姉が可愛いのは創作だけだ


「弟よ。弟の役目とはなんだと思う?」


 大型ショッピングセンターでのこと。彰久の姉、秋奈は言う。


「召使いではないとだけ言っておこう」

「そうね。正解は小間使いよ」

「そうかそうか。ところで小間使いの定義を学んだほうがいいと思うぞ姉よ」


 両手に大量の紙袋や鞄を持たされた彰久が、恨みがましく秋奈を見る。


 要するに、荷物持ちだった。


「基本的人権はどこへいった法学部?弁護士目指す前に小学校から社会の勉強をやり直してきたらどうだ」

「刑法第二百三十一条。事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は一年以下の懲役、若しくは禁錮、三十万円以下の罰金、拘留、科料。よ」

「多いなぁ!?そもそも今のが侮辱になったらそこら中犯罪者だらけだろ」

「ん?何か言った?」


 これはダメだと、完全に諦める。頭を抱える腕すら塞がり、半日荷物持ちルートに突入したな、とため息を吐く。


「なんだぁ?美人な姉と二人きりのショッピングが楽しくないの?」

「美人とだったら楽しい。美人と、だったらな」

「ほうほう、生意気な口だ。塞いでやらないとな。よし、下着売り場に行こう」

「や、め、ろぉぉぉぉぉ!間接的に口を塞ごうとするなぁ!」


 護身術を習う姉に両手の塞がった彰久が勝てるわけもなく、引っ掴まれて引きずられる結果となった。

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