第2話

 <討伐士>でありながら<魔王>として覚醒した自分の身体はとくに変化はなかった。初めから討伐されるという恐ろしいことはないようで、普段通り仲間たちと交流し、一緒に<傀儡>を倒す日々を過ごした。


 <魔王>になっても日常は変わらなかった。変わったのは、人工太陽からの監視が一層険しくなったということだ。人工太陽は子供のころから教育され、日々悪いことをしなければ天罰はくだることはないと説明された。人工太陽は神様のようなもので人が悪いことすれば天罰として身体の一部を消し去ってしまうという。その罪は重くなればなるほど失う部分は増え、最終的に肉体すべてを消してしまうという。実験として囚人が放たれた。囚人は遠い国で十数人を殺してきた犯罪者だと説明した。囚人は自由を手に入れることと罪から逃れるためにあらかじめここにいる子供たちを殺せば解放されるという条約を結び、ここに召集された。囚人は自由を求めて子供である自分たちに襲い掛かった。自分たちは囚人から逃げるか戦うかでしか命を取り留めない。何人かの友達は戦うなり逃げるなり隠れたりしていたがひと際身体が大きく幼い年齢よりも遥か常人の大人に敵うことはなく。何人かの友達が殺されていくのをただ黙っていることしかできなかった。そうしていると、人工太陽から光が発射された。それは光線というべきなのだろうか。黄色く白い筒のような光が差し、囚人のひとりが消し飛んだ。それを見ていた残りの囚人たちは一斉に顔つきを変え、この場所から逃げるようにして子供たちを囮にしたり盾にしたりと生き延びようとしていたが光は容赦なく囚人だけを殺し、残ったのは最後まで生き延びた友達と自分だけだった。


 教育者は罪を犯した者はあのようなことになると述べ、教訓として心身共々


刻まれた。それから人工太陽から殺されるということはなかった。罰当たりなことをいくつかしたり人から盗みを働いたり時には人を押し退けてしまったりとしてしまったこともあったが、人工太陽からの裁きはあの日以降訪れることはなかった。


 <魔王>として生まれ変わり、すべての記憶を取り戻した。あの人工太陽がなぜ子供の頃の教訓で受けたはずの記憶が消されていたのか不思議だった。断片的な記憶だけで逃げ出した囚人たちが友達を殺し回りそこに現れた<討伐士>たちにより蹂躙(じゅうりん)されていき、自分もいつか<討伐士>になるんだと思い込んでいた。記憶の書き換え……この世界はなにか隠している。<討伐隊>を結成し<討伐士>として職を与えることでこの世界を自分たちの都合がいいように作り替えているみたいだ。


 先代がこの世界の仕組みを変えようとしていた……<魔王>として羽化した……つまり、<討伐隊>を全滅させることが自分に与えられた使命だと悟った。

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