第2話 信用

 電車の踏切を横切っていると知り合いに出会った。

「よう」

 相手が声を掛けてきたので、足を止めた。

「久しぶりだな」

 そいつは笑った。嫌な笑みだ。自分がこいつを嫌いだったことを思い出す。

 ついでに思い出した。

「お前、たしか死んだと聞いたぞ」

 そいつはもう一度笑ってから答えた。

「そんなわけないだろう。現に俺はこうして生きている。お前、嘘を吹き込まれたんだよ」

 そうだろうか?

「いや、あいつは嘘を言う奴ではない。嘘をついているのはお前だ」

「おいおい、何を言い出すんだ。俺は・・」

「いいや、俺はお前よりはあいつを信じる。お前は死んだ」


 その瞬間、そいつは消えた。

 周囲に光景と音が戻って来た。踏切信号の警報機がけたたましく鳴っている。下りた遮断機の向こうで人々が俺を指さして騒いでいる。

 レールの上からどいて、遮断機を潜る。直後にすぐ後ろを特急列車が風を叩きながら通り過ぎていく。


 どこかで舌打ちする音がした。

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