第14話 マギステル認定試験part1

「アラン先生……おはようございます! 今日はマギステル認定試験ですね……え?」

「……おはよう、エリシア……って、うわあ!」


 昨日、エリシアの屋敷に泊めてもらった。

 南向きの一番いいゲストルームを使わせてもらっていたのだが、


「シルフィ! なんで先生と一緒に寝ているんですか!」

「ううん……むにゃむにゃ……ふにゃ」

 

 シルフィが、俺の隣で寝ていた。

 しかも……裸で!


「あらんせんせ、だいすきにゃあ!」

「おうふ!」


 シルフィが俺に抱きついてきた。

 そうだった。シルフィは寝ぼけている時、猫になるんだった……

 十六歳になった今も変わってないらしい。

 しかし胸はしっかり大人の女性になって……すげえ柔らかい。たゆんっとしてる。

 白い肌はすべすべで――ダメだ! 元教え子にあらぬことを考えては!

 

「こら! アラン先生から離れなさい!」


 俺にがっちりとしがみつくシルフィを、エリシアが引きはがそうとする。


「ふわあ! きゃああああ! なんであたし、裸なのだ?」


 目覚めたシルフィが、シーツにくるまる。

 顔はリンゴのように真っ赤になっていた。


「それはこっちが聞きたいです! は、裸で先生と一緒に寝るなんて……うらやま……はしたないのかしら!」

 

 エリシアも顔を真っ赤にして、両手で覆った。


「あたし、アラン先生となら家族になりたい……」

「か、家族……それってまさか……?」


 エリシアは恥ずかしすぎて、顔から湯気が出ている。


「違う違う! 何もなかったって! 誤解するな!」


 俺は焦って否定しようとするが、


「えへへ……先生、昨日すごくあたしを可愛がってくれてたのだ!」

「ば、バカ! 何を言って……」


 シルフィがさらに誤解を招くようなことを言って、


「……ひどいです! アラン先生は、教え子とやらしーことする人だったんですね!  あたしという女がいながら……!」

「だから違うってば!」


 ◇◇◇


「ふう……今朝は大変だったぜ」


 俺たち三人は、王都のギルド地区を歩いていた。

 ギルド地区には、冒険者ギルドや錬金術師ギルドなど、いろいろな職業のギルドが集まっている。

 王国最強の魔術師ギルド、マギア協会もギルド地区にあった。

 シルフィが裸で俺のベッドに潜り込んだせいで、エリシアにいろいろ勘違いされて大変だった。

 誤解を解くにかなり苦労したぜ。

 これから大事なマギステル認定試験だというのに、すでにゲッソリ疲れてしまった。


「ごめんなさい……アラン先生のこと、ロリコン変態糞教師と言ってしまって」


 エリシアが深々と頭を下げる。

 

「……いいよ。気にしてないから」

「エリシアお姉ちゃんはひどいのだ! アラン先生をロリコン扱いして!」

「シルフィのせいでしょ!!」


 俺とエリシアは二人同時に突っ込んだ。


「えへへ……ごめんなさい!」

 

 てへっと、自分の頭を小突いてシルフィが謝った。


 ◇◇◇


「ここが……マギア協会か」

「すっごく大きい神殿……」


 マギア協会は、ギルド地区の中央にあった。

 立派な白い神殿で、周りのギルドの二倍の大きさはある。

 アルトリア王国はもともと魔術師が建国した。

 今から二千年前、大賢者マギアが魔族が支配していた国を解放し、このデカイ神殿を建てたそうだ。

 建国の歴史から、アルトリア王国は魔術師を他の職業より優遇していた。


「エリシア様! どこへ行かれていたのですか? オロカ様が探しています!」


 若い男の魔術師が、俺たちに駆け寄ってきた。

 ルード・オロカ――マギア協会の頂点に立つ魔術師、グランド・マギステルの称号を持つ男だ。

 同時に、かつて俺を勇者パーティーから追放した男でもある。


「今、新しいマギステル候補者を連れてきました」

「え? それはどなたです?」

「この方です。アラン・ベルフォート。あたしの魔術の師匠です」

「あ……そうなんですか……ははは。どうもはじめまして」


 若い男の魔術師は、苦笑を浮かべながら俺に挨拶した。

 当然の反応だ。

 俺みたいな冴えないオッサンが、王国トップレベルの魔術師ギルドの指導者候補だなんて、普通は信じれらないよな……


「アラン先生は天才魔術師なんですよ。先生の実力は、このあたしが保証します。さっそく先生にマギステル認定試験を受けさせてください」

「え、でも、本当に……」

「マギステルの命令です。早くしなさい」


 エリシアはキッと、若い男の魔術師を睨みつけた。


「はい! すぐに準備いたします!」


 若い男の魔術師はエリシアの怒りを感じて、神殿の奥へ走って行った。


「アラン先生なら確実に合格できます。きっとすぐにマギステルになれますから」






 



 

 


 

 

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