第23話 大敵
気が付けば金龍の放ったブレスが俺の目前まで迫っている。もはやここから回避するすべはない。こうなれば何らかの力で凌ぐしかないわけだが。
激突する寸前の俺は思考をフル回転させて対処法を考え始める。土魔法で盾でも作るか? それじゃダメだ。そもそも土魔法のもととなるダンジョンの床はさっきの攻防で容易に砕け散ることが予想される。実際、ブレスが地面に当たってた時、凄い抉れてたしな。
闇魔法で逃げる? それも無理だ。ブレスに照らされて周囲に今から逃げ込める闇はない。こうなったら、
「氷獄!」
俺は最終手段として金龍に対してではなく自分に対して凍てつく冷気を纏わせ、一つの巨大な氷へと変貌を遂げる。
自己犠牲の上での氷の防御。氷獄は氷の盾なんていう器用なものを作り出すことはできない。かといって普通の魔法で盾を作れど相手が魔法無効を持っている以上、それがブレスにも反映されていないとは限らない。
かくして氷の地獄を自身に課すことによってブレスによる超破壊を防ごうとしたのである。ただ、問題は龍王の剣が壊れたことによって凍結無効が無いという事。いくらレベルが上がって耐久力が増えていようとこの氷の中に自身を置くのはほぼ自滅に近かった。
ただ俺には火魔法がある。手元に小さな焔を灯しておくことで氷の牢獄の中に空間を作り出し何とか完全に凍りついてしまうことを防ぐ。
ドカアアアアアンッ!!!!
ブレスが氷にぶつかることによって生じた爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる。そしてダンジョンの壁へ激突した瞬間、体中でメキメキと骨が折れる音がする。
「はあ、はあ。なんとか助かったか」
骨が折れる程度で済んでよかった。あのまま直撃していたら恐らく俺は死んでいただろうからな。全身を走る激痛に顔をゆがませながらもパーフェクトヒールを使って治していく。ただ、怪我は治せても血の量までは復元することができないため、少々頭がクラクラする。
「くそ! また油断しちまったか」
焦点の定まらない視界でゆらゆらと揺れる金龍を睨みつけながらそう毒吐く。さっき反省したばっかだってのに。これだから俺はいつまでたっても二流なんだ。
さてと、これ以上自分を卑下しても仕方がないので、気持ちを切り替えて敵を見つめる。一応、俺の攻撃は効いているらしく、体の半身が焼けただれ、金色とは程遠い光を放っている。どうやらパーフェクトヒールは持っていないようだな。これで持ってたらチート過ぎて諦めていたところだ。
「さてもう一回、同じ技をしたいところだが」
流石にさせてくれないよな。
金龍の周囲を透明な膜のような物が覆っていく。やがてそれは大きな球体となって龍を包み込んだ。恐らく防御魔法の類だろう。ここからが本気って訳だ。
「とはいえこの状況は最悪そのものだな」
現状俺が持っている中で最強の宝玉は崩壊したため、俺のアルムでは金龍の鱗を切り裂けない可能性が高い。受け流す目的で使おうにも真っ二つになるだろうし、ましてや攻撃なんてしようものならこちらからの攻撃は効かないため反撃されて終わりだろう。
……いやちょっと待てよ?
ふと俺のステータス欄を見ているうちにあることに気が付く。
===================
種族名:異世界人
レベル:5672
スキル一覧
ユニークスキル:『鑑定lv.7』『宝玉生成』
常時発動スキル:『暗視』『身体強化Ⅴ』『状態異常無効』『魔法強化Ⅴ』『魔法防御Ⅴ』『物理防御Ⅴ』
魔法スキル:『全属性魔法lv.10』『闇魔法lv.10』『毒魔法lv.10』『爆発魔法lv.10』『雷魔法lv.10』
特殊スキル:『パーフェクトヒール』『貫通』『収納』『変装』『投擲』『剛力』『かまいたち』『擬態』『感知』
===================
もしかしたら行けるかもしれない。そう思うや否や俺はさっそく収納の中からため込んでいた宝玉をどんどん取り出していく。
「これで決めてやる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます