第1幕
第1章~双眸~
ホン・ジュギル、
夫のホン・ジュギルは、
息子を2人、娘1人を既に産んでおり、子どもたちは大きな病気もせず、順調に育っていた。
今も、庭からは2つ年違いの息子たちが7歳と5歳となり、そろそろ
チャン氏としては、
権力がそのまま生き残る
チャン氏の生家である、張家は、4代前に王妃、3代前に
嫁ぎ先である、
この国では、常に
しかし、武官の家柄であるホン・ジュギルは、武官ではなく、文官として
幼少の頃より、武よりも文を好み、
もちろん武も他の者より
評判の
そんなホン・ジュギルに
1人は後の
2人目は妻、
3人目はカン・テウン。
4人は、
成長と共に、それぞれの立場で接する必要が生じることはあったが、それでも心は変わらぬままであった。
一方母である、
チャン氏・ボヨンは、
貿易にも手を伸ばしていた、
兄が2人おり、それぞれに科挙に合格し、
姉が3人おり、それぞれがそれぞれに匂い立つような美人であり、縁談も
今さら自分の出る幕はなく、商いに興味のない兄2人の代わりに、父と共に時には外国へも、商いに出かけていた。
ところが、父の竹馬の友である、ホン・ジュギルの父がチャン氏を是非とも嫡男のジュギルに嫁がせて欲しい!と申し出て来たのである。
チャン氏は幼なじみのジュギルと
しかし、婚姻によって将来や行動、言動、夢、全てのものが屋敷の中に押し込められる当時の女性の一生が嫌でたまらなかったのである。
父に話を聞いたその夜、密かに家を出た。
数日後、屋敷の使用人を
そのまま野菜売りの仕事を手伝っていたところ、通りでホン・ジュギルに出会い、いま川岸に腰を
チャン氏・ボヨンはホン・ジュギルに強く手を握られたまま、うつむいていた。
『何が嫌なのか、教えて欲しい。』
ホン・ジュギルは、チャン氏にうつむいたまま、静かに話し始めた。
『幼少の頃より、共に時を重ね、共に過ごし、共に成長し、互いの顔を見合わせて笑いかけもしてくれていた。
『逃げ出す程に私と共に年老いてゆくのは、嫌なことなのか?』
ジュギルは知っていた。
チャン氏・ボヨンが、父親の
どんな名門両班の子息からの
それでも、婚姻を結ぶのであれば自分はチャン氏・ボヨン以外考えたことがなかった。
一方、チャン氏は違うことを考えていた。
いつも共にあったジュギルは、気心が知れると先ほど話ながら、なぜ私の心が分からぬのか…
私は誰か、彼か、をどうのではなく、婚姻と言うもの、特に両班の妻が嫌なのである。
しばらく考えあぐね、このまま引き下がってくれるジュギルでないことは知っていたので、
ポツリ…
ポツリ…
と、心の中を伝えることにした。
『私はね、誰かと婚姻をして、両班の妻になり、屋敷を回し、たくさんの子を産み育て、楽しみは食べ物、着るもの、
ジュギルは困った…
チャン氏の父親の商売仲間の息子である、シン・ドンウを理由に断られる!と思い込み、その線での
やっと浮かんだ言葉が。
『両班の
と、家に持ち帰って家族と相談しなければならないような言葉を口にしていた。
しかも。
『私の妻になってくれたら、今のまま自由な生活をしてくれてもいい。商売がやりたいのなら、私が張家で住んでもいい。子もいらぬ。屋敷の取り回しなどせぬでもいい。とにかく私の隣で笑っていてさえくれれば、それでいいのだ。』
などと
父に怒られそうだ。
母に泣かれそうだ。
『本当に?本当にそれでいいの?ジュギル様はそれで幸せだと言えるの?』
と小さな声がうつむいたままのチャン氏・ボヨンから
『ああ。いいよ。その代わり隣で笑ってくれるか?共に
ジュギルからの返事を聞くうち、ボヨンは
ところが、若い二人の話の通りにはなるはずもなかった…
屋敷に
張家当主夫妻は、婿のジュギルを幼少の頃から知っており、おおらかで優しく、時に大胆で、文武両道であり美丈夫な青年が娘を一途に好いてくれていたこともお見通しであった。
もちろん、洪家当主夫妻も息子の一途な気持ちも知りつつ、
これは、当人同士のなにがしで別れ道になったり、曲がり道になるのではなく、最初からそれ道などは用意されてもおらず、一本道は決まっていたのである。
このことは、当人たちは全く知らずに夫婦になり、生活が始まり、
ともあれ、チャン氏・ソンギョンが産まれる道も整ったのであった。
~
【両方の瞳】【両目】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます