第3章~青東風~
ソンギョンが3歳になる年に妹のヘジョが産まれ、7歳になる年に
少し
その折、ソンギョンのすぐ上の姉・ミンソが
この時の流行り病は、
比較的に栄養状態もよかった
そんな流行り病に幼かったミンソは罹患し、両親の看病のかいなく、両親を悲しみの
悲しい出来事を柔らかく、優しく、包み込んでくれたのが、この後に
ソギョンは5人兄弟の3番目として、
子どもたちが成長するにつれ、父の竹馬の友たちの
中でもソンギョンは、年も1つしか違わない、ムアン大君の第二子・
その日もムアン大君家族が来邸し、屋敷は賑やかになり、ソンギョンはソル公主と共に
隣にはもちろんシムソ君があり、3人の目の前には大きな紙が広げられていた。
その紙には、
先日、母方の祖父にもらった世界図絵とやらをソギョンは親友のソル公主とその弟シムソ君に
『この大陸に小さく出ている部分が、私たちの国なの。世界はこんなに広いのよ。おじい様がよく出かけているのがね、こことこことここの国なの。暖かくなったら、
と
『国によって言葉が違うってこと?もしかして、着ているものも違うの?』
ソル公主の隣で黙ったまま、世界図絵とやらを
『この紙は何て言う名前なの?本当にこの紙は正確なの?どうして我が国はこんなに小さいの?屋敷からここまで、自分で歩くと
などと、独り言のような、姉と姉の親友に質問しているような…
そんな言葉を
その様子をソンギョンの部屋の扉の向こうで、ソル公主とシムソ君を呼びに来た、ムアン大君が笑顔で
この小さな国の小さな部屋で広く大きな世界の話をしている子どもたちが、
それからしばらくして。
ソンギョンは、母方の祖父、
輿から
目に入る全てのものは、
賑やかな街全体は時代が下っても変わらず、かつてソンギョンの母・チャン氏を虜にした、そのままであった。
ヒョイルは瞬きすらも忘れて、
本日中に終わらせることができなければ、住居用にはあつらえていない、商店の物置部屋で翌日を迎えなければならぬし、何より大きな商いをしている為、大きな損失が生まれてしまう。
それは何としても避けたかった。
『ソンギョンや、そろそろ店へ行くことにしようかの。』
ソンギョンは祖父の声で我に返り、や
っと瞬きを再開し、口も閉じた。
途端に我に返り、息せき切ったように次から次へと、早口にまくし立てる。
『おじい様、都でない港街なのに想像以上に大きな街なのね。人びとも都より活気があるわ。勢いのある場所には、勢いのある人が集まると本で読んだわ。本当なのね…。おじい様の商いを見せてもらえるかしら。昨日読み終えた本がちょうど銭の本だったの。銭の不思議がたくさん記してあったわ。銭は物なのに、生き物であり、生き物なのに、自ら動くことは叶わない。外見は変わらないのに、中身が変わる。とても不思議な本だったの。』
祖父は首をかしげた…。
興奮しながらまくし立てて話す孫娘は、どこでそのような難しい本を見つけたのだろう…。
後日談であるが、ソンギョンは男装をして、ムアン大君の子息たちや、自身の兄たち、が通う私塾に紛れ込み、ムアン大君の師でもあった、
店に着くやいなや祖父は帳簿を確認し始める。
ソンギョンは、店の商品を手に取って鼻が付きそうなほど顔を近づけてみたり、腕組みをして少し離れて眺めながらぶつぶつと呟いてみたり、たがめすがめつひとつひとつを
書物で見たこと読んだことがあるもの、名前や原産国はおろか、使い方すら想像ができないもの、我が
屋敷では、祖母にやり込められることに甘んじ、力関係が誰の目にも明らかな祖父母夫婦を演じているはずの祖父が、目の前の商品を見れば見るほどに素晴らしく、祖父の商才と見識の高さを見せつけるように
一通り店の商品を見て回ると、ふらりと通りに出て、祖父の店を
外から見る祖父の店の
しばらく外で通りを眺めたり、行き交う人びとを眺めたり、興味の赴くままに五感を働かせて周囲を探索した。
『ソンギョンや。ソンギョン。』
と言う、遠くからのあるかなしかの呼びかけに振り向く。
すると、すぐ後ろに祖父が立っていた。
集中のあまり、祖父の呼びかけが耳に入らなかった様である。
『はぇ?おじい様?』
と答えると、
『船は見なくてもいいのかの?今日また新しい荷が港に着いたと連絡があって、ここへ来たんじゃ。店に出さんもんもあるぞ。行ってみるか?』
ソンギョンの顔がみるみるうちに輝いていく。
『もちろんよ!!』
喜びのあまり、祖父の進行方向とは別の方に勢いよく歩き始め、祖父の気配がないことに気付き、反転して祖父と同じ方向に歩き始める。
『おじい様。荷はどこから届いた物なの?都港からどれくらいの時を経て、目的の港まで到着するの?どれくらいの時で都港に帰ってくるの?
まくし立てるように矢継ぎ早に言葉が出てくる。
孫娘の息つく暇もない話を黙って聞いていたヒョイルは、一息吸うとゆっくりと静かに、しかしひとつひとつの言葉に
『ソンギョンや。思い付いたことを全て口にするものではないのだよ。それは本当に自分で選んだ内容であるのか?そして、内容に
この祖父にしては、珍しく
言葉ひとつひとつにも、しっとりとした重みがある。
ひょっとすると、この重みが今しがた聞かせてくれた、言霊を見方につける…
と言うことなのだろうか。
鮮国には、
それは祖父が話してくれたこと、そのものであった。
ソンギョンはこの祖父の言葉を死ぬまで忘れたことがなかった。
この言霊の話は、ソンギョンにとって、祖父との大切な宝物であり、幸せな思い出であった。
ソンギョンは容姿は母方の伯母似であるが、中身は母譲りの
祖父は、
この日を
ソンギョンは祖父に教えてもらい、伝えてもらい、一緒に考えてもらった。
お互いにとって、とてもとても幸せで、温かい時間が流れた。
ソンギョンがいつも懐かしむのは、
~
【初夏の頃、新緑の間を吹き抜ける東からの爽やかな風のこと】
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