どうすればよかったんですか


「俺、彼女できるかもしれない」

「「へぇ」」


 体育祭ムードが冷めやらぬ翌日の朝。深刻そうに、隆也は彰久と良政に告げた。


「興味失うなよ!」

「えっ、そんな話題で失う興味が元からあると思ってたの?」

「泣くぞこら」

「勝手に泣いてろ」


 泣きっ面に蜂とはこのこと。


「ほらこれ見ろ、ラブレターだぞ!ラブなレターだぞ!」

「やめなよ隆也……そんな惨めなことは」

「言ってやるな良政。こいつもとうとう限界が来たんだ、妄想の彼女くらい許してやれ」

「……………」


 静かになった隆也は腕を目元に当てていた。その手から離れたラブなレター(笑)に彰久は手を伸ばす。


「見ちゃおうよ、中」

「だな」


 分かりきった結果を目の前に、ハートのシールを綺麗に剥がした。

 丁寧に折られている紙を広げ、二人は揃って口を開いた。


「「なる、せ……???」」

「成瀬ちゃん!?」


 意気消沈していたはずが水を得た魚のように突如活力を手に入れて、二人の手にする便箋を奪い取った。

 そこには可愛らしい字で「鳴瀬より」の文字。


 そして紙を明け渡した二人は顔を背けて笑った。

 補足しておくと、隆也は昨日の選抜リレー一位の帰宅部で、鳴瀬は陸上部マネージャーだ。


 その直後のこと。


「つっきのっき先ぱ〜い、今日のお昼……」


 扉からひょいと身を出した雫は、力なく手紙を取りこぼす隆也と目があった。

 とても、気まずい。


「えっと……お疲れ様、です?」


 こくんと首を傾げる。


 隆也は真っ白に燃え尽きた。

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美少女天使な後輩ちゃんは先輩にデレデレなようです 東雲ノノメ @cover

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