反則KO
「良かったね彰久、公開プロポーズ成功したみたいで」
「なにが良いんだよ滅びろ」
視線の槍から解放されたと思えば、自分の席ですら精神攻撃を受けた。
ようやく雫と離れて落ち着き出したと思えば、これだ。
「いつも仲良さそうだけど、これでもう付き合ってるも同然じゃないのかな?」
「付き合ってないし付き合わない。雫はただの大切な後輩だ」
「それはただのなのかな……」
思いもよらぬ告白に、話題を振ったはずの凛が苦笑した。
「絶対好きじゃん」
「何がだ」
「彰久が」
「誰を」
「成瀬さんを」
「雫を?」
「違う?」
「違うな」
彰久は今の謎問答に若干のコンビネーションの発揮を感じてしまった。
これが幼馴染か。
凛は無遠慮に彰久の頬を突き、「絶対嘘だ」などとほざいている。純度100%の鬱陶しさを感じながら、その攻撃を甘んじて受け入れている。
何をしても無駄と分かっているから。
「あ、成瀬さんだ」
頬に指が沈んだまま言った。その指をどかせと言いたい。
スタスタと雫がやってくる。
視線は何故か凛の元に。表情は笑っているが、般若的な笑いのようで……
「おい雫、俺は何もしてな」
「ふんっ!」
「いっ……ッ!」
雫の踵が彰久の爪先にダイレクトアタック。一発で撃沈した。
「月野木先輩なんて皐月葉先輩と勝手にラブコメしてればいいんですよ!」
膨れっ面から放たれた新品のペットボトルが、頭に激突した。
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