断じて違う
ずぶ濡れの雫を無理矢理風呂に押し込んだ彰久は、落ち着かない様子でリビングにいた。
「ちゃんと服置いてってくれたか?」
「もちろん、お姉ちゃんに任せときな」
二の腕に手を当て、秋奈は含み笑いをした。その行動がさらに信頼度を下げたが、どうせわざとだ。
「君久、母さんは?」
「まだ部屋みたいだけど。どう説明するのこれ。兄貴なんとかしろよ」
「なんとかできるなんていう理想が存在するのか?」
真面目な顔で弟に言うと、とりあえずは風呂から出るのを待つということにした。
「あの子、ショッピングモールで会った子でしょ〜?ん?どんな関係なんだい?」
「どこで会ったの?」
「下着売り場」
「サイテー」
「明らかに狙って言ってるよな?」
汚物を見るような目をした君久をどうにか宥め、ため息を吐く。
そんな丁度のタイミング、扉の音がした。風呂から出た合図だ。
数秒後、頭にバスタオルを乗せてた雫は、小動物のようにちょこちょことやってくる。
「お風呂、ありがとうございました」
「お、おう、ちょっとは落ち着いたか?」
ニマニマした秋奈に尻目で睨み、「風邪引くだろ。ちょっと待ってろ」と逃げるようにドライヤーを取りに……
雫の隣を通った瞬間、瞠目し立ち止まる。
「これしか、置いてなくて……先輩の、でした?……すみません。使わせて、もらっちゃって……」
いつもは元気溌剌な天使のような雫が、顔を赤らめ、萌え袖でもじもじと視線を彷徨わせる。
彰久は、口元を手で覆った。
「ヒュ〜、彼シャツぅ」
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