第25話 謎の称号
「……イト、ライト!」
誰かが俺の名前を呼んでいる。まだ重たい瞼を開くと目の前には心配そうな顔をしたアリスの姿があった。
「おはよう」
「ようやく起きたか。全く起きぬから心配になったぞ」
「んな大げさな」
ふわあっと大きな欠伸をする。この世界に来てからというもの常に神経をすり減らしていたりダンジョン内では敵を警戒したりとしていたためここまでぐっすり眠れたのは久しぶりだ。
寝心地が悪すぎて体中痛いけど。
「そんな寝てたか? 俺」
「正確には分からんが妾が起きてから二日くらいは寝ていたと思うぞ?」
「なんだ二日か……二日!?」
それもアリスが起きてから二日だと? そんなに寝ててよく死んでなかったな、俺。
「それは確かに心配になるな」
「だろう?」
体を動かしてみたところこれといった不調はなさそうだ。強いて言うなら滅茶苦茶腹が減ってるのとのどが乾ききっていることか。
とりあえず収納から水袋を取り出し、ごくごくと勢いよく飲み始める。ふう~、生き返る~。
「その……すまなかったな。妾が気絶してしまったせいでライトにはかなり苦労をさせてしまった」
「そんなこと気にするな。ダンジョンでは助け合いが当然だ。それに今までのボス戦とかはアリスの方が活躍してたからな。すまないというのならこちらこそだ」
「ふむ、そうか。ならばせめて感謝の気持ちだけでも伝えておこう。ありがとうな」
顔を覗き込んでニコリと微笑みながらアリスが言う。
俺はその光景に少し見惚れてしまう。ただでさえ整った顔をしているアリスから至近距離でしかも満面の笑みで改めてそう言われて、そういう耐性の無い俺からすればそうなってしまうのは必然的であった。
「な、何か言え!」
アリスもアリスで俺が何も発さないのが気まずくなったのか、プイッとそっぽを向いてしまう。
「す、すまんな。つい」
可愛かったから。そう後に続く言葉は心の中に締まったまま気を紛らわせようと自身に鑑定スキルを発動させる。
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名前:葛西ライト
種族名:異世界人
称号:魔王候補
レベル:7863
スキル一覧
ユニークスキル:『鑑定lv.10』『宝玉生成』
常時発動スキル:『暗視』『身体強化Ⅴ』『状態異常無効』『魔法強化Ⅴ』『魔法防御Ⅴ』『物理防御Ⅴ』
魔法スキル:『全属性魔法lv.10』『闇魔法lv.10』『毒魔法lv.10』『爆発魔法lv.10』『雷魔法lv.10』
特殊スキル:『パーフェクトヒール』『貫通』『収納』『変装』『投擲』『剛力』『かまいたち』『擬態』『感知』『氷獄』
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やはりあれだけレベルが高い奴を倒すとレベルの上がり方が凄まじいな。
うん? ちょっと待てよ。何かがおかしい。ゴシゴシと目を擦った後、再度ステータス欄を覗いても変わらない。どういうことだ? 何で俺の称号が
「アリス、俺の称号が魔王候補になってるんだが」
「まあ当然ではないか? 最初に言ったであろう? このダンジョンは魔王の試練だと。それに挑んでいるのならば魔王候補になるのも必然だ」
「いやだが俺魔族じゃないんだぞ?」
「魔族でなくとも魔王にはなれる。龍族が魔王になっていた時期もあったくらいだしな」
言われてみればここのボスだった金色の龍も魔族じゃないのに魔王と表記されていたな。アリスが前、魔界には人間も含む様々な種族が住んでいると言ってたし魔族以外が魔王になるのも普通にあり得ることなのかもしれない。
「まあせっかくだしライトが魔王になってみたら良いのではないか?」
「いやお前はどうするんだよ」
「他の魔王候補が魔王になるのは癪だが、ライトが魔王になるのであれば別に構わん」
「お前なぁ」
まあ流石にアリスも挑んでいるこの状況で俺が魔王になることはないだろう。きっとアリスもそれが分かっていて俺の反応を楽しんでいるのだ。
「そういえばアリスには今回どれくらいの経験値が入ったんだろ。見ても良いか?」
「うむ、よかろう」
「鑑定」
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名前:アリスフォード
種族名:魔族
称号:魔王候補
レベル:5271
スキル一覧
ユニークスキル:『暗黒魔法』『鬼神』『融合』
常時発動スキル:『暗視』『身体強化Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『魔法無効』『物理防御Ⅴ』『状態異常無効』
魔法スキル:『全属性魔法lv.EX』『闇魔法lv.EX』『毒魔法lv.10』『爆発魔法lv.EX』『雷魔法lv.EX』
特殊スキル:『パーフェクトヒール』『貫通』『収納』『変装』『投擲』『剛力』『かまいたち』『超音波』『熱光線』
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やはり気を失っていた分、俺よりもレベルが上がっていない気がする。まあそればっかりは仕方がないか。
「ふむ、ライトに更に差をつけられてしまったな」
俺が鑑定結果を教えると、アリスは少し悔しそうにそう呟く。
「仕方ないさ。気を失ってたんだし」
「まあそうだな。いちいちそんなことを考えても仕方がない。終わったことは終わったのだ」
少し落ち込んでもすぐに元気になる。アリスのこういうところが俺は好きなのかもしれない。あ、あくまで友人としてな!
心の中でそう自分に言い聞かせる。そして誰も聞いていないというのにわざわざそんな補足をする自分に恥ずかしくなる。
「これでようやく折り返しじゃ。ささっとこのダンジョンを制覇してしまおうぞ」
「はいよ」
快活に言うアリスの後ろを俺は少し照れくささもありながら付いていくのであった。
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