第21話 教え子にキスされる

 教え子二人に、酒場でキスを迫られる俺。

 一応「先生」として、無下に断るわけにもいかず、かと言って、キスするわけにもいかない。


「先生! あたしとキスしなさい!」

「あたしとキスするのだ!」


 エリシアもシルフィも、ぐいぐい俺に顔を近づけてくる。

 二人ともかわいい顔しているな。昔と変わらない。でもいろいろ大人になったところもあって……変態のオッサンじゃねえか。


 ここは冷静に対応しよう。二人は大事な教え子だ。傷つけないようにしないと。


「エリシア、シルフィ……俺は二人のこと、好きだ。でもキスって特別なものだろ? ファーストキスは、本当に好きな人とすべきだ」


 俺は二人が孤児院にいた時みたいに、優しく諭すように話したが、


「先生になら……あたしの初めてを捧げます!」

「あたしの初めてを奪ってほしいのだあ!」


 完全に逆効果だった……


 二人はさらに俺の顔に唇を近づけた。


「おっさん! もうキスしろよ!」

「うらやましいぜ!」

「おじさん、どっちの子を選ぶのかしら?」


 周りの冒険者たちが面白がってはやし立てる。

 みんな酒が入ってるから、調子に乗っている。

 立ち上がって、俺たちを近くで見物する奴も出てきた。


「さあ……先生、あたしかシルフィか、どちらか選んでください。もちろんあたしを選びますよね? 選ばなかったらあたし、もう……生きていけないっ……!」


 生きていけないって……そんな大げさな。


「先生、あたしを選んで! エリシアお姉ちゃんみたいにおっぱいは大きくないけど、他のところはあたし、すごいんだから!」


 おいおい、『他のところ』って何だよ?

 これは絶対突っ込んじゃダメだ。


 もう二人の唇は、俺の顔に吐息がかかるほど近づいている。

 二人とも飲みすぎた。息からほんのり甘い匂いがする。

 酒場の熱気も相まって、二人の身体の汗の匂いがむわっと鼻腔に押し寄せ、高まる熱い体温が伝わってきた。


「おっさん、もう観念しろよ! どっちか選べ!」

「いいねえ。両手に花じゃねえか」

「二人ともかわいいじゃない。あたしなら両方いけちゃうわ」


 約一名から、変なコメントが聞こえたが、言っていることは一理ある。

 教え子をどちらか選ぶなんて、俺にはできない。俺は選べない。

 だったら――俺がやることは決まっている。


 二人に同時にキスすれば……


「もお! 先生のヘタレ! もう我慢できません!」

「ぶちゅっとしちゃうのだああああああ!」

「ぐうっ……!」


 二人は小さなかわいい唇を、俺の周りに無精ひげのはえた唇に押し当てた。

 なんて柔らかいんだ……そして暖かい。いたいげな美少女の初めてをオッサンの俺が奪うんなんて。


「先生の初めて、奪っちゃいました」

「ファーストキスをいただいたのだ!」


 俺が奪われたことになっている……?

 二人とも、酔い過ぎだ。


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【★あとがき】


モチベになりますので、


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