一緒に


「っと、大丈夫か?」


 放課後の階段、両手一杯に本を持った雫が取り落としそうになった本を、彰久は受け止めた。


「つっ、月野木先輩?」

「おう。あ〜、そういや今日か。図書室の本の入れ替え」

「そ〜ですよぉ。図書委員は強制労働です」


 彰久から本を受け取ると、可愛く泣き真似をされる。彰久でなければ天使の一声によりご臨終していることだろう。


「いいから仕事しろ。頑張れよ」

「……はぁーい」


 気の抜けた返事で階段を上っていく雫を見届け、その危なっかしい動きを見て頭をガシガシ掻く。


「貸せ成瀬。手伝ってやるから、そんなフラフラしないでくれ。見てて怖いんだよ」

「先輩……そんな、わざわざ悪いですよ。そもそも先輩は保健委員じゃ」

「お前は後輩だ。先輩の好意に甘えとけ。それが後輩の特権ってもんだろ」


 奪い取るように、下から抱える本を全て持つ。中々の重みに眉を顰め、尚更持たせておけないと感じる。


 と、手元が少し軽くなった。

 雫が半分持ち上げていた。


「半分こですよ、先輩。この前も言いましたよね、割り勘だって」


 微笑みを湛えて彰久に言った。固まった彰久に、首をこてんと傾げて覗く。


「……割り勘、関係なくないか?」

「ありますよー!」


 二人並んで、言い合いながら階段を上る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る