第48話 戦闘
「まさかこんなに早く切り返してくるとは思わなかったな」
「まあ、争いは早う終わる方が良い。これもまた一興じゃな」
魔王軍の先頭には俺とアリス。そしてその後ろには新たに魔天の一員となった白鳥さんを含めた魔天の皆が集結している。あの後、相談した結果、戦果を残せば白鳥さんを迎え入れるという事が決まったのだ。そして更にその背後には俺の力で強化された兵士たちがずらりと並んでいる。
前方にはアストゥール王国の国旗を携えた兵士たちとその中にはすでに記憶の中で薄れかかっているクラスメートたちの顔が並んでいる。
その中から一人、いつもの如く光り輝く剣を携えた勇者、翡翠流星が歩いてきて、思い切り大地へと剣を突き刺す。その瞬間、眩い光が周囲に煌めく。
「僕の名は翡翠流星! この地に住まう魔を打ち払う勇者だ! よくも僕の仲間を奪ったな!」
仲間を奪った? ああ、白鳥さんの事か。でもあれに関しては俺達が攫ったというより白鳥さんが自主的に来ただけなんだがな。
「ライト君、誰か攫ったの?」
「いや、そんなことないけどな」
ほら、本人がこの調子だし。
「それに加えて今までの悪行! もはや許されるものではない! この勇者が終止符を打ってやる!」
その言葉と同時に勇者の後ろに控えていた兵士たちがこちらへと突っ込んでくる。
「行くがよい、魔王軍! 侵略者を打ち払え!」
こちらはアリスの号令とともに魔族の兵士たちが突入していく。そこで俺は今まで使ってこなかった魔王シリーズ最後の宝玉を取り出してアルムへと装着する。
「魔王シリーズ『魔王マルス』」
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アルム名:魔王マルスの剣
等級:終焉級
ユニークスキル:『王の号令』
常時発動スキル:『身体強化Ⅴ』『魔法無効』『物理防御Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『状態異常無効』
魔法スキル:『支援魔法lv.EX』
特殊スキル:『バリア』『超剛力』『読心』
魔王マルスの宝玉による祝福を受けた剣。効果を一つ選び、剣の持ち主または持ち主が認めた他者へと付与することができる。ただしその場合、他の効果は消失し宝玉は壊れてしまう。
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魔王マルスのユニークスキル、『王の号令』の効果は味方全体の能力を倍加させる能力。まさに魔王のためのスキルである。
「王の号令!」
俺を中心として青いオーラが放たれ、それらが魔族の兵士たち全員に付与される。俺からスキルを授かって更に王の号令による青いオーラを纏った魔族の兵士たちは相手側の兵士たちを圧倒していく。数では負けていくがこちらは質で勝負するのだ。
「ライト様、俺たちも行っていいか?」
「ああ、行ってこい」
白鳥さん以外の青いオーラに纏われた魔天たちが戦場へと駆け出していく。ただでさえ強かった魔天たちが強化されればそれはもう一騎当千の力を誇る。
激しく振るわれた力が紙屑のように敵の兵士たちを蹴散らしてゆく。まさに圧巻の強さである。
だが、そこはこの世界で唯一、魔族特攻の武器である神器を使う『神の使い』だ。その中でも第一部隊として属していたあの三人はそれでもなおこちらの軍の数を減らしていく。
「妾達も行かぬのか?」
「俺はここで兵士たちを強化しておくから無理だがアリスは行ってきても良いぞ」
「うむ、その言葉を待っておった」
その瞬間、周囲が凍り付くほどの圧力がアリスから漏れ出す。鬼神となったアリスはニンマリと笑みを浮かべると戦場で最もこちらの兵士を倒している者へと目を付ける。
「妾が勇者とやらの実力を測ってやろう」
そう言うとすさまじい高度まで飛び上がり、そのまま勇者の下へと落下していく。
刹那、張り裂けるほどの破砕音とともに兵士たちが飛び交い、戦場のど真ん中に場違いなクレーターが生まれる。
「な、なにあれ。化け物」
「まあ、魔王だからな」
なんとも彼女らしい登場の仕方である。さっきは無理とか言ってたけど兵士たちを強化しながら戦うことくらいはできそうだし、俺も出るか。
「ライト君、行くの?」
「ああ。白鳥さんも来るか?」
「うん!」
そうして二人の魔王による戦闘が始まるのであった。
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