第15話 マギステル認定試験part2

「では……マギステル認定試験を始めます」


 俺は若い男の魔術師に、神殿の奥へ連れて行かれた。


「ここが試験会場になります」


 広い部屋に、三人のローブを来た魔術師がいた。

 この三人が、マギステル認定試験の試験官らしい。

 三人ともかなり年配の魔術師だ。威厳がある。


「これが国王の命令書です」


 俺は国王の命令書を、若い男の魔術師に手渡した。

 それから三人の試験官に、国王の命令書を渡しに行く。


「どれどれ……ふむふむ……」


 三人の試験官は、国王の命令書をじっくり吟味する。

 時折、俺のほうをチラチラ見てくる……

 うーん、どうやら怪しまれているようだ。国王の命令書が偽物だと疑われているみたいだ。

 無理もない。普通、マギステル認定試験を受ける魔術師は、王都で優秀だと評判になっている奴じゃないと受験できない。

 俺は王都で完全に無名の魔術師だ。誰も俺のことを知らない。

 

「右下を見てください。国王の玉璽が押印してあります」


 エリシアが試験官に言った。


「たしかに、アルトリア王家の紋章だ。だが、これが本物だという証拠がない」

「なっ……! マギステルのあたしが、国王から直接、命令書をいただいたのです! それを疑うのですか?」

「……マギステル・エリシア、あなたは才能ある魔術師だが、まだ若い。その孤児院の教師に、無理にお願いされたのでないですか?」


 試験官の一人が、怪訝な目で俺とエリシアを見ていた。

 ふむ……完全に疑われている。

 試験官たちは、俺がエリシアに、無理やりマギステルに推薦するよう強要したと思っているようだ。


「違います! アラン先生はそんなことする人じゃありません!」

「しかしですな……」

「そこまで疑うのなら、本物だという証拠を見せましょう」


 エリシアはポケットから、小さな魔石を取り出した。

 美しい透明な水晶だ。


「これは真実の石です。物の真偽を鑑定できる魔道具です。これで真実だと証明しましょう」


 エリシアは国王の命令書に、真実の石をかざした。

 エリシアが魔力を流すと、真実の石が光り始める。


「試験官様、ご覧下さいませ。王家の紋章が青く光っているでしょう? これはたしかに王家の紋章であるいう証です」


 王家の紋章である双頭の獅子が、青白く輝いていた。

 もし王家の紋章が偽物なら、真実の石をかざしても光らない。

 確たる証拠を突きつけられて、三人の試験官は、コソコソ相談した。


「……たしかにこれは、国王の命令書のようだな。では、試験を始めよう」


 口髭を生やした試験官がそう言うと、


「その前に、謝っていただけますか? あたしの先生にあらぬ疑いをかけたことを」


 エリシアが試験官たちに迫る。


「エリシア、気持ちは嬉しいけど、俺は気にしてないからいいよ」

「いいえ。いくら試験官でも根拠もなく受験者を疑うことは許されません」

「そうなのだ! アラン先生は悪くないのだ! ちゃんと謝るのだ!」


 シルフィもエリシアと一緒に試験官に迫っていく。

 二人とも、顔が真剣だ。

 俺が止めても、試験官が謝るまで一歩も引くつもりはないだろう。

 こうなったら二人とも聞かないからな……


「…………アラン・ベルフォート殿、疑ってしまってすまなかった」


 二人の鬼のような剣幕に気圧されて、試験官は謝った。


「いえいえ。私は大丈夫ですから。試験を始めてください」


 俺がそう言うと、


「よろしいです。今度から気をつけてください。アラン先生は大事な人材ですから」

「また疑ったら許さないのだ!」


 二人とも逞しすぎるぜ……



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