第44話 戦力増強
「魔王様、この度は私の力不足によりご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ありませんでした」
「いやそんなに畏まらないでくれ。魔王の仕事として当然のことだから」
傷を負った兵士たちにパーフェクトヒールをかけて回りながらジキルにそう答える。魔族達はかなり図太いようで普通ならば死んでいそうな怪我でもかろうじて生きていることが多いな。安心した。
「二人も魔王が居るわけだし分担しないとな」
「ありがたいです」
よし、これでラストかな? 倒れている最後の魔族にパーフェクトヒールをかけて、陣地へと運んでいく。そして遺体は遺族に返すために一か所に集める。
「どれくらい攻め入られた?」
「私の領地半分ほどは神の使いの加勢によって占領されてしまいました。多くの魔族が捕虜として捕らえられています。その中には三傑も居ます」
ジキルの言う三傑というのは摩天ジキルの下で最も強い戦士三人の事だ。アストゥール王国によって占領された場所では最初こそ人手不足を解消するために魔族が奴隷として働かされるようだが、人手が足りるようになったら即座に処刑されるらしい。早めに助けに行かないとな。
「残っている兵士はどれくらい居る?」
「恐らく半数ほどは」
「そうか。とりあえず一旦、その全員を集めてくれ」
「承知しました」
理由も聞かずにジキルが兵士たちへ集まるように号令をかける。ほどなくして2000人程度のジキルの兵士たちが集まってくる。それを見て俺は皆の前に立ち、声を張り上げる。
「今から皆にスキルを与えていきたいと思う! 順番に並んでくれ!」
そう、俺の目的は兵士たちの増強。ダンジョンの中で手に入れた宝玉の数を考えれば2000人程度には十分にスキルを渡せるはずだ。ただ、稀少な物は数が少ないため、与えるスキルは『身体強化Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『魔法防御Ⅴ』『物理防御Ⅴ』『状態異常無効』『全属性魔法』の六つだ。これであれば全員にいきわたらせることができる。
「あの、すみません魔王様。スキルを与えるというのはいったい?」
「俺のアルムの能力は味方にスキルを与えることができるんだ。試しにジキルに渡してみせるぞ」
「お願いします」
そうして俺はジキルに対して六つの宝玉を使い、上にあげた六つのスキルを与える。
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名前:ジキル
種族名:魔族
称号:なし
レベル:885
スキル一覧
ユニークスキル:『磁気』
常時発動スキル:『身体強化Ⅴ』『魔法強化Ⅴ』『物理防御Ⅴ』『状態異常無効』『魔法防御Ⅴ』
魔法スキル:『全属性魔法lv.1』
特殊スキル:『飛翔』『探知』『剛力』『投擲』
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うん、ちゃんとスキルを与えることができたな。ただ、元の宝玉でレベルがある程度あっても本人の熟練度が無ければスキルのレベルは1になるらしい。
「ほ、本当にスキルが増えている!? こ、こんなことが本当にできるなんて!」
「まあ今やってみてかなり時間がかかるってことが分かったけどな」
どれだけ早くやっても一人に対して1分はかかる。それを2000人ということは合計で一日と半日だ。休憩を入れれば2日程度か。
「仕方ない。やるか」
そうして俺は地道に兵士たちへとスキルを与え始めるのであった。
♢
「やっと終わったー!!!!」
兵士たち全員に付与を終えた俺はその場でごろんと寝転がる。正直言ってここ最近で一番キツかった。やることは単純作業で暇だし、それを短時間で終わらせないといけないしで精神的にかなりすり減らされた。だがそのおかげで全員の強化をすることができた。
「お疲れ様でございます、ライト様」
寝転がっている俺にジキルがそう声をかけてくれる。俺がスキルを与えている間常に横に居ていろいろなことを話してくれていたのだ。ここまで早く終わったのはジキルのお陰といっても過言ではない。
その時に聞いた話で、この世界ではレベル999が上限だという。それを突破できるのは限られたものだけで、レベル1000であったファフニールがあんなに自信満々だったのはそれのせいだったという。
レベル1000とレベル999では天と地の差があり、大幅にステータスも変わるという。じゃあレベル1000越えがゴロゴロ居るあの魔王の試練は本当に攻略不可能ダンジョンだったんだな。あの初代魔王、なんてもん作ってやがる。
「とりあえず当面の目標は領地を取り戻すことだな。取り敢えず後で兵士たちの要望も聞くけど、取り敢えず今は眠らせてくれ」
「承知しました。それではお休みなさいませ」
その言葉を最後に俺の意識はプツンと途切れるのであった。
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