確かに出た
「やめ。答案後ろから回せー」
先生の声を合図に、皆がペンを置く。一週間にもわたるテスト期間が終わったため、皆一様に歓喜に包まれていた。
先生は呆れた様子で帰りの用意をするよう残すと、答案用紙の入った封筒を抱えて教室を出た。
「月野木先輩お疲れ様です!これでまた今から遊べますね!」
「だから早えよ」
頬杖をする彰久に、雫はばんざーいと楽しそうにうろちょろしていた。
「お前クラスはどうしたんだよ。もうホームルームあるだろ?」
「用意ならもう済ませてありますから」
「キリッと言うなキリッと」
顎に指を添えて雰囲気を醸し出していた。特に意味はない。
「先輩って、やる気がないととことん何もしないですからね……」
「どうした?突然……っ」
ぐいっとネクタイを引っ張られる。顔同士の距離が近づき、目と鼻の先、というかちょいちょい鼻が当たる。
長いまつ毛が目の前にあり、日本人にしては白めな肌に釘付けになる。
その白い肌が赤らんで……
「……恥ずいならやんなよ。居た堪れない」
「先輩がやる気になってくれるまで離しません」
ムスッとした天使顔で悪魔の宣告する。「月野木爆発しろ」という僻みの視線が突き刺さるのを感じ、はぁとため息を吐く。
「やる気って、ナニのだよ」
やむなく、そう呟く。雫にだけ聞こえる声で。すると雫は更に赤くなり、「ナニって何ですかぁぁ!」と顔を両手で覆い逃げていった。
彰久は鼻の先を撫で、ホームルームの準備を始めた。
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