第29話 魔王の本領
数々の漆黒の斬撃を捌いていく。しかし、ここまでダンジョン攻略に剣を使ってきたとはいえまだまだ未熟なままの俺の剣技では長年にわたって研鑽を重ねてきた初代魔王の剣をうまく受けきれるわけもない。
『感知』と魔王カイザーの剣が持つ光魔法で体を高速化してなんとか剣を合わせてきたがこのままでは防戦一方だ。ガキンッと派手な金属音を出すと、俺は数歩後ろへと退がる。そして収納からとある宝玉を取り出す。魔王シリーズの一つ、魔王スルトの宝玉である。そうして魔王スルトの宝玉をアルムへと取り付け、魔王カイザーの宝玉を収納でしまう。
===================
アルム名:魔王スルトの剣
等級:終焉級
ユニークスキル:『王の剣』
常時発動スキル:『身体強化Ⅴ』『魔法無効』『物理防御Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『状態異常無効』
魔法スキル:『剣魔法lv.EX』
特殊スキル:『バリア』『超剛力』『見切り』
魔王スルトの宝玉による祝福を受けた剣。効果を一つ選び、剣の持ち主または持ち主が認めた他者へと付与することができる。ただしその場合、他の効果は消失し宝玉は壊れてしまう。
===================
見てわかるようにこの宝玉は完全に剣特化である。騎士のような見た目から繰り出される数々の剣技によってかなり翻弄されたのを今でも覚えている。アリスが鬼神化したことで何とか倒しきることが出来た。
その剣技が今、俺の手元にあるのだ。そうして再び初代魔王と剣を交わし始める。
『急に剣捌きが上達するとは。まるで全く別人と戦っているみたいだ。その力、面白いな』
「そうかよ!」
まだ喋る余裕があるように見える初代魔王。だが、これをくらってもそうでいられるか? 俺とアリスが散々苦労させられた魔王スルトの剣技。
「
『なっ!?』
あまりにも早く振るうがゆえに一つの剣から無数の剣が生み出されるかのように見える剣技。その勢いを初見で受け流せる者はだれ一人として存在しない。そんな筈だったが……。
『暗黒魔法、
その瞬間、初代魔王の前に暗く陰鬱な黒き世界が広がり、俺の剣技すべてを拒絶する。暗黒魔法、アリスも使うそれはすべてを遮断する力を持つ暗黒を用いて防御も攻撃もできるというユニークスキルだ。まさか初代魔王もこの魔法を使えるとは。
『いつぶりであろうか。この魔法を使ったのは』
その言葉は分身体の言葉というよりも本体が放っているような感情だった。記憶を共有している分身体だからこその発言なのであろう。
その体から更なる暗黒が噴き出してきてそのままこちらへと襲い掛かってくる。それを俺は『バリア』を使いながら足の踏み場を何とか探していく。
このスキルを使っている間は攻撃スキルを使う事が出来ないため、あくまで隙を探すためにのみ使う。ただ、ある程度強い力が加われば壊れてしまうという点を考えればなるべく早くに相手の隙を見つける必要があった。
いや、そんな時間はないか。
徐々に蝕んでくる暗黒魔法によってすぐにバリアは破壊され、俺は宙へと飛び上がる。なすべきはこの暗黒を拭い去ること。空中で収納から魔王ソルの宝玉を取り出し、アルムへと取り付ける。
「
直径10メートルほどの燃え盛るまるで太陽のような球体が生み出され、地面一体を覆う暗黒魔法へと打ち出す。莫大なエネルギーを秘めている小さな太陽が対象に触れれば何が起こるか。
ドガアアアアアアンッ!!!!!!!
すべてを飲み込むほどの大爆発。魔王ソルの剣は俺が持つ宝玉の中で最も広範囲の攻撃に優れたアルムだ。太陽の光によって暗黒が吹き飛ばされた更地へと降り立つ。
『これは凄い威力であったな。危うく、死ぬところだった』
「いやまだ死んでないのかよ」
あれだけの爆発に巻き込まれていながら初代魔王は倒れていなかった。今まで回避されて生き残られることはあったが直撃して生き残られているのはこれが初めてだ。じゃあどうすればこいつを倒せるんだよ。俺にはアリスみたいな超常的な力があるわけでもない。ならば今まで通り小細工を施していくだけだ。
魔王ソルの宝玉を取り外し、再度魔王スルトの宝玉をアルムへと取り付ける。
『ほう、また力を変えるのか』
「ああ」
『ならば我も変えることにしよう』
初代魔王がそう言った瞬間、背中をぞわっと撫でるような悪寒が走る。おいおい、まさかここからさらに強くなるんじゃないだろうな。
初代魔王の周囲をすべてを遮断する暗黒が包み込んでいく。そして規模が大きなっていき、次の瞬間には暗黒から姿を現す巨大な腕が見えてくる。
『
その巨大な拳から打ち出されたのはすべてを破壊するほどの絶大な衝撃波である。神殿内部の床を抉り、途中にあった神殿を砕き散らしながら気が付けば目の前にまで迫ってきていた。
「バリア!」
咄嗟にバリアを前面に張り出すも、その衝撃を抑えきることはできずに一瞬にして瓦解する。
「なっ、なんて威力だよ!」
そうしてバリアを破壊された俺はその衝撃波に飲み込まれるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます