半分こ
「先輩先輩、クレープの屋台ありますよ?」
「奢らねぇよ?」
「な、なんのことか分かりませんね」
たまたま雫と遭遇した下校中。帰り道の脇にある公園に、クレープの移動販売のキッチンカーを発見した。
「この辺、ジェラートやら焼き芋やら、移動販売には事欠かないよな」
「そうなんですか?」
「よく見かけるぞ?住宅街に近いしな」
ほへー、と腑抜けた返事をし、周りを見渡す雫に前を向けと注意する彰久は、公園に向かった。
「月野木先輩?」
「なんだ?」
「どうして公園へ?」
「いや、食いたいんだろ?」
「私そんなに食い意地張ってません」
「一年ブランクはあるが、成瀬とは二年目だ。そんくらい見てれば分かる」
彰久は言いながら鞄から財布を取り出す。先を行く彰久に、雫は駆け寄ってその手を掴んで言う。
「私の分は私で払いますよ」
「別に、遠慮しなくても」
「遠慮してません!割り勘です、割り勘!」
財布のチャックを強引に閉めると、鞄に勢いよく突っ込む。えいや!と思いっきり。
「普段から奢ったり奢られるより、一緒に払って一緒に楽しみたいです。半分ずつ出せば……もっと一緒に、遊べます」
少し頬を赤く染め、はにかみながら言った。
「わっ、私はチョコバナナホイップ!月野木先輩は他のにしてください!」
「好きなの頼ませてく」
「ほらっ、行きますよ!」
バタバタとし、呆れ顔をする彰久の背中に回り込んでグイグイと押し始めた雫の顔は、少し、赤らんでいた。
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