第23話 昨日はすみません

「昨日はすみません……先生」

「ごめんなさいなのだ」

「本当だよ。二人とも、今後はお酒は控えなさい」

「はーい、ごめんなさい! 先生」


 二人は俺にペコっと謝った。

 ふう。久しぶりに先生ぽっく二人を叱ってしまった。


「今日はいよいよ、オロカ様の口頭試問ですね」

「そうだな……」


 ルード・オロカ、マギア協会のトップ、グランド・マギステル。つまり、この国の魔術師の頂点に君臨する男だ。

 そして——俺を勇者パーティーから追放した男でもある。

 勇者アルスと一緒に、いつも俺を蔑んでいた。

 ルードは俺を覚えているだろうか。もしまだ俺のことが記憶にあれば、絶対に俺を不合格にするに違いない。

 俺のマギステル認定試験は、もうここまでかもしれない。


「先生なら次もきっと合格なのだ」

「そうです! 先生はあたしたちの魔術の師匠なのです。絶対に大丈夫ですよ」 


 シルフィとエリシアが激励してくれる。

 教え子に期待されているんだ。口頭試問を受けずに帰るなんて、カッコ悪くてできない。


「ありがとう。頑張るよ」


 俺は笑ってみせた。ここが正念場だ。魔術師は実力主義の世界だ。もし俺に本当に力があれば、俺を嫌っているルードでも、合格にするしかないはずだ。


「私も……魔術のことは何もわからないですが、アラン先生はきっと合格すると思います」


 サーシャさんが俺にニコリと笑いかける。

 みんなに応援されてる……今までこんなことはなかった。


「先生、行きましょう!」

「一緒に行くのだ!」


 二人が俺の腕を掴む。 


「「「先生の隣はあたしだから!」」」


 はははは……二人とも元気だなあ。 


 ◇◇◇


 マギア協会の神殿に到着した。

 口頭試問には外で行われる。

 外の広場には、貴族や魔術師のお偉い方が椅子に座って開始を待っていた。

 周りには昨日、ギャラリーでいたマギア協会の魔術師たちが集まっていた。 


「あたしの時より、人がたくさんいますね。先生に関心があるみたいです。昨日の先生はすごかったですから、噂になっているんでしょう」


 昨日の試験で、魔力測定水晶を壊しちまったからな……

 あのせいで王都の魔術師たちに「やらかしたヤツ」認定されてしまったのか。


「あ、オロカ様が来ましたよ!」

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