鈍感って有罪
「成瀬って確かスイーツ好きだったよな?」
とある休み時間、彰久の椅子に座る雫にそう尋ねた。
「はい、好きですよ。それがどうかしましたか?……まさか?」
「そのまさかだ」
芝居がかった口調でそう言うと、財布を取り出して二枚の紙切れをヒラヒラさせた。
雫はそれをキラキラした目で見つめ、嘆息を吐いた。
「有名スイーツ店の食べ放題クーポンだ」
「つ、月野木先輩、これを、この代物をどちらで……?」
「秋奈に貰った」
机の上に丁寧に置き、雫を見やる。
「何が望みですか、先輩」
「人をなんだと思ってる。俺は何か?人から対価を貰わないと施しはしないタイプの神か?」
「どちらかと言うと先輩は神から施しを受けられないタイプな気がします」
思案顔をする雫にチョップを喰らわせると、頭を押さえて彰久を見上げた。
「そもそもこれなんの話ですか?」
「秋奈から食べ放題のクーポンもらったから」
「先輩と」「友達でも誘って食べてこいって話だ」
被せるように放たれた言葉に、嬉しそうな表情のままピキッと固まった。
「あ、そうですか」
「それ持って教室帰れ。もう鐘鳴るだろ」
「……先輩と行きたかったのに」
「なんか言ったか?」
「なんでもないですよ〜」
彰久の椅子からぴょこんと跳ね退くと、タタタッと教室から去っていく。
彰久は訝しげにその背中を見つめ、突然隆也に肩を叩かれた。
「今のはお前が悪いぞ」
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