第13話 龍王
燃え盛る炎が俺の身体を蝕んでいく。何度も何度もパーフェクトヒールを使って回復しようが、消えない地獄の焔が俺の身体を燃やし尽くさんと燃え滾っている。
カラカラに枯れた喉は痛みに声を上げることすら許してくれない。発声とは言えないうめき声を上げながら俺の身体が蝕まれていく。
水魔法も試してみたが全く効果はなく、蒸発していく。どうしたらいい? 何かほかに使える手段は?
使えそうなスキルを次から次へと使うも、どれもその効力を十分に発揮することなく役目を終えてしまう。そうして最後には闇魔法のみが残る結果となった。
半分ヤケクソになって闇魔法の一覧を見ていくと、その中の一つに目が釘付けになる
これだ!
「
そう唱えた瞬間、俺の身体はダンジョンの床にある闇の中へと吸い込まれ、獄炎から逃れることに成功する。危ない、もうちょっとで死ぬところだった。ていうかこれで生きてる方がおかしいんだがな。明らかにパーフェクトヒールが強すぎた。まあ、痛みで気を失ってたらそのまま死んでたんだけどな。
「これでドラゴンにも近づける」
この魔法は闇の中であればどこへでも動けるというもの。つまり……。
「こういう事もできるってことだな!」
ドラゴンのちょうど上あたりの闇の中から姿を現し、その首へ向けて剣を突き立てる。ザシュッという音がしてドラゴンの首は斬れ、それと同時に体の中に力が流れ込んでくる。
「ふう、間一髪だったな」
一先ず強敵を倒せたことにホッと胸をなでおろし、地面へと降り立つ。正直、今回ばかりは死ぬもんだと思っていたが何とか乗り越えられたことに何とも言えない達成感がある。
「宝玉化」
つい先ほど死んだばかりのドラゴンの身体に向かってスキルを放ち、宝玉へと変化させる。この力があればヘル・フェンリルの時よりもさらに強いアルムになるはずだ。
「今までありがとうな。これからはこいつだ」
ヘル・フェンリルの宝玉を砕いてスキルを身に宿す。当然宿すスキルはパーフェクトヒールだ。そうしていつも通り質素な見た目に戻ったアルムにドラゴンの宝玉を嵌める。
===================
アルム名:龍王クリムゾンの剣
等級:神話級
スキル:『飛翔』、『氷獄』、『獄炎』、『身体強化Ⅴ』、『状態異常無効』、『炎無効』、『凍結無効』
龍王クリムゾンの宝玉による祝福を受けた剣。効果を一つ選び、剣の持ち主または持ち主が認めた他者へと付与することができる。ただしその場合、他の効果は消失し宝玉は壊れてしまう。
===================
ヘル・フェンリルの時と同じように剣の名が魔物の名に変わる。それにしてもこのアルム自体に名前がないのだろうか? いつもいつも魔物の名前が書いてあってその後ろに「の剣」と続くだけだ。元の状態でも名前は出てこないしそもそも名前なんて付いていないのだろうか?
「一回試しに振ってみるか」
慣らす目的のために龍王の剣を軽く振ってみると、目の前に途轍もなく大きな斬撃が現れて壁を大きく抉った。その光景に一瞬呆然としたのちに我に返る。
「なんだこれ!? 強すぎる!」
軽く振っただけでこの威力だ。これから先のダンジョン攻略への強力な助けになること間違いなしである。
他にも試したい、そう思って剣を振るおうとすると急激な倦怠感が俺を襲う。さっきのダメージが蓄積しているのだろう。ふらりと立ち眩みしたのちにドサッと地面に尻をつく。これ以上は動けそうにないな。
「仕方ない。試すのは後でにして今は寝よう」
そうして俺はボス部屋内での居眠りを敢行するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます