滴〜SIDUKU〜

遥か昔より、かの地に【鮮国】と呼ばれる国があった。


その国の人々は隣国【陽国】と呼ばれる大国の驚異に常にさらされてきた。


とある時代に、鮮国を王の力で盤石にすれば、陽国に自国の人民が虐げられることがなくなるのではないか、と大切なものたちを守りたかった守りきれなかった父たちが立ち上がる。


その父たちに守られながらも、懸命に、賢明に、生きようとするそれぞれの子どもたち。


愛と権力、金銭では大切な者たちを守ることができぬ世界を生きた人々の、愛と友情、家族への想い、己の欲と諦念。


鮮やかだった人の心は歴史書には描かれず、色褪せて風化していく。


心の中に散りばめられた、色とりどりの、時には鮮やかで、時にはくすんだ色で、様々な心の色を文字のキャンパスに描き、紡がれた言の葉を、少女の人生を通して編まれた物語である。