第22話 昨日はお楽しみでしたね

「むにゃむにゃ……アラン先生……結婚してくだちゃい……一生あたしが養うので……」

「アラン先生大好きなのだ……あたしの身も心も先生のもの……ぐちゃぐちゃにして……」

「ううん……」


 昨日は大変だった。ベロンベロンに酔っ払った二人を背負ってエリシアの屋敷まで帰ってきた。

 二人とも完全に寝てしまっていたから、かなり重かった。


 俺は昔を思い出していた。遊び疲れて眠ってしまった二人を、よくベッドまで運んだっけ。

 寝顔は子どもの頃と同じように、無邪気で愛しいな……


「ぶっ……!」


 柔らかいクッションが俺の顔を覆い尽くした。


「先生は働かなくていいんですよ……」


 エリシア!

 俺にエリシアが抱きついている。

 胸にぎゅうぎゅうと俺の顔を押し当てる。

 しかも——下着姿で。


「先生……あたし食べてにゃ」


 背中にシルフィが貼りついている。

 俺の腰に、シルフィの生足が絡みついた。

 シルフィも下着姿のようだ。

 エリシアは黒いレースのブラ、シルフィは白いスパッツをピッタリ胸につけている。

 出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだエリシアの身体。脱ぐとこんなに豊満で……これはヤバいやつだ。

 そして子どもの頃のまま、丸く柔らかく肉感的になったシルフィの身体を背中に感じる。

 朝から二人の美少女になぜか挟まれるオッサンの俺。


 ……どうして二人とも、俺のベッドに潜り込んでいる?

 昨日、俺も飲み過ぎたせいで記憶がない。

 酒の勢いで、間違いがあったのか……?

 いや、まさかそんなことないよな。

 とにかく、ベッドから出ないと。

 俺はなんとかエリシアの腕からすり抜けて、そっと部屋を出た。


 ◇


 俺は1階の居間へ降りる。

 メイドのサーシャさんが掃除をしていた。

 壁にかけられた時計を見ると、もう時刻は正午になっていた。

 黒いおさげみを揺らしながら、サーシャさんは居間の床を吹いていた。


「おはようございます。昨日はお楽しみでしたね」


 サーシャはふふっと微笑を浮かべた。


「お、お楽しみ……?」


 一瞬、意味がわからなかったが、すぐに気づいて俺は慌てる。


「いや、いやいやいや……本当に何もなかったですよ」

「下着姿の女の子と、二人で寝ていたのにですか?」

「うっ……それは……」


 もしかしたら記憶がないだけで、何かしちまったのか……?


「うふふ。冗談ですよ。かわいいですね。アラン先生」


 からかわれていたのか。 

 おっさんの癖に、昨日から女の子にやれっぱなしだぜ。


 明日は、グランド・マギステル、ルード・オロカの口頭試問だ。

 俺を追放した勇者パーティーのメンバーだ。 

 さてどうなるかな?

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