている事が分かる。
「そうは言っても僕はベンの言ってる事は全然分からないからね。まあ仲間として認めてくれてるのかなとは思ってる」
「ワフ!」
「みたいだな。犬猿の仲になられても困るからそれでいいとしよう」
おお、ベンが認めてくれたのか。これはちゃんとご飯を集めないとだな。
結局二日間ダンジョンでベンのご飯をかなり集め、倒した魔物達からは結構な数の魔石を手に入れた。これだけあれば5人パーティのルーキーなら一カ月は問題なく生活出来るだろうな。
「そろそろ帰ろうか。ベンのご飯もかなり集まったしいい運動にもなった。それにもういい時間だ」
「ワフ!」
「そうだな、では戻るとするか」
もうすぐ夕方になるだろう時間になったので、僕たちはダンジョンから出ようと出入口へ向かっている時だった。近くにいたウルフを倒すと僕の頭の中で音が鳴る。
「あ、今のウルフを倒したらレベルが上がった」
「それは良かったな、おめでとう」
「ワフ!」
「2人ともありがとう。これでやっとレベル78か、80まで長いなあ」
「レベル78もあれば十分だろう。私はまだレベル51でベンでもレベル59だ。私たちとしてはもう少し待って欲しいくらいだ」
「ワフ!」
レベルが上がると見た目は変わらないのに力や魔力などの基礎ステータスが上がる。また、その際に新たな魔法やスキルを覚える事もある。
僕は魔法やスキルを使ったり覚えたりするのが楽しいのでレベリングも苦にならない。
Bランク冒険者になる最低条件としてレベル45以上というものがある。
この最低条件として使われるレベルは別にBランクにのみ適用されるものではない。
DランクからCランクへ昇格するためにはレベル30以上が必要だ。
そしてAランクへ昇格するために必要なレベルは60以上。本当に一握りの存在しかなる事が許されない。
ただ、冒険者のランクはAが頂点ではない。その一つ上、Sランクというものも存在する。
そしてその最低条件がレベル80以上。強さで言えば人外と言われる存在だ。
実際には更に条件があり、Aランクはジョブを2つ所持、Sランクは3つ所持という神に愛されているとしか言えない才能の持ち主しかなれない。
「レベル上げは僕の趣味みたいなものだから待てないかな」
「趣味は寝取りだけで十分だろうに」
「寝取りで思いだしたけど、【
「ああ、あの子か。あれは良かったな。しかしお前は痛くはなかったのか? 一切濡れてない所に一気に入れては痛いと思うのだが」
「痛いのは痛いね。しかもあの子初めてだったし。でも痛いのもあるけど、【
「なるほどな、確かに私としても無理やりするのにわざわざ濡らしたりほぐしたりするのは萎えるのでやめてほしいからな」
そんな話をしながらダンジョンから出ると、テントがいくつかたっていた。
「すみません、実は馬車がもう無いんです」
「馬車が無い? 普通ならばまだこの時間馬車はあるはずだろう」
申し訳なさそうにダンジョンの管理を任されている男が説明してきた。
どうやら本来来るはずの馬車が一切来ないそうで、おそらく道中で何かに襲われたか道が塞がれたのではないかと考えているそうだ。
確かにどちらもありえそうだが、この辺に出てくる魔物はルーキーでも倒せる。ならば人に襲われたか、本当に道が塞がれたか。
「どうするエリー、僕としては別に徒歩で帰っても構わないけど」
「いや、今日はここで一晩過ごそう」
僕の言葉にエリーは反対にここで一晩過ごすといった。僕とは目を合わせず別の方向を見ながら。
「エリーがそういうならそうしようか」
「ああ、それがいい」
僕はエリーが視線を送っていた先を見て素直に従うのだった。
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