悪くない


 借り物競走が始まった。


 五十メートルほど先に細長いタイプの机が並べられ、お題の書かれた紙が折り畳まれた置いてある。しかもカラフル。

 風で飛ばぬよう、ご丁寧に重りまで乗っている。


「憂鬱だ」


 誰にも聞こえないよう、そう漏らしながらはちまきを締めなおした。

 全学年の同クラスが一つの班。その班別に分かれた色のはちまき。八クラスあるため、もちろん八色ある。


 男子どもは我先にと、お題へまっしぐら。勝つためではなく、合法的に女子と触れ合えるチャンスだからだ。


 彰久もそれに並び、鬱々とした思いでお題を掴んだ。


「変なお題だけはくるなよ」


 願いながら開く。

 紙を開く手を止め、空を見た。眩しい。


「マジか…………癖強すぎだろ」


 お題。

『最愛♡の先輩or後輩!!!

            ※異性に限る!』


 係の人間に視線を向けた。

 彰久と同じ色のはちまき。見覚えのある顔。あれは、雫の友人だ。


「つっきのっき先ぱぁーい!」

「おい、嘘だろ」

「私のお題、『一番頼りになる人』なんですよ」

「雫……お前、どうやって……」


 にっこり微笑んだ。満面の笑みだ。

 その美少女の微笑に気を取られ、彰久の腕は雫に絡め取られた。


「待て、俺のお題は知らないはずだ!何故連れて行く!」

「約束しましたよね、私が借りてあげますって」


 悪魔……いや、小悪魔のような笑みの砲撃を喰らい、もうどうでもよくなった。


 雫は、目一杯楽しんでいる。それでいいじゃないか。


————————————————


 あと数日で投稿すっぽかすアホ作者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る