やはり男のツンデレは気持ち悪い


「———優勝は、C組!」


 今日一の歓声が運動場を支配する。太陽はもう低くなったというのに、真昼のような熱気を感じた。


 ちなみに、我らがA組は三位入賞。だいぶ健闘しただろう、と彰久はやや満足げに放送を聴いていた。


「先ぱ〜い……」


 放送が終わり、後片付けの時間が始まると早々に抜け出してきた雫がへにゃへにゃな顔で駆け寄ってきた。


「負けちゃいましたぁ……」

「一応、入賞はしてるだろ?」

「月野木先輩分かってないです、青春を理解してません!」


 雫はぷくっと、アニメのように頬を膨らませて言う。

 なにか引力のようなものをその頬から感じた。


「私がリレーで一位取れていれば……」

「雫は十分頑張っただろ」

「ならよしよししてください」

「子供か」


 そう言いながらも手を伸ばす。諦めずに食らいついた雫の走り姿を思い出して。


「先輩」

「なんだ?」

「……どうでした?体育祭」


 少し湿った髪を撫でて、空白の時間を埋める。雫はあの昼、体育祭を嫌がっていた彰久を気にしているのだろうか。


「悪くなかった。今年は、去年と比べて」


 尻すぼみになる回答に羞恥を感じ、掻き消すように、思い切り雫の頭を弄ぶ。

 「やめてください〜」と楽しげな抗議の声が聞こえた。


「楽しかった、割とな」


 手を離した彰久は再び答える。

 雫は驚いたように目を開き、そして嬉しそうに口を開いた。


「私もです!」


 そのまま踵を返し、クラスの片付けへ帰ってしまった。

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